AI社員が提案書11ページを12秒で束ねた夜、私が直しているのは1行の店名
前々回の記事で「外に出る先は選ばないといけない」と反省を書きましたが、今回は、誰に何を渡すかを決めてから行きます。
手元には、AI社員が作った11ページのPDFがあります。作るのにかかった時間は、約12秒でした。
■ 何ができたのか
昨日、うちのAI社員(開発担当)が、ツールをひとつ完成させました。
コマンドを1回打って、お店の名前をひとつ渡すと、そのお店専用の営業資料一式がPDF1冊になって出てくる。中身はこうです。
・表紙 ・そのお店向けの提案書:6ページ ・Google上のお店情報の診断レポート:2ページ ・商圏の競合調査レポート:2ページ
合計11ページ。所要時間は、一店目が12.8秒、二店目が10.7秒。かかったAPI代は1回あたり約0.12ドル、日本円で20円しない程度です。
実在のお店で動くことは、運営に携わる2店舗で確認済みです。業種が変わっても、商圏の規模が変わっても、壊れずに出てきました。
正直、初めて通しで動いたときは笑いました。今までこれ、診断・競合調査・提案書と、3つの作業を別々にやって、手で束ねていたので。
■ 12秒の中身は、先に済ませた「判断」でできている
ただ、この12秒を「AIすごい」で終わらせると、たぶん嘘になります。
このツールが12秒で動くのは、判断を先に済ませて、コードに書き込んであるからです。
たとえば、こういう決めごとが入っています。
・検索順位が上がる、とは書かない。保証できないので ・「無料で使えます」とも書かない。公式に記載がないものを断定しないので ・データで取れないもの(口コミの返信率など)は、取れないと明記する。推測で埋めない ・お店の住所に存在しない地名は、エリア名として書かない
どれも、これまでの連載で書いてきた失敗と検証から決めたことです。AIに書かせると、それらしい言葉で埋めてしまいがちな部分に、先回りで「書くな」と指定してある。
12秒で出てくるのは作業の速さで、その手前に、遅い判断の積み重ねがあります。ここは順番を間違えたくないところです。
■ それでも、このまま持っていけない
で、ここからが今夜の話です。
出てきた11ページは、「たたき台」です。このまま鞄に入れて持っていくことはしません。
機械には確かめられないことが、残っているからです。
たとえば、お店の名前の表記。データ上の表記と、お店が実際に使っている表記が違うことがあります。看板と違う名前の提案書を渡したら、その時点で「ちゃんと見ていない人」です。
たとえば、カテゴリの提案。データ上は「この分類を足すと良さそう」と出ても、それがお店の実態に合っているかは、現地を知らないと判断できません。実態に合わない分類を勧めるのは、数字が根拠でもやってはいけない。
だから今夜やっているのは、AIが12秒で束ねた11ページを、人間が1ページずつ目で確かめる作業です。
12秒で出たものに、その何十倍もの時間をかけて目を通す。効率だけ見たら、変な話かもしれません。
でも、いずれそれを手渡す相手にとっては、12秒で出てきたかどうかはどうでもよくて、中身が自分のお店に合っているかがすべてです。
■ 私の中の線引き、今のかたち
この連載でずっと書いてきた線引きが、また少し、はっきりしました。
AIに任せるのは、集めて、計算して、束ねるところ。診断も競合調査も、データを取ってきて表にする作業は、人間がやるよりAIのほうが速くて正確です。
人間に残るのは、決めることと、確かめること。何を書かないか決めるのが前者で、目の前の実物と照らすのが後者。
そして手渡すのは、人間です。ここは当分、変わらない気がしています。
■ まとめ
・AI社員が、店名ひとつで営業資料11ページをPDF1冊に束ねるツールを完成させた。約12秒、1回0.12ドル ・実在のお店で動くことは、運営に携わる2店舗で確認済み ・12秒で動くのは、「書かないこと」の判断を先に済ませてコードに入れてあるから ・それでも出てくるのは「たたき台」。店名の表記やカテゴリの実態は、人間が目で確かめてから持っていく ・近いうちに、これを持ってお店を訪ねに行きます
ちなみに、お客さんはまだゼロです。ゼロのまま、道具だけが強くなっていく。この状況も含めて、結果はまた書きます。
この連載の前作はこちらです。
▶ Googleが公式でここまでやる時代に、AI屋は何を売るのか https://note.com/lively_fox2840/n/n0ae3dca807b8
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