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【至適PEEPの考え方】FiO₂を上げる前に見るべきこと|"濃度と構造"で酸素化を整理する(ICU基礎思考 Vol.2.5)

SpO₂が下がったときまずFiO₂を上げていませんか?
改善しなかったとき初めてPEEPを触っていませんか?
その順番がずっと不安のまま続く理由です

人工呼吸管理に携わる病棟へ配属されると
酸素化が落ちた場面でこんな流れになりがちです

  • SpO₂が低下する

  • まずFiO₂を上げる

  • 少し良くなる

  • また下がる

  • 「PEEPを上げた方がいいのかな……」

  • 「でもこんなに設定を上げていいんだろうか?」

もしあなたが今そう感じているならどうか安心してください
それはあなたの理解力の問題ではありません

「PEEPは怖い」と感じるのは自然です
上げすぎれば循環抑制が起こるかもしれない
過伸展が起きるかもしれない
医師が変更した設定が本当にいいのか迷う

その不安はとてもよく分かります

だから多くの現場ではFiO₂に頼り続けます
でもFiO₂だけで守れる酸素化には限界があります

臨床現場で通用する人は「なんとなくPEEPをわかる人」ではありません
「なぜそのPEEPなのか」を説明できる人です

この記事では
人工呼吸管理に携わる病棟へ配属されたばかりの新人さんに向けて
PEEPで混乱しやすいポイントを順番にやさしく整理していきます

  • なぜ新人がPEEPで混乱するのか

  • 酸素化は「濃度」と「構造」で分けるという軸

  • PEEPの本質(酸素を増やす装置ではない)

  • 虚脱と過伸展——なぜ両方がいけないのか

  • 「とりあえずPEEP 5」の落とし穴

  • FiO₂を上げる前に何を見るべきか

  • 至適PEEPの考え方とDriving Pressureの見方

までこの一記事で整理します
(酸素化の全体像から押さえたい方は先に
【酸素化の読み方】SpO₂低下は"濃度不足"か"肺胞虚脱"か|FiO₂とPEEPの使い分け(ICU基礎思考 Vol.2) を読んでおくと土台が整います)

読み終わるころには「PEEPが怖い」自分から
「今は濃度の問題か構造の問題か」を落ち着いて考えられる自分へ
その一歩を踏み出せているはずです

なぜ新人はPEEPで混乱するのか

ここがこの記事のいちばん大事なところです
先にお伝えします
混乱するのはあなたの理解力の問題ではありません
PEEPは教わり方の順番によってとても混乱しやすいのです

① 「酸素が足りない=FiO₂を上げる」しか教わっていない

いちばん多いパターンです
SpO₂が下がると反射的にFiO₂を上げる
これは間違いではありません

でも
原因が「濃度不足」なのか「肺胞がしぼんでいる(虚脱)」なのか
分けないといつまでも不安が残ります

② PEEPを「酸素を増やす設定」だと思っている

PEEPは酸素の濃さを上げる設定ではありません
肺胞を開き続けるための圧です
ここが混ざると
「FiO₂とPEEPどっちを上げればいいの?」が
永遠に解けません

③ 「とりあえずPEEP 5」で思考が止まってしまう

多くの現場でPEEP 5は初期設定として当たり前になっています
でも安全そう=その患者さんにとって適切とは限りません
PEEP 5はスタート地点でもなければ思考の終点でもないのです

④ 「上げすぎが怖い」だけで判断の軸がない

怖いのは当然です
でも怖さの正体は「基準がないこと」です
何を見て上げる/止めるかを知らないままだといつまでも触れません

💡 つまり混乱はあなたのせいではなく
「FiO₂・PEEP・酸素化・怖さ」が
ごちゃ混ぜに教わりやすい構造の問題
です
原因が分かると、ずいぶん楽になります

酸素化はまず「濃度」と「構造」に分ける

酸素化が落ちたときまず考えるべきは
じつは2つだけです

  • ① 酸素濃度不足(吸う酸素の濃さが足りない)

  • ② 肺胞虚脱(シャント優位)(肺胞がしぼんで、酸素が届きにくい)

この2つを分けられない限り
PEEPの議論は成立しません

FiO₂とPEEPは、役割が違う

この役割分担を曖昧にしたまま触ると

  • FiO₂も上げる

  • PEEPも上げる

  • どちらが効いたのか分からない

という状態になります
酸素化は難しくありません
混ぜているだけなのです

💡 ここが大事
「今を救うのはFiO₂で未来を守るのはPEEP」
まずはこの切り分けだけしっかり持ち帰ってください
Vol.2|酸素化の読み方 と合わせて読むとさらにクリアになります)

PEEPとは何か|まずは一言で

むずかしい定義から入ると嫌になってしまうので
先に結論だけお伝えします

PEEP(呼気終末陽圧)とは
息を吐ききったあとも肺の中に少し圧を残して
肺胞がしぼみきらないように支える設定です

ここでいちばん大事なことを一言で

PEEPは酸素を増やす装置ではありません
肺胞を「開き続ける」ための圧です

虚脱した肺胞はシャント(酸素が入りにくい状態)を生みます
シャントはFiO₂を上げても改善しにくいことがあります
だからこそPEEPが必要になるのです

「悪くなったら使うもの」ではない

重要なのはここです

PEEPは

  • 「悪くなったら使うもの」ではない

  • 「悪くさせないために使うもの」でもある

この視点が持てるかどうかでPEEPへの向き合い方が変わります
酸素化が落ちてから慌てて上げるのではなく
虚脱しやすい条件があるなら先に構造を支える
そんな考え方です

💡 イメージ
FiO₂は「濃い酸素を届ける」こと
PEEPは「肺胞がしぼまないようつっかえ棒をする」こと
濃さを上げてもしぼんだ部屋には届きにくい
だから構造を支える必要があるのです

虚脱と過伸展——なぜ両方がいけないのか

PEEPを考えるとき頭の中に置いておきたいのは
「足りない」と「やりすぎ」の両方があるということです
至適PEEPはこの真ん中を探す話です

虚脱(しぼむ)がなぜいけないのか

肺胞がしぼむと次のようなことが起きます

  • 酸素が入らない
    (シャントが増えFiO₂を上げても改善しにくいことがある)

  • しぼむ→開くを繰り返すと肺が傷つきやすい
    (アテレクトラウマ)

  • 無気肺が進みやすい

  • 結果として酸素化が安定せずFiO₂依存になりやすい

だからPEEPは「酸素を増やす」ためではなく
しぼませないための支えとして必要になるのです

過伸展(伸ばしすぎ)がなぜいけないのか

一方でPEEPを上げすぎると
肺胞を伸ばしすぎてしまうことがあります

  • 肺が傷つく
    (ボリュームトラウマ/バロトラウマ)

  • Driving Pressureが上がりやすい
    (肺への実質的な負担が増える)

  • 循環に負担がかかりやすい
    (静脈還流が減り血圧が下がりやすくなるなど)

  • 「酸素化の数字は良く見えるのに肺を壊している」状態になりうる

つまりPEEPは
上げれば上げるほど良いわけではないのです

だから至適PEEPは「真ん中」を探す

イメージするとこうです。

  • PEEPが足りない → 虚脱側に寄る

  • PEEPが多すぎる → 過伸展側に寄る

  • 至適PEEP → 虚脱も過伸展も少ないバランスのよい点

多くの場合このバランス点で酸素化も改善しやすくなります
ただし「酸素化の数字がいちばん良い=最適」と決めつけない
ことが大切です
数字だけで追うと
過伸展側に振れても「良くなっている」と見えてしまうことがあるからです

💡 ここが大事
至適PEEPは「酸素化を最大にする値」ではなく
虚脱と過伸展のあいだで肺を守りながら酸素化を保てる点です

「とりあえずPEEP 5」の落とし穴

人工呼吸を始める
とりあえずPEEP 5
多くの現場でこれが「当たり前」になっています
誰も疑わない
でも本当にそれでいいのでしょうか?

なぜPEEP 5が常識になったのか

理由はシンプルです

  • 生理的PEEPに近いとされる

  • 循環への影響が比較的少ない

  • 初期設定として無難

  • 教科書にもよく出てくる

つまり「安全そう」だからです
しかしここで大事なのは
安全そう=その患者さんにとって適切とは限らないということです

PEEP 5は「デフォルト」であって
「最適値」ではありません

ICUの患者さんは健常人と違う

健常な人では呼気終末でも肺胞が完全に虚脱しにくいです
でも人工呼吸管理をされている患者さんは

  • 鎮静されている

  • 仰臥位で固定されている

  • 筋弛緩がある

  • 肥満がある

  • 術後である

  • ARDSのリスクがある

といった条件が重なります
この状態でPEEP 5がいつも「生理的」と言えるでしょうか?

仰臥位・鎮静下では機能的残気量(FRC)は低下します
肥満ではさらに低下します
FRCが下がると肺胞は虚脱しやすくなります

つまり
その患者さんの「必要な最低限のPEEP」は
5では足りない可能性がある
のです

PEEP 5の落とし穴

PEEP 5で酸素化が保たれているように見えても
実際はFiO₂でしのいでいるだけかもしれません
高FiO₂を使い続ければ吸収性無気肺が進む可能性もあります

つまりPEEP 5は場合によって
「構造を十分に支えていない」状態に近いことがあります
これは強い言い方ですが現場で起きがちな落とし穴です

じゃあすぐ上げればいいのか?

違います
ここで思考停止して「じゃあPEEP 10にしよう」では意味がありません

大切な問いはこれです

「この患者さんは虚脱しやすい条件があるか?」

虚脱リスクが高いならPEEP 5は足りない可能性がある
虚脱リスクが低いならPEEP 5で十分なこともある

PEEP 5が悪いのではなく
「PEEP 5で思考が止まること」が問題
なのです

⚠️ 注意
PEEPの変更は必ずチームで医師の指示のもとに行うものです
ここで示したのは「考え方の型」です
数値の上げ下げを独断で行わないでください

FiO₂を上げる前に見るべきこと

ここまで読んで
「なるほど…濃度と構造か」と思ったかもしれません
では実際のベッドサイドで何を見ればいいのでしょうか

酸素化が落ちたとき
FiO₂を上げる前(または上げると同時)に次を確認してみてください

  • 虚脱しやすい条件はあるか?
    (鎮静・仰臥位・肥満・術後・無気肺疑いなど)

  • FiO₂依存になっていないか?
    (ずっと高いFiO₂でしのいでいないか)

  • 今は「今を救う」段階か?「構造を支える」段階か?

この問いが立てられるだけで
「とりあえずFiO₂」から一歩抜け出せます

<無料パートはここまで>

ここまでおつかれさまでした

無料パートでは

  • なぜ新人がPEEPで混乱するのか

  • 酸素化は「濃度(FiO₂)」と「構造(PEEP)」で分けること

  • PEEPの本質は酸素を増やす装置ではなく肺胞を開き続ける圧であること

  • 虚脱も過伸展もいけない
    だから真ん中(至適PEEP)を探すこと

  • 「とりあえずPEEP 5」で思考を止めないこと

  • FiO₂を上げる前に見るべき問い

まで順番に整理してきました
ここまで読んでくださったあなたはもう
「PEEP=怖い・よく分からない設定」という状態からは
抜け出せているはずです

でも現場で本当に手が止まるのは
じつはこの先です

  • 至適PEEPって結局何を見て決めるの?

  • Driving Pressureってどう計算してどう使うの?

  • Open Lungって予防的にPEEPを考えるってどういうこと?

  • 虚脱とHPVやPVループでの調べ方はどこまで知っておけばいいの?

  • FiO₂とPEEPのバランスをどう取るの?

このあたりは教科書にもバラバラにしか書かれておらず
現場でも「見て覚えて」と言われがちな
いちばん不安になりやすいところです
私自身もここが人工呼吸の携わり始めに知りたかったところです

ここから先(有料パート)であなたが手に入れられること

この続きの有料パートでは新人さんがつまずくポイントだけを
順番にやさしく解きほぐしていきます

  • Open Lungの視点
    ——「悪くなってから」ではなく「悪くさせない」PEEPの考え方

  • 至適PEEPの判断軸
    ——酸素化・循環・肺保護(Driving Pressure)の3つで見る方法

  • Driving Pressureの使い方
    ——上げてよいか過伸展ではないかを判断する軸

  • 一歩深い話(短く)
    ——HPVとlow-flow PVループでのオープニング/クロージング

  • FiO₂との戦略的バランス
    ——「今を救う」と「未来を守る」を両立する考え方

読み終わるころにはPEEPの数字の前で固まっていた自分から
「今この患者さんに何が起きていて次に何を見ればいいか」
落ち着いて考えられる自分へ
その一歩をそっと後押しできればと思っています

💬 3ヶ月後のあなたが
「PEEPってこういうことだったんだ」と
笑って振り返れるように
ここから先も焦らず一段ずつ一緒に進みましょう

それでは
ここから先の「至適PEEP」と「判断の軸」の話に入っていきます

ここから先は

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