ポンコツ50代 ついにMBA体験クラス受講 参加者にはアラフィフも子育て中ママも海外赴任者も|第8話
「ねえねえ、MBAに興味ない?」
会社の同僚が、コーヒー片手に突然そう聞いてきた。
この何気ないひと言が、僕の40代後半の景色を一変させることになるなんて、そのときは、夢にも思ってなかった。
「実は、この会社でも通っている人いるらしいよ。若手も。」
そう続ける同僚の言葉に、思わず固まってしまった。
MBA?
仕事をしながら大学院に通えるの?
しかも、この会社にそんな人が? 若手で?
――もう、衝撃のオンパレードだった。
「いやー、興味はあるんだけどね……定年したら、と思ってた」
「そもそも仕事との両立って無理じゃない?」
そんなふうにお茶を濁してみたけど、動揺は隠せなかった。
同僚はあっさりこう言った。
「週末と平日夜、しかもオンラインもあるらしいよ。
「体験授業もあるから、今度、一緒に参加してみない?」
あのとき、なぜか「断れなかった」自分がいた。
“体験授業”という響きに、ちょっとだけ心が軽くなったのかもしれない。
「まぁ、とりあえずやってみるか」
その“とりあえず”が、僕にとっては、かなり大きな一歩だった。
実は、MBAについてちゃんと調べたことなんて一度もなかった。
勝手に「通学オンリー」「エリート向け」
「40代では遅すぎる」と思い込んでいた。
でも、そうじゃなかった。
オンラインで学べる大学院があり、働きながら通っている人も多くいた。
思い込みって、可能性の芽をつぶすんだな、と痛感した。
【MBA体験クラス参加してみた】
そして迎えた、体験授業当日。
もう、圧倒されまくりの衝撃の連続だった。
参加者は30代が中心かと思いきや、40代、50代の人もいた。
子育てをしながら、働きながら。
僕より忙しそうな業界・職種の人もいて、
中には海外赴任中の人までいるという。
しかも、みんな“ガチ”だった。
講師陣も、かつてサラリーマンとして働きながらMBAを取得した人ばかり。
その目は、どこか懐かしくて、熱かった。
「この人たち、変わりたいんだな」
「学びたいんだな」
そんな気持ちが、空気から伝わってくる。
そして、僕の中にも――
得体のしれない興奮がわき上がってきた。
なんだこれ。
なんか……すごいぞ、この感じ。
周りの人たちは、すごく優秀そうに見えた。
でもそれ以上に、パッションを感じだ。
その思い、熱量が僕にも伝播し、
気づけば、僕はワクワクしていた。
「ここなら、変われるかもしれない」
「この人たちとなら、一緒に進めるかもしれない」
根拠なんて、ない。
学力も、体力も、自信も、なにもない。
ただ、“同じ温度感”を持った仲間たちがそこにいた。
その事実が、僕の中に火をつけた。
知らないことを知るって、楽しい。
学ぶって、こんなにおもしろかったっけ?
ずっと忘れていた感覚が、体験授業の1時間ちょっとで、急に蘇ってきた。
「なんだよ……まだ、俺、やれるかもしれないじゃん」
もちろん、頭では冷静だった。
英語学習5分すら続かなかった、ポンコツなおやじ。
期待しすぎると、反動が怖いことも知ってる。
「どうせ無理だよ」「続かないよ」って、自分を疑う声も、ちゃんとある。
でも――それでも、心が動いたんだ。
“ここなら、変われるかもしれない”
それを感じた瞬間の、あの根拠なき期待――僕は、一生忘れないと思う。
正直、授業の内容はよくわからなかった。
ケーススタディ、論理思考…。
それもそのはず。
1科目につき、週10時間以上の勉強時間が必要だという。
3科目同時受講で、週30時間――1日4時間以上。
無理だ。英語の5分すら続かなかった、あの俺には、無理だ。
大学院スタッフからも「覚悟が必要です」と言われた。
さらには授業料もかなり高額だった…。
子どもの教育費もある。そんな余裕、どこにある?
でも、不思議と「やってみたい」という気持ちは強くなっていた。
今度こそ、「変わりたい」という感情に、ちゃんと向き合いたかった。
これまでの僕は、英語学習も趣味も、ひとりでやろうとしていた。
だから失敗したのかもしれない。
今度は、仲間がいる。
同じ思いを持った、仲間と一緒に学び、成長できるかもしれない。
だから続けられるかもしれない。
すぐに動きたくなった。
だから、僕は妻に相談した。
これまでいろんな“やるやる詐欺”を見てきた妻は、笑ってこう言った。
「やりたいなら、やればいいよ。でも、やるなら途中でやめないで。ちゃんと卒業して、MBA取ってね」
刺さった。刺さりまくった。苦笑するしかなかった。
それでも、彼女の背中を押すような言葉に救われた気がした。
だから、僕は動き出した。
ほかのMBA大学院の体験授業をいくつか受け、比較し、
最初に受けたオンライン対応の大学院に決めた。
実際に在学中の社員を見つけ、話を聞き、
その“地獄のようなスケジュール”の現実も知った。
でも――
あの頃のようなモヤモヤは、不思議となくなっていた。
「やらない理由」は、もうたくさん見てきた。
今度は、「やるための方法」を探す番だ。
そのために、まずは半歩だけでも、動いてみようと思えた。
🔚次回予告
とはいえ、いきなり本入学なんて、やっぱり無理だと思った。
だから僕は、**“小さな半歩”**を選んだ。
実は、僕が入った大学院には「単科生制度」というお試し枠があった。
そこで、ひとまず一歩だけ踏み出してみることにした――。
次回・第9話「まずは、半歩でいい」——単科生から始まった、僕のMBA地獄入門。
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この連載、まだまだ続きます。
つまずいて、転んで、それでもまた立ち上がっていく話を――
一緒に歩いてもらえたら、心強いです。
