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【21】 そのまま、そうなってしまった | どうしようもなく、どっぷり浸かった恋の話

駐車場に着いて、車に乗り込む。
いつもの空間に、少しだけほっとした。

目が合って、お互い少し笑う。
同じことを思っている気がした。

「運転いける?」
「おぅ。行くか」

さっきの感覚だけが、まだ少し肌に残っていた。

街を抜けて、国道を走る。
差し込む夕日が眩しかった。


少し眠ってしまっていたのか、
いつの間にか、知っている景色に変わっていた。

そっと、横顔を見る。

「寝てたな」
少し笑いながら、そう言った。

バレてた。

「起こしてよ」
「起こさんやろ、買い物付き合わせたし」

付き合わされたとは思っていない。
むしろ、いつもと違う時間が新鮮だった。

「また行こ」
「バレンシア、次は買うか」

「可愛かったけどさ。着るタイミングある?」
「んーフジロックとか?」

「あー被らんくていいかも」
2人で笑った。


「どうする? もう帰る?」
その言葉に
「……まだいける」
気づいたら、そう答えていた。

まだ少し明るい外の景色を眺める。

その日、たまたま家に誰もいなかったらしい。
「ちょっと寄っていい?」
軽い感じで言われて、
断らなかった。

車は、そのまま家の方に向かっていた。

初めて入る家。
「…お邪魔します」
「適当に座ってて」
そう言われて、ソファに座る。

「はい」
アイスコーヒーを持って戻ってきた。

何を話したかは、
あまり覚えていない。
いつもと同じような会話だった気がする。

ただ、少し落ち着かない感じはあった。

しばらくソファで話した後
「上行く?」
軽い感じで、立ち上がった。

「…うん」
そのまま後ろをついて行く。

部屋に入ると、
少しだけ空気が変わった気がした。

「へぇー」
「へぇって」
少し笑う。

並んでいるCDを見る。
私のまだ知らないその人が、そこにはたくさんあった。

ベッドにもたれながら、2人でYouTubeを見た。
「うわ、これ、見てた」
「面白かったよなぁ」

どうでもいい動画を見て、くだらないことで笑う。
その空気が、
ただ心地よかった。

たまに、
ふっと静かになる瞬間がある。
動画の音だけが流れる。

少し動いたと思ったら、すっと肩を寄せられた。

心臓の音が聞こえそうだった。

それに耐えきれなくなって、
そっと顔を見た。

目が合う。

たまらなくなって、俯いてしまった。

それでも距離が縮まる。
頭に、そっと手が添えられた。

唇が、重なった。

動かなかった。

少しだけ、離れる。

今度は私から近づいた。

さっきよりも、少しだけ濃かった。


止める理由を、
もう考えていなかった。

そのまま、時間だけが過ぎていく。

流れていた動画の音だけが、
遠くで聞こえていた。


気づけば、かなり時間が過ぎていた。

髪を直しながら、ベッドに座り直す。
「……やば」
小さく笑う声。

その空気がおかしくて、つられて笑った。

画面の中では、
まだ動画が流れ続けている。

距離だけはまだ近かった。

「……てかさ」
ふっと、笑う気配がした。
「え?」

「ちょっと、も一回」
また距離が近づく。

もう一度キスした。
少し長めに。

離れてから、小さく笑う。
「……やば」
「え?」
思わず聞き返す。

「なんか……」
言葉が出てこないまま、少し笑っていた。

「やめられんくなる」
その言い方がおかしくて、笑った。

「……それさ、慣れてるやつやん」

「いや、違う…ことはないか」

「あ、認めた」

私の顔を見て小さく笑っていた。
「でも、今はここにおるやん」

そう言いながら、また距離を詰めてきた。
そのまま、転がるみたいにまたベッドに倒れ込んだ。

冗談なのか、本気なのか、上手いだけなのか。
でも、どれでもよかった。

「ずるいって」
「キスうまいのもずるいやん」

「知らんし」
「お互い様やな」

そうやって、離れないまま言い合っていた。


しばらくして、ふと時計を見て行った。
「あー、そのうち妹帰ってくるかも」
「え、早く言うてよ」

慌てて身体を起こして、階段を降りる。
気づいたら、少し走っていた。

「キスのせいやし」
「なんでそうなるん」

なんだかおかしくて、2人で笑った。

車に乗り込んで、そのまま走り出した。


🎵 くせげ / Saucy Dog


次回

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