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災害に備えるということ—「動ける体」も、備えのひとつです。

2026年7月28日、熊本県で震度7の地震が発生しました。

地震のたびに思い出すことがあります。2011年3月11日、東日本大震災。私は当時、仙台市にいました。

震災後の仙台市で、ウォーキングする人が増えた

震災から数週間が経った頃、仙台市の街でウォーキングをする人が増えたと感じました。それまであまり歩いていなかった人たちが、毎朝歩くようになっていた。

なぜだろうと思っていましたが、後から考えると理由はシンプルでした。

震災直後、ガソリンはほぼ手に入りませんでした。スーパーへの買い出し、避難所への移動、給水所までの水汲み——車が使えない中で、人々は歩くしかなかった。そのとき、「こんなに歩けなかったのか」と痛感した方が多かったのではないかと思っています。

歩く習慣を失っていた体が、いざというときに動けなかった。その経験が、震災後のウォーキング習慣につながったのではないか、と。

石巻市から仙台市泉区まで、歩いて帰った人がいる

震災当時、こんな話を聞きました。石巻市にいた方が、仙台市泉区の自宅まで徒歩で帰ったという話です。

石巻市から仙台市泉区まで、道路距離にして60〜70km程度。フルマラソンの距離が42.195kmですから、その1.5倍以上です。しかも震災直後の混乱した状況の中で、道路は渋滞し、余震が続き、食料も水も十分ではない状態で。

これは特別な体力の持ち主の話ではありません。「帰らなければ」という必要に迫られた、普通の人の話です。

災害時には、こういうことが起きます。

災害時に求められる体の能力

地震・台風・洪水——災害の種類を問わず、体に求められることは共通しています。

長距離を歩ける。重い荷物を持てる。階段を上り下りできる。長時間立ち続けられる。瓦礫をまたげる。

これらは「特別な体力」ではありません。日常の中で「普通に動けている」状態が、そのまま災害時の体の備えになります。

逆に言えば、普段から動けていない体は、災害時に「動けない体」になります。以前の記事で「動けなくなることが始まりだった」という話をしました。高齢の方にとって、避難生活での体力低下・フレイルのリスクは深刻です。避難所での長期生活は運動量が激減し、筋力低下・廃用症候群につながります。動けない体が、災害弱者になっていく。

避難所生活が長期化すると、体は急速に衰える

阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本県地震の避難所での調査では、入所から数週間で歩行能力・筋力が顕著に低下するケースが報告されています。もともと体力のあった方でも、狭い避難所での生活、歩く機会の減少、ストレスによる食欲低下——これらが重なると、体は急速に衰えていきます。

もともと体力の余裕がある人は、多少衰えても日常生活に戻れます。ギリギリの状態で災害に遭うと、そのまま回復できないことがある。これが「動ける体の備え」が必要な理由です。

「備え」としての動ける体

食料の備蓄、避難袋の準備、ハザードマップの確認——災害への備えはいろいろあります。ただ、「動ける体を作っておくこと」も、れっきとした備えのひとつです。

石巻市から仙台市泉区まで歩いて帰った人は、特別なトレーニングをしていたわけではないと思います。ただ「歩ける体」を持っていた。それが、60〜70kmという距離を歩き切る力になった。

「痛くなる前に、知っておく」——Radix Movement Designのキャッチコピーです。これは災害への備えにも同じことが言えます。災害が起きてから体のことを考えるより、普段から動ける体を作っておく。その積み重ねが、いざというときの体の力になります。

参考:河北新報「東日本大震災の帰宅困難者」/ 日本老年医学会「避難所生活と高齢者のフレイル」

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