【SpO₂が下がったとき】FiO₂とPEEPどっちを上げる?|"濃度不足か肺胞虚脱か"で整理(ICU基礎思考 Vol.2)
そのFiO₂
本当に“考えて”上げていますか?
SpO₂が88%に低下する
あなたはFiO₂を0.6から0.8へ上げる
SpO₂は92%へ回復する
「ひとまず大丈夫」
この流れ
身に覚えはありませんか?
でも
医師にこう聞かれたらどうでしょう
「なぜFiO₂を上げたの?」
その理由を整理して答えられますか?
若手の頃は反応でよかったかもしれません
でも現場で求められるのは
やがて「説明できること」に変わります
そして新人さんがいちばん不安になるのも
まさにここです
SpO₂が下がったらまず何を見る?
FiO₂を上げればいいの?PEEP?
なぜ酸素化はいつまでも曖昧なの?
もしあなたが今そう感じているなら
どうか安心してください
それはあなたの理解力の問題ではありません
この記事では
人工呼吸管理に携わる病棟へ配属されたばかりの新人さんに向けて
酸素化で混乱しやすいポイントを
順番にやさしく整理していきます
なぜ新人が酸素化で混乱するのか
酸素化はまず「換気」と分ける
酸素化低下はじつは2つしかない(濃度不足/肺胞虚脱)
FiO₂とPEEPの役割の違い
SpO₂が下がったときの判断の順番
症例と医師に聞かれたときの答え方
までこの一記事で整理します
(PEEPをもう一段深く知りたい方はあわせて
【至適PEEPの考え方】FiO₂を上げる前に見るべきこと(ICU基礎思考 Vol.2.5) もおすすめです)
読み終わるころには「とりあえずFiO₂」だった自分から
「今は濃度不足か?虚脱か?」を落ち着いて考えられる自分へ
その一歩を踏み出せているはずです
なぜ新人は酸素化で混乱するのか
ここがこの記事のいちばん大事なところです
先にお伝えします
混乱するのはあなたの理解力の問題ではありません
血液ガス(換気)はまだ整理しやすいです
pH → PaCO₂ → 換気量
でも酸素化になると急に頭が止まります
理由は単純です
情報が多く軸がないから
SpO₂
PaO₂
P/F比
FiO₂
PEEP
これらを同じレベルで並べて考えてしまう
だから迷うのです
① 「SpO₂が下がった=FiO₂を上げる」で思考が止まってしまう
いちばん多いパターンです
FiO₂を上げること自体は
まず低酸素を避ける対処として間違いではありません
でもなぜ下がったのかを分けないと
「上げて戻った…でも本当にそれでよかったのか?」が残ります
FiO₂が低くても虚脱や無気肺を除外してはいけません
② FiO₂とPEEPを「どっちも酸素を良くする設定」として混ぜている
FiO₂は濃度を上げます
PEEPは構造(肺胞の開き)を支えます
役割が違うのに混ぜると
「どっちを上げればいいの?」が解けません
③ 換気と酸素化を同時に考えてしまう
PaCO₂が崩れているのに酸素化だけを触る
あるいはその逆
順番が乱れるとますます混乱します
④ 「説明できる言葉」を持っていない
数字は触れる
でも「濃度不足と考えてFiO₂を調整しました」と言えるかどうか
ここが不安の正体でもあります
💡 つまり混乱はあなたのせいではなく
「数字が多く軸がなく役割が混ざりやすい」構造の問題です
原因が分かるとずいぶん楽になります
酸素化はまず「換気」と分ける
酸素化の話に入る前に
いちばん最初の整理をします
まずPaCO₂を見てください
換気(PaCO₂)が崩れている → まず換気を考える
PaCO₂が安定している → 問題は酸素化の可能性が高い
この分離だけで思考は一段整理されます
「全部を同時に直そう」としなくてよいのです
💡 現場のひとこと
SpO₂が下がってもいきなりFiO₂だけを見ない
まず「換気は大丈夫か?」
この一手間が迷子を防ぎます
(Vol.1-①|血液ガスの読み方 と合わせて読むと
換気側の順番がつながります)
酸素化低下はじつは2つしかない
ここが核心です
酸素化が落ちたときほぼこの2択です
① 酸素濃度不足
吸う酸素の濃さ(FiO₂)が足りない状態です
このときはFiO₂を上げることが対処になります
② 肺胞虚脱(シャント優位)・酸素化領域の減少
肺胞がしぼむ
無気肺が進むなど
酸素を受け取れる領域が減っている状態です
このときは濃さを上げるだけでは限界があり
構造を支える(PEEPなど)が本質的な介入になります
新人さんはまずここまでで十分です
「今は濃度不足か?それとも虚脱か?」
この問いが立てられるだけで
「とりあえずFiO₂」から一歩抜け出せます
いちばん大切な注意点
ここでよくある誤解を先に解消しておきます
FiO₂が低いからといって
「濃度不足だけ」と決めつけないでください
SpO₂が下がってきたときは
FiO₂が低くても
肺胞虚脱
無気肺
酸素化領域の減少
を同時に疑う必要があります。
FiO₂を上げることは
まず低酸素を一時的に回避する対処になり得ます
ただしそれは
「原因が濃度不足だと確定した」
という意味ではありません
💡 ここが大事
酸素化は難しくありません
混ぜているだけです
「2つに分ける」それが最初の軸です
そしてFiO₂を上げることと原因の確定は別です
FiO₂とPEEPは役割が違う
2つに分けたら
次に「誰が何を担当するか」を押さえます
FiO₂は「対処」——ただし「原因の確定」ではない
FiO₂を上げるとは
吸入酸素濃度を上げることです
濃度不足なら効果的です
またSpO₂が下がってきた場面では
まず低酸素を安全に回避するためにFiO₂を上げることがあります
でもここが大切です
FiO₂を上げた=「虚脱や無気肺はない」ではありません
肺胞が潰れている/酸素化領域が減っているなら
濃さを上げても限界があります
FiO₂をかなり上げてもP/F比が改善しない
そんな場面で思考が止まる人は多いです
それはあなたが悪いのではなく
「構造の問題を、濃度だけで解こうとしている」からです
PEEPは「構造介入」
PEEPは肺胞が開き続けるのを助けます
つまり構造に効きます
虚脱・無気肺・シャント優位なら
PEEPが本質的な介入になります
ここを理解していないと
PEEPを怖がる
FiO₂に頼り続ける(一時回避のまま終わる)
ARDSなどで迷う
状態になります
(PEEPの深さは Vol.2.5|至適PEEPの考え方 で整理しています)
💡 イメージ
FiO₂は「濃い酸素を届ける/まず低酸素を避ける」
PEEPは「しぼんだ部屋を開き閉じにくくする」
部屋がしぼんでいるのに濃さだけ上げても届きにくい
だから分けるのです
SpO₂が下がったときまず見る順番
現場で使えるように順番を一本にします
焦らず上からで大丈夫です
換気と分ける(PaCO₂は安定しているか)
酸素化の重症度を確認する(SpO₂/必要ならPaO₂・P/F比)
まず低酸素を安全に回避する(必要ならFiO₂を上げる=一時的な対処)
同時に原因を考える
濃度不足か?
虚脱・無気肺など酸素化領域の減少か?(FiO₂が低くても疑う)
FiO₂を上げても改善が乏しい/すでにFiO₂が高い → 虚脱側をより強く疑う
PEEPなど構造の介入を検討する(チーム・医師の指示のもとで)
ポイントは
③と④を同時進行で考えることです
FiO₂を上げることはしばしば第一の安全行動
それでも「なぜ下がっているのか」は止めない
FiO₂が低いからといって虚脱を除外しない
新人さんはまずこの順番を守る
それが第一歩です
経験を重ねると
④で「今は濃度寄りかも/虚脱寄りかも」と仮説を持てるようになります
⚠️ 注意
FiO₂・PEEPの変更は必ず施設の基準と医師の指示に従ってください
ここで示したのは「考える順番」です
独断で設定を変えないでください
<無料パートはここまで>
ここまでおつかれさまでした
無料パートでは
なぜ新人が酸素化で混乱するのか
酸素化はまず換気と分けること
酸素化低下は濃度不足/肺胞虚脱(酸素化領域の減少)の2択であること
FiO₂上昇は一時的回避になり得るが原因確定ではないこと
FiO₂が低くても虚脱・無気肺を同時に疑うこと
SpO₂が下がったときの見る順番
まで順番に整理してきました
ここまで読んでくださったあなたはもう
「SpO₂低下=とりあえずFiO₂」という反射だけではない状態に
近づいているはずです
でも
現場で本当に手が止まるのはじつはこの先です
症例で見るとどう考えるのが実践的なの?
「どこでFiO₂を上げ止めどこからPEEPを考えるか」をどう決める?
医師に聞かれたときどう答えればいいの?
重症度(P/F比など)はどう位置づければいいの?
このあたりは教科書にもバラバラにしか書かれておらず
現場でも「見て覚えて」と言われがちな
いちばん不安になりやすいところです
ここから先(有料パート)であなたが手に入れられること
この続きの有料パートでは
新人さんがつまずくポイントだけを
順番にやさしく解きほぐしていきます
✅ 統合フローの実践——「一時回避」と「原因仮説」を同時に回す考え方
✅ 症例A/症例Bで見る使い分け(低FiO₂でも虚脱を除外しない)
✅ 医師に聞かれたときの答え方——そのまま使える言い回し
✅ 若手が超えるべき壁と次に学ぶべきこと(Vol.2.5への橋渡し)
読み終わるころには
設定画面の前で固まっていた自分から
「今は濃度か?虚脱か?次に何を見るか」を
落ち着いて考えられる自分へ
その一歩をそっと後押しできればと思っています
💬 3ヶ月後のあなたが
「酸素化ってこういうことだったんだ」と
笑って振り返れるように
ここから先も焦らず一段ずつ一緒に進みましょう
それでは
ここから先の「症例と判断の言葉」に入っていきます
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