想像もしなかった専業主夫として迎える結婚1周年
「ジージージー」
妻がYouTubeで見ていた広島の平和記念式典の動画から、鐘の音とともにクマゼミの大合唱が漏れ聞こえてくる。それだけで「ああ、夏だな」と感じるのは、長年日本で暮らしてきた証だろう。
今、住んでいるアメリカ北東部は8月に入ってやや涼しい日が続いている。6月下旬から7月にかけては最高気温が35℃前後の日も多かったので、ここ数日は過ごしやすい。
少しさかのぼるが、7月に結婚1周年を迎えた。1年前は日本で普通に働きながら暮らしていた。その時は、1年後にアメリカで生活しているとも、専業主夫になっていることも全く想像していなかった。
今回は想像もしなかったアメリカでの暮らし、そして専業主夫としての日々を通じて感じた“夫婦のかたち”について少し書いてみたい。
夫婦のかたちに正解はあるのだろうか
楽しめるようになってきた料理
結婚当初は、2人で働きながら日本で暮らしていくと思っていた。私も妻も仕事にやりがいを持っていたからだ。しかし妻が4月からアメリカに赴任することになったため、私が3月末で仕事を辞めた。
日本では家事は妻と適宜分担していたが、アメリカに来てからは私の担当となった。これまで、家事は時間がない中、ある意味雑にこなしていた。けれど、時間を使ってしっかり取り組んでみると、意外に時間がかかることに気づいた。浅くやっていたものを掘り下げればそれだけ時間がかかるのは当然だ。家事でも仕事でも同じだろう。
仕事を辞めてからの4か月を振り返ると、料理のおもしろさに気づきはじめたと感じる。アメリカでは日本よりも極めて高い人件費と物価によって外食をすると非常にお金がかかるため、基本は自炊生活である。
日本では時間がなく、「腹を満たすための物を作る」という感じで手早くできる料理しか作っていなかった。これまで時間に追われて避けていたような手間のかかる料理にも挑戦できるようになり、料理そのものを楽しめるようになってきた。
夫婦の在り方を思考する
これまでに、「残って仕事を続けようとは思わなかったのか」「奥さんだけ行くという選択肢はなかったのか」といったことをいろいろな人から聞かれた。子どもがいるかいないかで全く違うと思うが、私が女性だったとしたらこういうことはあまり聞かれないような気がしなくもない。
私の周りでは夫側が仕事を辞めるという境遇の人はおらず、当たり前の疑問だとは感じる。正直なところ、直感的に決めたことであり、自分でも決断した理由を理解しきれていないような気がする。そのせいもあって、世間の“当たり前”から外れた動きをしたことについて、少し不安に思えることもある。
だからこそ、夫婦の在り方というものを考えてしまう。先日、妻とNetflixのリアリティー番組「ラブ・イズ・ブラインド JAPAN」を見ながら、自分たちを顧みた。この番組は、お互いの容姿が見えない状態で、会話を通じてパートナーを探すというものだ。出演者がパートナーを選ぶ上で大切にするポイントは本当にさまざまで、かつそれが何なのか最後までよく分からない(分かっていない?)出演者もいた。どんな関係を築くかは人それぞれで、正解がないのだと改めて感じさせられた。
私が思うのは、夫婦は世の中にたくさんいるが、一つ一つの夫婦の姿は意外とよく分からないということだ。「夫婦とはこういうもの」という、ふわっとした共通認識は共有しているが、個々の夫婦の生活スタイルや大切にする要素はそれぞれで違う。そもそも、ほかの人にはあまり話すことではないし、その必要もなく、見えづらいものなのかもしれない。
私自身、どのような夫婦像がいいのかよく分かっていない。しかし、妻は「ついてきてくれてよかった」と言ってくれたり、私が作った料理について「おいしい」と感謝してくれたりする。自分の役割があると感じているので、仕事を辞めてアメリカに来たことに後悔はない。




Homemakerとしての日々
英語では、主婦・主夫のことを「Homemaker」と言う。「Housewife」という言葉もあるが、最近ではジェンダー平等を考慮した中立的な表現として、「Homemaker」がより一般的らしい。「主婦・主夫」よりも、少しかっこよく聞こえる気がする。
そんなことはさておき、アメリカでの家事は日本と違うポイントが結構ある。戸惑いながら日々生活しているのが正直なところである。
ありがたいのは、アメリカのアパートには白物家電が最初から備え付けられていることだ。特に乾燥機と食洗機には頭が上がらない。洗濯で1番面倒な干す工程と、料理で1番面倒な食器を洗う工程が自動的に免除されるのだから本当に助かる。食洗機は日本でも使っていたけれど。
掃除に関して思ったのは、売っているスプレー洗剤(日本の○○マジックリンみたいなもの)がやたらと塩素くさい。全てではないのかもしれないが、なかなか慣れなくて結局日本のものを買ってしまった。あと、スポンジの材質が日本と違うのか泡立たなくて掃除している感が湧かないことも少し気になっていることだ。
料理の面では、オーブンを使った料理のレパートリーが増えた。アパートのガスコンロの下に大きなオーブンが備え付けられているからだ。日本ではオーブンレンジはあったが、専用のオーブンは持っていなかった。炊飯器と電気圧力鍋は日本から持ってきた物を変圧器を通して使っている。





買い物は週1回。定番はアジア食品スーパーのHマートやコストコ、ターゲットだ。Hマートでは肉や日本の食材、コストコでは消耗品、ターゲットではプライベートブランドの「Favorite Day」のお菓子を主な目的として行く。「Favorite Day」のお菓子は夫婦のお気に入りで、ブルーベリーホワイトチョコチャンクや、マドレーヌとブラウニーを掛け合わせたような焼き菓子をよく買っている。コーヒーや紅茶の付け合わせに最適だ。妻は紅茶が好きで1日に何杯も飲むので、これらのお菓子は私たちの日常の楽しみの一つになっている。

結びに
基本は自炊でほとんど外食をしていなかったが、先日の結婚記念日には近くの飲食店を訪れた。おいしいステーキやカラマリを味わいながら、夫婦でゆっくりと過ごす時間をかみしめた。

私は自分の時間を大切にする落ち着いた性格の人間だが、こちらでの生活が少しずつ軌道に乗ってきたので、自分なりに新しいことにも挑戦しながら過ごしたい。夫婦としては、妻が経験のあるテニスを6月末から始めた。これからも夫婦で過ごす時間を大切にしながら、1日1日を積み重ねていきたい。
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