治療家のための〈治療以外の治療〉シリーズ 【解釈モデル②】テンプレ付き
解釈モデルは、治療家にとって何の役に立つのか?
「解釈モデル(Interpretive Model)」という言葉を聞くと、
少し学術的で、臨床とは距離があるように感じる治療家もいるかもしれません。
でも実際はこれ、
毎日の問診で、無意識にやっていることを言語化したもの
と言ったほうが近い概念です。
(解釈モデル概論はこちらの記事で。まだお読みでない方は先にお読みください)
解釈モデルとは、簡単に言えば、
「この人は、自分の不調をどう理解しているか」
「なぜ、今ここに来たと思っているのか」
という、その人なりの“病いの見方”のこと。
この考え方を整理したのが、
文化人類学者であり精神科医でもあった
アーサー・クラインマン(Arthur Kleinman)です。
彼は、
医学的に定義された病気(disease)
本人が体験している病い(illness)
は別物であり、
治療が噛み合わないとき、多くは
治療者と患者さんの「理解の地図」がズレている
と指摘しました。
治療家は「過去」と「現在」しか聞いていないことが多い
これは「治療家あるある」かもしれません。
多くの問診は、こんな構造になっています。
いつから?(過去)
今どんな症状?(現在)
何がつらい?(現在)
これまで何をした?(過去)
もちろん、これは必要です。
むしろ専門職として、きちんと聞くべきこと。
ただし、
ほとんど聞かれていないものがあります。
それが、
【未来】
です。
患者さんの頭の中には、必ず「未来」がある
患者さんは、無意識のうちにこう考えています。
このままどうなるんだろう
仕事は続けられるのか
将来、動けなくなったらどうしよう
いつになったら普通に戻れるんだろう
つまり患者さんは、
過去と現在の話をしながら、
頭の中では未来を見ています。
でも治療家が未来を聞かないと、
治療家:原因と状態を整理している
患者さん:先の不安を抱えたまま
というズレが生まれます。
この状態でどれだけ正しい説明をしても、
「何か違う」「しっくりこない」
という感覚が残りやすい。
治療家は、何となく
「症状を軽減させれば、
患者さんの不安や心配はなくなる」
と思っています。
患者さんが、未来に
どんな不安、心配を持っているのか?
を聞くこともせずに。
未来を聞くと、解釈モデルが一気に立体になる
解釈モデルを意識する、というのは
単に「考え方を聞く」ことではありません。
時間軸を含めて、その人の地図を見る
ということです。
たとえば、
「この症状、どうなったら一番困りますか?」
「これが続いたら、何が一番心配ですか?」
「本当は、どうなったら安心できますか?」
こうした未来の質問を一つ入れるだけで、
この人が恐れている未来
この人が望んでいる未来
治療に期待している役割
が見えてきます。
すると、
「あ、この人が欲しいのは
痛みゼロじゃなくて
“先の見通し”なんだな」
という理解が生まれる。
これが、解釈モデルが
「地図」
に近づく瞬間です。
治療のゴールは「未来」を共有して初めて合う
治療家はつい、
痛み
可動域
筋力
炎症
数値
といった専門職側のゴールで考えがちです。
一方、患者さんの未来像は、
仕事を休まずに済ませたい
家族に迷惑をかけたくない
また孫を抱きたい
「このまま悪くならない」と思いたい
という、生活と感情が中心であることが多い。
未来を聞かないまま治療を進めると、
治療は進んでいるのに、
満足度が上がらない
ということが起きます。
逆に言えば、
未来のイメージを共有できた時点で、
治療は半分終わっている
とも言えます。
解釈モデルは「説得」ではなく「地図の描き直し」
ここでよくある誤解があります。
それは、
解釈モデルを扱う =
患者さんを自分の考えに導くこと
だと思ってしまうこと。
でも実際にやっているのは、
患者さんが今使っている地図を一緒に広げる
過去・現在・未来を確認する
「こういう道もありますよ」と書き足す
という作業です。
これは誘導ではなく、
共同で地図を更新する行為です。
だからこそ、
押しつけにならず、
関係性も壊れにくい。
モヤモヤの正体は「未来を共有していない」だけかもしれない
治療家のモヤモヤには、こんなものがあります。
技術的には間違っていないのに手応えがない
なぜか噛み合わない患者さんがいる
説明しているほど距離を感じる
最高の技術を提供したのに次回の来院につながらない
その原因をすべて
「自分の技術不足」にしてしまって、
「新たな治療探し」から抜け出せなくなる。
解釈モデル、特に未来の視点を入れると、
あ、これは
技術の問題じゃなくて
未来の地図を共有できていないだけだな
と切り分けられるようになります。
これは、臨床の質だけでなく、
治療家自身を守る視点でもあります。
解釈モデルは、新しい技術ではない
解釈モデルは、
新しい治療法でも
特別なコミュニケーション技術でもありません。
問診の中で
未来を一つ聞いてみる
相手の地図を想像する
それだけです。
ただそれを、
「感覚」ではなく
「構造」として理解できるようになる。
それが、解釈モデルを臨床で使う、ということだと思います。
解釈モデルを引き出す「質問テンプレート集」
ここからは、
「解釈モデルをどう聞くか?」
という実践の話に入ります。
理論を知っても、
現場で使えなければ意味がありません。
なのでここでは、
明日からそのまま使える
でも尋問にならない
患者さんが自然に語り始める
そんな質問だけを厳選して紹介します。
ポイントは、
全部聞こうとしないこと。
一問でもいい。
ということです。
治療家がやりがちな失敗
多くの治療家は、
「問診」の時に、
ついこうなります。
理屈っぽくなる
正解を探しにいく
途中で説明したくなる
でも解釈モデルは
情報収集ではなく「地図の確認」です。
正しいかどうかは、いったん関係ありません。
【カテゴリ①】原因の解釈を探る質問
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