【思わぬ大金を得た男の日記】 1話 「その日は、特別な事は何もなかった」
正真正銘、特別なことは何もなかった。
いつも通りの部屋で、
いつも通りの時間を過ごしていた。
カーテンを閉め忘れたまま、
部屋に夕方の光が残っていた。
床に伸びた影が、少しだけ長い気がしたが、
理由を考えるほどのことでもなかった。
テレビはつけなかった。
部屋に一切の音がないことに、
あとから気づいた。
冷めきったコーヒーを飲みきれず、
そのまま流しに置いた。
片づける気にも、
飲み直す気にもならなかった。
こだわって選んだわけでもない
デジタル置き時計をふと見ると、
思っていたより時間が経っていることに驚いた。
何をしていたかは、よく覚えていない。
あとから思えば、
それが最後の「いつも通り」だった。
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