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長沢蘆雪展大解剖・子犬かわいいランキングベスト5!【府中市美術館】【大激戦】

やっと!府中市美術館、春の江戸絵画まつり「長沢蘆雪」展に行ってきた!!!!!

今回で最後となる春の江戸絵画まつりは、金子学芸員のかわいいの集大成である長沢蘆雪展でで開期前からかなりの話題。また前期後期で多くの作品が入れ替わり、前期は子犬パラダイス、後期は無量寺の虎と盛りだくさんの内容となっている。前期終了間近ということもあり、60人くらい並んでいて入館までに20分くらいかかったけれど、展示室は快適に見ることができた。

なすにきび的にも府中市美術館と長沢蘆雪は、奇想とかわいいによる日本美術の世界にのめり込むきっかけとなった思い出深い存在。ここでやらずしていつやるということで、好みの独断のかわいい子犬決定戦を開催していきたいと思う。〈約1万字〉


◯かわいい子犬ランキング、大会規定

今展覧会における、かわいい犬ランキングのなすにきび基準を以下のように設定した。

・今展覧会の前期で見ることができた長沢芦雪が 描いた子犬の絵点の中から選出する
・作品ごとに好みも見るが、あくまでもランキングは作品の中の一個体に絞り、その単体かわいい力も評価する
・「蘆雪によるかわいい」を念頭に置く

また、今回の特別編、蘆雪の子犬は造形のタイプによってA~D の4つの区分に分けられており、このランキングでも参考として扱った。

A 初期犬。応挙の犬に近いが線がはっきりしていて少し漫画っぽい
B 初期からさらに独自の線に、マンガチック犬
C さらに崩れマンガチックを超えた自由フォルム
D B,Cのように単体では形を崩しつつも作品としてはきれい
  :現状、《菊花子犬図》のみ当てはまる

これらをもとに、上位5犬を決定する。
以下、審査員長評

今回、烏滸がましくも長沢蘆雪展の中の一番かわいい子犬を決定させていだきましたが、それを考えていく中で、長沢蘆雪という画家の頭の中の世界にも少し迫れたような、そんな気がします。師である円山応挙が子犬の自然な仕草や、人間から見た愛おしさを描いているのに対して、蘆雪はそれぞれのキャラクターや関係の顛末まで細かい設定を考えているようで、それを踏まえて狙ったかわいいを人為的に出しているように見えたのです。つまり、No.1の犬を決めるということは、どれだけ蘆雪犬ワールドを深く覗くことができるか、繰り返し味わうことができるかということだと思い、展示室や展覧会から帰って後も考えていました。結果、かなり難航し、いわゆるXで人気になるような蘆雪犬などの評価とは少しズレたとこになったのかもしれないのですが、全体的にずっと見ていたくなるようなかわいい、というのが大きな条件になったかと思います。もちろんあえて順位を決めてみようという思いつきの企画であるだけで、全てかわいいのは大前提なので、今回のかわいいランキングが作品の新たな視点をもたらす一助になれば幸いです。

審査員長 なすにきび

◯かわいいの刺客!

今回の展覧会はそもそも蘆雪の画業全体を網羅的に抑える展覧会で、それに合わせて師である応挙や禅画などの展示もあり、蘆雪犬以外のかわいいも溢れていた。まず、蘆雪自身の作品では、《牧童吹笛図》(こちらの記事に写真あり↓)の牛。指に墨をつけて描い指頭画であり、制約の中でも滲みやカスレを利用した弱々しくも見える牛が、蘆雪の自由な線の子犬とはまた違った、愛おしさを纏っていた。子犬の表現にも見られる、へこたれるような脚をのばすポーズも見事。

そして、禅画の中で特に凄まじいのは、風外本高の《虎図屛風》↓。

大きな親虎の乳をすう子虎やそばに佇む子虎が描かれているのだが、これはまたゆるさとは違う次元にいる、とてつもないかわいさ。もはや虎ではない新種の生き物のようである。禅画の精神ももちろんだが、蘆雪は絵の腕がありすぎて、ここまで崩したスタイルは逆に到達できなかっただろう、とも思わせる域。初めて見れてびっくり。かなりおすすめ。

◯入選、惜しくもランキング外の犬たち

そしてここから!蘆雪犬のランキングに入って行こうと思う。まずは、惜しくもランク外ではあるものの、やっぱり今展覧会の感想でこの犬は避けては通れない!という子たちを紹介。( )内は作品リスト番号

・狗児図扇面(126)と唐子遊図襖画稿(108)
 のへそ天(上)と引きずられ犬(下)

先ほどの区分で言うと、がっつりCに当てはまる、ゆるっとした2匹。「へそ天」と「引きずられ犬」という愛称までつけられおり、展覧会が始まる前からXでバズっていた。まあかわいいよ!かわいいかわいい。でもだいぶ初見のインパクトに頼りすぎている部分があるのと、やっぱり個人的にはタイプBのもう少ししっかりとした形の蘆雪犬が一番好きなので、惜しくもランク外となった。しかし面白かったのは、引きずられ犬の下絵も展示されており、それを見ると、完成版とはまた違う顔だったこと。歯を見せてにかっと笑、少し怖い、イタズラっ子なイメージに感じたのでぜひ見比べてみてほしい。自由奔放に見える蘆雪のかわいいも、意外としっかりと思索を巡らせて生まれたものだったのかもしれないというのがわかる。

・蓮華子犬図(115)
 の黒い子
↓この画像の2番の上にいる黒い子

初期の初期だと思われるAタイプの犬で、にしてもペタッとした座り方や目鼻立ちで、応挙の犬と比べてもだいぶキャラがしっかりと立っている印象。地面を見つめる様子がとても可愛く、また全体像を見てほしいのは蓮華の草原とも良く合っているところ。応挙の犬が犬への愛、観察の極地で単体でかわいいと思える一方、蘆雪の犬はもう画面全体が一つの物語としてかわいいと思わせてくる。それをよく示す一枚だったけれど、その世界観がこの作品の場合は少しメルヘンに寄りすぎていた。少しアニメというか、ポケモンの絵を彷彿とさせるくらいだった。個人的にも犬の顔ももう少しかわいいだけではない成分を含んでいる方が好みなので、惜しくもランク外。応挙の犬に似ていてまだ蘆雪だからこその良さが薄いところも響いた。

・木蓮狗子図(120)
 の奥の逆ハの字の子  
↓この投稿の右写真、一番奥で顔を出している子

ここからの3匹はかなりランキングに入れようか迷った子たち。気分によっては全然食い込むポテンシャルを秘めている。蘆雪犬独特のキャラ、逆ハの字に目を細める犬は、今回は《菊花子犬図》とこの子だけだったかな。《菊花子犬図》(見出し画像)の方は気持ちよくて目を細めていると言う感じに見えるけれど、この子は寝ているようにも見えるのがかわいい。また、先ほどの蓮華草原に同じく、舞台の紫木蓮がとても綺麗。自分もこの世界に入ったらこの子と同じ顔になるだろう、という共感も大きい。

さらに、他の4匹のポーズもいい空気を演出している。蘆雪犬にしてはかなり落ち着いた4匹で、背中を見せる2匹と左後方に目線をやる2匹、みんな同じ方向を向いていて何かがあるのか?と言う想像力も掻き立てる中、逆ハの字の子の自由がよく目立っている。4匹は大人で何か世間話をしていて、それについてきた子供なのかな?と言った感じでセリフも作れそう。応挙の犬は犬らしく、はしゃいでいるか落ち着いているかといったような性格の差のみで描かれていて、対する蘆雪の犬は精神年齢も映し出されているようなポーズの書き分けが素晴らしいのである。そんなかわいいこの犬だけれど、減点部分は流石に顔の一部しか見えていないところ。逆に言えば、鼻と左目だけでこの破壊力はとんでもない。

・十二支図(128)
 の虎の尻尾で遊ぶ子

こちらも、Xで騒がれていた1匹。まあかわいい。すごくかわいい。自らの可愛さに加えて、虎との関係性でも楽しむことができる、蘆雪代表作の《白象黒牛図屏風》のようなタイプと言える。さらに明確に虎の尻尾で遊んでいると言うのがこの作品の圧倒的なポイント。なんて楽しそうなんだろう、やはり蘆雪は今のゆるかわに通じる雰囲気を確実に掴み取っていた。

さらに犬の目に注目すると、蘆雪犬の中でもかなり稀なかわいい動物の目というより、人間っぽい絶妙な眼で描かれている。へそ天然り、このおじさんっぽい犬も蘆雪が到達したゆるカワのスタイルだろう。しかし、おじさんスタイルは個人的にはそこまで刺さらない。あと虎はくすぐったくないのかな?虎自身の自信満々というかお兄ちゃん肌な感じの表情も相まって楽しむことができる。十二支のメンバーの関係性を想像するのも楽しく、虎×犬と対になるように馬×猿も可愛らしい位置関係なのも見逃せない。猿というモチーフはやはり蘆雪の中で犬に次ぐかわいい動物エースの二番手ということ。

この作品の惜しいポイントといえば、十二支図の全体図としての完成度が高いこと。龍に向かって螺旋状に配置される真ん中にかわいい犬がいるところは作品としては素晴らしいけれど、犬がちっちゃくてかわいい姿が少し見づらい!筆の動きなどを楽しみにくいところが惜しく、ランク外。

・狗子図(129)
 の目を瞑っている子
この記事にあります

これもかなり珍しい蘆雪犬。応挙の白犬といえばおとなしそうな横顔を見せる犬のイメージも強いがこんな綺麗な横顔の蘆雪犬は初めて見た。先ほど説明した文脈で言うと、精神年齢が高そうな犬で、手前の4匹が戯れ合っているところもポイントが高い。さらにこれまた蘆雪の得意モチーフで今回も展示があった「朧月」↓とのミックス作品で、この目を瞑っている子は、夜の風を感じているのかな?月の音に耳を澄ませているのかな?独特な雰囲気を纏っているところが最高。蘆雪哲学をそのまま反映しているような趣深いタイプのかわいい。

横顔がやや描き慣れていないところもあるのか、おでこが出っ張っていてコブダイみたいになっているところも不思議でかわいい。戯れあっている4匹の形は《菊花子犬図》でも見られるような蘆雪の得意のグルングルン型。ここまで得意なスタイルを詰め込んでいると思うと、相当この作品への想いがあるのでは?とも推測でき、そんな作品の主人公こそ、目瞑り犬なんじゃないかという気もする。しかし逆に、それが惜しくもランク外となってしまったポイントである。右奥では月をバックに、ほぼ影のシルエットになっているような後ろ向きの黄昏犬もいるなど、この作品は少し要素が多い。全体として楽しみたいものになっているものは、今回は単体のかわいいを損なっている要素と判断し、少し厳しめに評価した。好きな作品で言ったら間違いなく上位クラスだ。

以上が入選の蘆雪犬でした。

この他にももちろん全てかわいかったけれど今回は惜しくも敗退。特に《親子犬図》のキャプションでペタッと足をつけている子犬に対して「よちよち歩きでしょうか?」とか言ってすごかった。気持ちのこもった主観のキャプションも、府中市美術館の大きな魅力だ。まあ《親子犬図》は今回来ていたのもしかり競合が強いという点もあった。今回展示のものではないもの↓

そしてここか待望のベスト5の発表!大激戦を勝ち抜き見事「一番かわいい蘆雪犬」に輝くのはどの子なのか!?


◯第五位

・エントリーナンバー116
 南天狗子図 の 奥の灰色の子!

おめでとうございます、かわいい!!!かわいいです。どうだろうか、この単体としての完成度。今回はそういうところを見ている、ということがわかる破壊力を持った1匹でしょう。見てわかる通りこの子は初期のAタイプで応挙に似た子犬。しかし、この斜めに勢いよく流れる毛並みと、ぺたっと折られた小さい耳、目線と訝しげな目の形、口周りのライン、そして何よりこのぷにぷにした足!Aタイプの蘆雪犬の中では最高クラスの完成度と言っても過言ではないんじゃないだろうか。しかも、この作品の面白いところは応挙犬に倣った初期作品と言いつつ、蘆雪の今後の潮流が見て取れるところだ。

この灰色の子犬は足をぺっとだしていて、《白象黒牛図屏風》の蘆雪犬のような姿勢を崩したスタイルを彷彿とさせる。さらに手前の黒と白の子犬は重心を左に落とし、後の蘆雪犬でほぼレギュラー出演とも言える後ろ姿の犬の姿に重なる。

後ろ姿の黒い蘆雪犬は蘆雪自身を投影しているのでは?という説があり、個人的に面白いので信じているのだが、そう考えると、蘆雪の代表犬であるへこたれ犬と、蘆雪自身である後ろ姿犬が同時に現れているこの《南天狗子図》はかなりメモリアルな作品になっているのかもしれない!後の後ろ姿犬はかなりシュッとして、右曲がりのラインも綺麗に描かれるが、この後ろ姿犬は、なんだかずんぐりむっくり太っているのもかわいい。つまり、その蘆雪らしさと初期の完成度の境界であるこの作品のかわいさはかなりの深みがあると言える。やはりずっと見ていても、灰色の子は愛おしい気持ちが溢れる。少し、訝しげな表情をしているのは手前の黒い子が変な顔でもしているんだろうか、応挙に倣った犬は大人っぽい顔立ちをしているのも得点が高い。そのコテっとした足をいじり倒したいな。

雪の舞台というのも趣があってとても良いのだが、、、流石に応挙色が強く、かわいいの感じ取り方も応挙犬とかなり近い形となっているので、この順位となった。しかし高レベル!

◯第四位

・エントリーナンバー130
 菊花子犬図 の 右端の子!

今回の蘆雪展のメインヴィジュアルであり、個人蔵だけれど、もはや蘆雪の代表作と言っていいほどに浸透したこの作品。素晴らしい。右端の仰向けに倒れ込んでいる灰色の子が4位にランクイン。ここで《菊花子犬図》!?とびっくりする方もいるだろうか。先に惜しかった要素を説明すると、ランク外で少し触れた作品と同じようにこの作品はやはり全体での完成度が高すぎること。9匹ものわんちゃんがここまでの密度で固まっている上に、愛らしい菊の花も彩る画面。タイプDで分類され、自由な線が動きつつ、ここまで綺麗にまとまっているとなると、もちろん1匹1匹もかわいいけれど、記憶としては全体の印象が強すぎる作品となっていると判断した。今回のなすにきびランキングの基準である単体のかわいい犬という部分では4位となったが、蘆雪の画業で言ったら、一つの頂として圧倒的だろう。

どうだろうか?この中だとどの子が一番人気になるのかアンケートを取ってみたい。頭隠して尻隠さず犬もかわいい、気持ちいい筆はこびで描かれる後ろ姿の白犬もかわいい、姿勢のいい逆八の字白犬もかわいい、蘆雪自身?後ろ姿黒犬の姿勢も心なしか勢いがついていてかわいいし、戯れ合う4匹の塊も悶絶するほどかわいい。どれも甲乙つけ難いというのもこの作品自体の凄さだが、そんな中でランクインしたのは右端の仰向けの子。仰向けの姿勢はもちろん、菊の花を踏んでいる点、白い犬に蹴られ?その足を噛んでいるところもかわいい、かわいすぎる。好みの話になってしまうのだが、なすにきびはおっとりとしたマイペースだけな子供犬が大好きなのでこの子が選ばれたということである。

先ほど少し描いたが、蘆雪が複数の犬のやり取りを描くときは、グルングルン円、螺旋を描くような構図がよく撮られている。左に重心を傾ける黒犬の頭からお尻に向かう方に力が向っているとすると、他の犬の尻尾や体勢がぐるりと左回りの円に沿って描かれていることがわかるだろう。このグルグルの螺旋の最終端にいる仰向け犬に注目がいくのは必然であり、その勢いのエフェクトで菊の花をお尻に敷いているとしか思えない。どテーん!とかSEをつけたいほどに、かわいい戯れあいである。余談だが、蘆雪は菊の花を埋れさせるのが好きなのだろうか。タコにも踏み潰させているので、その光景が好きなのか、何か春にのかっていくいくような意味、はたまた禅画的主題?単に画家が踏みつけるのが好きなのか、、、?踏みつけられても尚、美しい、なのか、美しいものを踏みつけて美に執着しない、なのかでもだいぶ意味が変わってくる。

やはり、蘆雪の犬の作品は何か、趣深いストーリーを感じさせるようなものも多いことに対して、この《菊花子犬図》は造形と構図でかわいさを一番に追求した作品と言えるだろう。先ほどの菊の花を踏む意味が、後者であるならば、画家がかわいいの終着点を意図的に目指した作品なのかもしれない。ちなみに、この仰向け犬に加えて、逆ハの字の「おすわり」犬、仰向けの上に被さる「ふせ」犬はふわっとかわいいぬいぐるみにもなっている。かわいい。

◯第三位

・エントリーナンバー124
 寒山拾得図 の 手前のおすわりの子!!!

《寒山拾得》というタイトル的にもテーマ的にもまさか犬が描かれているとは思わないだろう、という一枚にひょこっと現れる3匹の犬。そのうち、手前の座っている子がランクイン!おめでとう。いやとてもかわいい。最後に急いで付け足したような唐突な登場なのに、ここまでかわいいのは流石蘆雪。タイプで言うと崩したCよりのBなのかな?3匹ともかわいいのだけれど、やっぱり手前の子は拾得のことを見上げているのがとても良い。ちっちゃい口であどけない表情、ぼーっとみていると、拾得の顔真似ているのか?シンクロしているのか?拾得の表情も絶妙であり、二人の顔を行ったり来たりすることでかわいいが増幅する素晴らしい表情。引きずられ犬の引っ張っている人の表情も良かったが、蘆雪のことなので、この人物と犬の間の関係性も相当考えて筆を運んでいるに違いない。世間から笑いものにされても、自分たちの自由の道を突き進む寒山と拾得にこの子犬は憧れているんじゃないか。この小ささでそんな目の輝きまで感じさせる技量は流石。さらに、隣の伏せをする犬とのバランスもよく、もしかしたらこの2匹が「僕たちも寒山と拾得のように生きよう!」と息巻いているのかもしれない。

さらに良いのが、一番奥の3番目の子犬は全く興味を示さず、遠くを見ているところ。やはり蘆雪の子犬図の中では度々登場する、精神年齢高めの犬がここでも登場しているわけだ。興味を示さずとも、2匹にちゃんとついてきてくれる、2匹の保護者、お兄ちゃんにあたる子なのかもしれない。もしくは、手前の2匹は拾得派であり、奥の子も渋々ついてきて話を合わせるけれど、実は自分だけ、寒山に密かに憧れていたり?とにかくこの犬の落ち着きがあることでさらに手前の2匹のかわいさが強調されており、そのキャラ作りも蘆雪の手の内であるはず。ここまでのストーリー展開をこの狭さの中でもできるのはとんでもなく、おそらく、蘆雪の中でもキャラや性格をしっかりと考えているから、ちょっとした線にそれが現れるのだろう。この3位からはどれも捨て難い大接戦であり、選ぶのに苦心した。

◯第二位 

・枯木狗子図 の 寄り添う2匹!!!!

これはすいません、急に単体ではなく2匹を選出してしまったが、どうしても気に入ってしまった。どうしようもなくかわいい、愛おしい。二人で一つとさせてほしい。先ほどの3位もそうだけれど、ここまで来るとかわいいのはもちろん蘆雪ワールドに引こまれて鳥肌もの。子犬というシンプルな造形でここまでのストーリーとかわいさを演出できるのは、まさにかわいいの大家、超人である。

秋から冬に季節が移り変わるある日の一コマ。よく登場する後ろ向き犬が肌を寄せ合っている。どんな表情をして、どんな言葉を交わして、どんな関係性で、これからどう歩んでいくのだろう。犬たちの世界にグッと惹きこまれてかわいいを超えて心があったまるような感覚。動物画でこのレベルを描いた人物は未だかつていたのだろうか。今展覧会は子供向けに数点にオリジナルのえほんのような文章がキャプションとしてついており、この作品もちょっとした物語、2匹の会話が添えられている。内容は実際に見て楽しんでいただきたいが、それも評価に影響している点は否定できない。友人か、パートナーか、兄弟か、どちらにしても黒犬の方が姿勢を預けているので、甘える側なのかもしれない。そしてそれは師弟の関係かもしれない。先ほど黒い後ろ姿犬は蘆雪自身の写し鏡説を紹介したが、蘆雪の師応挙でいうと、白い横顔の犬が印象的な作品が多い。東博にある《朝顔狗子図杉戸》も該当するが、この横顔のぷっくりほっぺは応挙犬としてはかなり登場回数が多い。

《朝顔狗子図杉戸》一部

妄想の域は出ないが、黒犬が蘆雪、白犬が応挙、と画家自身がそれぞれに投影していたとすると、実際の関係性は色々な噂があり定かでないが、長沢蘆雪は円山応挙のことを一師匠として尊敬していおり、その敬意と感謝を《枯木狗子図》に描き出したのかもしれない。画家として影響を受けているのは間違いないので、そういう楽しみ方も一つである。そうすると、集大成である《菊花子犬図》では白い後ろ姿の子犬は左に佇み、黒い後ろ姿の子犬が真ん中に来ている。師を超えて、子犬画を大成させた、という蘆雪の自信なのかもしれない。

また、この《枯木狗子図》は冬ー《降雪狗児図》(↑右)から春ー《梅花双狗図》と季節シリーズで同じ2匹と見る事もできる、蘆雪もそのようなストーリーを描いていたのではないだろうか。2匹がずっと一緒にいれてとても嬉しい。いつか季節シリーズを一挙に流れで見てみたいものだ。そんな季節の2匹の中でも《枯木狗子図》の寄り添う2匹はやはりかわいさが飛び抜けている。2匹の尻尾と、体の線と色で描かれる違いも素晴らしい。黒犬がこころなしか通常よりも瑞々しく描かれているようにも見えるので、相当な気合いが入っている作品ではないだろうか。枯葉の線も迷いがなく、ずっと見ていて心を落ち着かせることができる至極の一品。いいなー持っている人。

そして、、、、、ついに
蘆雪犬かわいい子犬ランキング

◯第一位 一番かわいい蘆雪犬



、、、、、



・エントリーナンバー97
 人物鳥獣画巻 の 小川のほとりの子!!!!!

シンプル・イズ・ベスト!!!この白子犬が蘆雪かわいい犬ランキング第1位に輝いた。おめでとう!!!!!なんて愛らしいフォルムだろう。
もはや言葉での説明は野暮であると思いつつ、なぜこの白犬がそこまで刺さったのかを説明する。
まずキャプションにも書いてあったことでいうと、このSサイズのぬいぐるみ感のある寸法。Aタイプの応挙タイプからまたBに移行するときの初期の作品なのかな?と思わせる寸胴型は、先ほど5位の《南天狗子図》よりもムチムチ感が素晴らしい。蘆雪の犬といえば、BタイプおよびCタイプなど自由にのびのびとした犬のイメージもあるが、今回の子犬たちはぎゅっとまとまって可愛さが閉じ込められている。この子は特に、大きな頭をクンっとあげて、前足はお行儀よく揃え、尻尾も丸める、4本の足の指もきゅっとまとまっていて、なんてかわいい体勢なんだろう。他の犬たちも寸胴型なりにもわちゃわちゃしているのでこの1匹のまとまり具合はよく目立つ。

そもそも、今回の蘆雪展は丁寧に蘆雪の画風と描くモチーフから、禅画の思想まで応挙含め他の画家の作品が続いている。その中で多くの人が感じていたであろう「犬はどこなの?」というフラストレーションがこの絵巻で一気に放出された。その順番も多少は影響しており、正直言って、この絵巻は選出した一匹の子以外の破壊力も凄まじいものだ。展示では左端が川の子から始まり、右に進むと戯れあう3匹の子犬たち。《菊花子犬図》などこれまでに説明したような蘆雪お得意のぐるぐる螺旋のような構図を思わせる形であるが、だいぶ空気を含みダイナミック。そこから右に進んだ3匹もとてつもないムチムチ具合、かわいすぎる。よく出てくる後ろ姿犬に比べて、全く哀愁のない白犬の姿。曲線も鈍く、左足と右足を同時に出す面白かわいいポーズ。奥の犬も同じようなポーズをしていて、何か競っているのか、ダンスを踊っているのか、とにかく仲がよくて微笑ましい。隣の子もなかなか蘆雪の画業の中でなかなか出ないようなポーズと虚ろな目。こうしてみていくと分かるように、この絵巻は今後の蘆雪の子犬像の土台になりそうな描き方も取られつつも、まだスタイルが確立しない絶妙なかわいさが成立している。背景もほとんどなく、体だけで勝負している事もあり、蘆雪が子犬のかわいいをしっかりと模索している作品とも言えるだろう。《菊花子犬図》やこの先のかわいいと見比べることでも、さらに面白さが増す。

子犬のかわいいスタイルが完全に確立される前の、剥き出しの蘆雪らしさが現れているという意味でも、やはり川のほとりの子が特に素晴らしい。体はもちろん、展示ケースを見る人の声でも聞こえたが、視線が安定していない斜視、いわゆるガチャ目になっているのだ。この目は、応挙の犬、やこれまでランクインした犬と比べると落ち着きがなさそうで、圧倒的に幼く、そしてバカっぽく見える。この媚びていない解放されたかわいさがとても評価できるところである。なすにきびはドラえもんにしても、チョッパーにしても、スタイルが定まらない初期の、ずんぐりむっくりで怖くも見える頃の造形が、大好きなタイプである。

先ほどの右足を挙げていた灰色の子も顔が少し不細工な、狙っていないかわいいと言える。この間の抜けたような、力が入っていない動物の顔こそ蘆雪の真骨頂であり、今展覧会の円山応挙《鶴に福寿草図》12《流水白鶴図》13の二つの鶴図を見比べるところでもよく分かる。応挙に倣った鶴図も蘆雪にかかればアホっぽくなる。

禅の精神に通じ、禅画もよく描いた蘆雪だが、その「抜き」の表情描写は元々携えた天性のものだったのではないだろうか。シンプルながらも、その蘆雪の魅力が現れたのがこの川のほとりの子なのである。絵巻を同時だとみなすなら、川の向こう側で遊んでいる子たちに混ざりたくてうずうずしている様子かもしれない。Xで確認できる画像では、さらに左に黒と白の2匹の犬が走ってきている様子がある。その後の様子で、黒の子犬は川を容易く飛び越えたが、白い子犬は水が怖くて怯えているところである、と見ても余計かわいいだろう。やはり、個人的な癖で不遇な子の方が刺さるというところもある。そんな微笑ましいストーリーも想像できるようなこの作品は、相当悩んだものの、そのピュアさが決定打となった。この小川のほとりの白い子が2026年長沢蘆雪展で一番かわいい蘆雪犬!!!

◯蘆雪のかわいい

ということで結果は、

第5位 116《南天狗子図》の奥の灰色の子
第4位 130《菊花子犬図》の右端の子
第3位 124《寒山拾得図》の手前のおすわりの子
第2位 122《枯木狗子図》の寄り添う2匹
第1位 97《人物鳥獣画巻》の小川のほとりの子

でした。皆さんの好みと比べてどうだったでしょうか。犬を飼っていなくてもここまで楽しめてしまうのだから、飼っていてさらに犬愛が強い人はどうなってしまうんだろう。シンプルな線、シンプルな画面で描かれているから、どこまで行ってもじっくりかわいがることができる素晴らしい蘆雪犬。子犬のかわいいを突き詰めているだけでなく、応挙を超えて、バリエーションもさらに多く様々な人の好みに対応できるというのも、凄まじい強みでしょう。唯一無二、江戸のかわいいを牽引する画家。

子犬パラダイス特集の前期は4/12で終わってしまいましたが、114《童子に狗子図》、に加えてランキング5位の116《南天狗子図》、2位の122《枯木狗子図》、3位の124《寒山拾得図》の4つは後期にも展示されることが決定!まだまだ楽しめます。無量寺の虎も楽しみ!!

おわり

日本美術から転じて勝手にミロやクレーでやってしまっている、これまでのかわいいランキングはこちら↓








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