氷点下のアウシュヴィッツで見つめた過去と未来【中欧旅行②】
今年1月の中欧旅行で、ポーランド南部にあるアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所跡を訪ねた。ナチスドイツが110万人ものユダヤ人や政治犯を大量虐殺したことで知られるこの強制収容所の跡地は、現在博物館として公開されている。
8月15日の終戦の日を前に振り返り、平和や人権について考えたい。
きっかけは「関心領域」
昨年7月、アウシシュヴィッツ強制収容所の所長一家の暮らしぶりを描いた映画「関心領域」を観賞した。映画の中で一家は、収容所の塀のすぐ外側に住んでいるにも関わらず、“普通”の生活を送っていた。そこに何とも言えない気味の悪さを感じた。昨年見た映画の中では、最も強く印象に残っている。
ポーランドを訪れるのなら絶対に行ってみたいと思っていたので、旅程に組み入れた。訪れる前には、原作の「関心領域」のほか、「夜と霧新版」や「アウシュヴィッツで君を想う」などを読んだ。また旅行内で、クラクフの旧オスカー・シンドラーのホーロー工場とワルシャワゲットーの跡地にあるポーランド ユダヤ人歴史博物館も見学した。
訪ねて思ったこと・感じたこと
アウシュヴィッツを訪れた1月上旬は、地面にうっすらと雪が積もり、あたりは一面真っ白。気温は氷点下で、日本の感覚では非常に寒い日だったと思う。敷地内の地面も凍結しており、注意しながら歩いたことを覚えている。
前もって予約しておいた公認ガイドの中谷剛さんのツアーに参加した。ヨーロッパに留学中の学生を中心に10人弱の参加者がいた。
見えてくる1人1人の姿
ホロコーストはあまりにも多い犠牲者の数の印象が強いが、ここを訪れると1人1人の存在をより強く感じられるようになった。敷地に立つ建物内に設けられた展示スペースでは、写真やたくさんの遺品などを紹介している。
その中でも、壁がガラス張りになった展示ケースに、被害者の髪の毛や義肢、靴、カバンが積み上げられていた光景には衝撃を受けた。個々の人間が確かに実在したということを生々しく伝えるとともに、とてつもない数の人たちが犠牲となったことを強く突き付けられた。
またパネル展示では、収容所の中の様子を隠し撮りした写真があった。写っている人や木が斜めに傾いていた。知られていない事実を伝えるため、必死の思いで撮影したことが伝わってきた。

荒涼としていたビルケナウ
アウシュヴィッツから第2収容所のビルケナウへは見学者用のバスで向かった。降りた場所は、広大な敷地に延々とバラックの跡が残る荒涼とした場所だった。氷点下の気温でとても寒く感じたが、戦時中はもっと寒かったという。簡素なバラックやわずかな食事のみの生活で、極寒の凍土の上で重労働していたのは想像を絶することだ。
ビルケナウは鉄道の引き込み線と「死の門」と呼ばれる建物が有名だが、訪れたときは「死の門」が巨大な白いテントに覆われていた。1月27日に行われた収容所の解放80年式典の会場になるため、その準備が進められていたようだ。

自分ならどうするのか?
見学する上で、「自分ならどうするのか」という視点を持って臨んだ。「関心領域」を見たため、必然的に被害者側の視点に加えて、加害者側の視点を意識することになった。
今の立場や視点から歴史を振り返って見えば、虐殺行為は「絶対にやってはならないこと」だと分かるし、強くそう思う。しかし、当時のいち兵士だったらどうか。いち将校だったらどうか。
上官の命令を断れるのか?組織にたてつくことはできるのか?そもそも、虐殺行為が行われる組織の中にいて「絶対にやってはならないこと」だと気づけるのか?そう考えると、とても恐ろしく感じた。

私も考える。あなたも考える
ヒトラーは選挙で選ばれた。当時のドイツは第一次世界大戦で敗戦国となり、厳しい社会情勢だったという。大衆が持つやり場のない負の感情を、敵ではない対象を敵とみなして煽動していく動きは現代でも見られる。むしろ、日本では今回の参院選で顕著だったのかもしれない。
アウシュヴィッツには年明け早々にも関わらず、たくさんの来場者が訪れていた。ホロコーストのような大虐殺行為は、社会システムに組み込まれて始まってしまっては防ぐことが難しくなると想像する。始めない、起さないためには、これもまた1人1人が過去から学び、未来を考える必要があるのだと思う。
アウシュヴィッツの展示場の入り口には、ジョージ・サンタヤーナというアメリカの哲学者の言葉が掲げられていた。
「過去を記憶しない者は、過ちを繰り返す運命にある 」

写真まとめ















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