【五輪直前】2人のスーパースターについて語りたい🇺🇸
イタリアのミラノ・コルティナダンペッツォで開かれる冬季五輪が来週開幕する。私は、スキーが大の趣味だが、アルペンスキー競技の中継を見るのも冬の楽しみの1つだ。
せっかくアメリカに住んでいるので、アメリカが誇る2人の超偉大なアルペンスキー選手について紹介したい。普段はあまりレースを見ない人も、五輪前に知っておくと、楽しみが増すかもしれない。
先に、アルペンスキーを見る上での基本をまとめ、その後に2人の選手の紹介を書いていきたい。
アルペンスキーの基本
生身で最速150㌔を出すとんでも種目
アルペンスキーは、ターンの大きさが異なる滑降(Down Hill)、スーパー大回転(Super G)、大回転(Giant Slalom)、回転(Slalom)の4種目が基本となる。旗門と呼ばれる旗(ポール)の間をいかに速く滑り降りるかで競われる。
滑降→回転に向かってターンの大きさは小さくなり、最高速度も遅くなっていく。最も速い滑降の最高速度は150㌔、回転でも40~50㌔程度の速度が出るといわれている。
滑降やスーパー大回転などの高速系種目で、選手が高速で斜面に突っ込んでいく姿を見ると、「人間はこんなことができるのか」と感心してしまう。生身の体でこれだけのスピードを出すのだから、恐怖心も相当なものだろう。スタート地点での選手の表情にも注目だ。
一方で、旗門が斜面に細かく立てられている回転と大回転の技術系種目はターンが比較的細かい。ターンをするポールの近くでは、臀部や手が雪面に当たるほどスキー板を傾けながらリズミカルにターンを刻む。タイムを削るためにできる限りポール近くを通過するため、回転種目では手に持ったストックでポールを倒しながら滑走する。音も含めて迫力満点だ。
種目によって使用するスキー板の長さが異なっているほか、ストックなどにも違いがあるので、選手が使用する道具にも注目するとおもしろい。
五輪では滑降と回転を組み合わせたアルペン複合という種目も設定される。2人1組で行われ、1人が滑降、1人が回転を滑り、その合計タイムで競われる。
大回転、回転は2本の合計タイムで競う
滑降とスーパー大回転は1本のタイム。回転と大回転は2本滑った合計タイムで競われることが多い。
下記で紹介するアルペンスキーワールドカップでは、1本目30位以内に入らないと2本目に進めない。1本目は上位ランカーの方がスタート順は早く、良いコース条件で滑れることが多い。そのため下位ランカーは不利なコンディションでのスタートになるが、30位以内に残れれば、2本目は1本目の30位→1位のリバーススタートとなるためチャンスが生まれる。
私の記憶が間違っていなければ、オリンピックでは全選手が2本目に進める(30位→1位のリバーススタートは維持されるため、31位以下は、1位の滑走後に滑る)。
世界を転戦するワールドカップ
アルペンスキーでトップレベルの大会は、ワールドカップだ。アルペンスキーのワールドカップは、サッカーやラグビーとは違い毎年10月~翌年3月までヨーロッパや北米を転戦して競われる。世界を転戦することから、「ホワイトサーカス」ともいわれる。個人的には、自動車レースのF1と開催スタイルが似ていると感じている。
下記のInstagram投稿は今シーズンのレーススケジュール。転戦して競う年間シリーズとなっている。
40歳で現役復帰したスキー界の顔
圧倒的な実力と知名度
リンゼイ・ボンは、アルペンスキーファンでは知らない人はいないスーパーアイコンだ。史上最も成功したアルペンスキー選手の1人だからである。
滑降とスーパー大回転の高速系種目を得意とし、10年のバンクーバー五輪滑降で金メダル、スーパー大回転で銅メダルに輝き、18年の平昌五輪でも滑降で銅メダルを獲得した。2018-19年で一時現役を引退したが、それまでに歴代3位のワールドカップ勝利数82を獲得した。
テレビや雑誌などのメディア露出も多いことから、世間的な知名度も高い選手である。
膝にチタンを入れ復活
度重なるけがを経験し一時は現役を退いたが、膝にチタンの人工関節を入れる手術を行ったことで状況が大きく改善し、40歳を迎えた2024-25年シーズンに6シーズンぶりに現役復帰した。膝にチタンを入れながら高負荷のスキー競技をするのは医学的にも未知数のようで、その文脈で書かれた報道記事も出ている。
今シーズンはワールドカップの滑降でここまで、5戦中2勝を挙げ、他3戦も全て3位以内に入った。さらにスーパー大回転でも2回表彰台に上がり、絶好調のシーズンを送っている。この2勝によりワールドカップの通算勝利数を84に伸ばした。
男子の元最強選手がコーチに
ボンは今シーズン、ノルウェーの元スキー選手アクセル・ルンド・スヴィンダルをコーチに迎えた。彼はボンと同世代の高速系の元トップ選手。同世代の最強選手がチームを組んだとあり、私はわくわくした気持ちでそのニュースに触れた。
高速系の種目は、技術系種目以上に経験が重要とされる。恐怖心やプレッシャーへの適応、速く滑り降りるための戦略などがより求められるからだろう。スヴィンダルの存在も、今季の復活を後押ししているのだと想像する。
再び見舞われたケガ
好調を維持していた今季だったが、1月30日の五輪前最後のワールドカップの滑降(レースは転倒者続出で、後にキャンセル)で、大転倒してしまった。チタンが入った膝とは逆側の左膝をけがし、レース会場からヘリコプターで搬送された。翌31日に行われたスーパー大回転は欠場した。
五輪が開催される会場は、ワールドカップの初表彰台のほか、女子の通算勝利数記録更新、12回の表彰台とボンにとって縁の深い場所である。インタビューでは、彼女の名前のピザが売られているとも話していた。
1週間後の五輪に向けてはSNSで「オリンピックの夢はまだ終わっていない」と投稿し、復活を目指す意志を明確にしている。ファンとしては、何とか回復してほしいと強く願っている。
回転の金メダル最有力候補。30歳にしてW杯100勝以上
史上最強
ワールドカップ歴代3位の勝利数を誇るボンをさらに上回るのがミカエラ・シフリンだ。回転の大回転の技術系種目を得意とし、両種目で圧倒的な強さを誇る。まだ30歳でありながらワールドカップの通算勝利数は歴代最多の108を数え、現在も次々と勝利を積み重ねている。
五輪でも2014年のソチで回転の金、2018年の平昌で大回転の金、複合の銀を獲得している。
困難を抱えながら前進
シフリンも父との死別や転倒、ケガなどたび重なる困難を乗り越えながらキャリアを継続してきた。直近では24-25シーズンの序盤の転倒で重傷となり、さらにPTSDを抱えた。彼女自身がメディアにメンタルヘルスについて語っている記事もあり、自分の心身と向き合いながら、スキーに臨んでいる様子がうかがえる。
そんな中、今シーズンはワールドカップの回転で8戦中7勝を挙げ、すでに年間の種目別タイトルを決めた。また大回転でも、1週間前のレースでケガから復帰後初となる3位表彰台を獲得した。
シフリンの滑走技術は圧倒的で、特に回転では別次元の滑りをしているように見える。板の動きがスムーズで美しく、前に進む推進力も力強い。他の人はスキー板がずれて減速する旗門でも、何事もないかのように滑り降りてしまうことがよくある。
明るいキャラクターイメージ
シフリンはSNSにダンスの動画を投稿するなど、たびたびチャーミングな姿を見せている。また今シーズンからは自身がホストとしてポットキャストを始めたようで、スキー選手や他競技のアスリートなどとのトークの様子をポストしている。
私生活では2024年にノルウェーのスキー選手アレクサンダー・オーモット・キルデと婚約した。キルデもワールドカップ総合優勝経験のあるトップスキー選手で、ビッグカップル。彼も大ケガから今シーズン復帰し、お互いのSNSには治療やリハビリで支えあう姿がたびたび見られた。いちスキーファンとしては、2人の復帰は2人の関係性なくしては成し遂げられなかった可能性もあると想像している。
まとめ:最強スター競演なるか
個人的に注目のアルペン複合
この2人についてのみ語っているので感覚がおかしくなってしまいそうだが、ワールドカップの通算勝利数はシフリンが1位で、2位インゲマル・ステンマルク(86勝・スウェーデン)、3位ボン、4位マルセル・ヒルシャー(67勝・オーストリア)という具合だ。
2人で通算192勝というという名選手を同時に、かつ同じ国の代表として見られるのはとてもすごいことである。そしてアルペン複合は2人が出場し、1人が滑降、もう1人回転を滑り、その合計タイムで競われる。順当に考えれば、アメリカの女子は滑降がボン、回転がシフリンになる。
ボンのけがの状況次第ではあるが、もしこの2人のコンビが実現するなら、絶対に見逃したくない。本当にボンの回復を強く願っている。
また、この2人以外にも、女子のアメリカ代表は今シーズン、ワールドカップの表彰台を獲得した選手が複数いる。そのため、女子のアルペンスキーでは全種目で複数選手のメダル獲得の可能性があると考えている。
アメリカ在住の方は、日本選手以外にもアメリカ選手を注目して観戦してみてはいかがだろうか。

オリンピック中継はNBC/Peacockで行われる。詳しくは下記で確認できる。
参考
https://www.olympics.com/ja/news/mikaela-shiffrin-grief-olympics-beijing-2022
https://www.olympics.com/ja/milano-cortina-2026/sports/alpine-skiing
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