額に入った夕暮れ#毎週ショートショートnote
「黄金色に輝いた夕日をね、ママはずっと見てた……」
「それでパパはこの写真を撮ったのね」
父はうなづく。そして額装された写真の中の後ろ姿を震える指でそっと触れた。その彼女を懐かしむように。
「ママを迎えにいこうか」
「パパ、今日はもう休みましょ」
「まだ夕方だ。ママが帰ってくる」
「そうね、でも疲れるから横になって待とうね」
そう言う私を父はしばらく不思議そうに見つめ、そして一変して微笑みながら言った。
「やあ、おかえり」
「ただいま。今日は夕暮れが綺麗だったよ」
「そうなのか。写真、撮ろう」
「黄昏時はすぐに終わるわ。また明日にしようよ」
父はまた写真を見て、その中にいる私の後ろ姿をなぞった。
そして静かに瞼を閉じその景色を映しとったのか二人でそれを見るかのように微笑む。
そして父は小さく寝息をたて始めた。
窓の外は静かに夜の帳が下りていく。
眠る父から写真をそっと預かる。
永遠の夕暮れは私と母と父をフレームの中に繋ぎとめている。
完410文字(ルビ含む)
たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題「額に入った夕暮れ」に参加させていただきました。SSではなく掌編ですが宜しくです。
まあ、たまにはね。
※ヘッダ画像はCanvaよりお借りしています。
