精神疾患で教員離職1,319人「先生の心が弱い」で済ませてはいけない
新聞を読んで、強い危機感を覚えました。
2024年度、精神疾患を理由に公立の小中高校などを離職した教員は、全国で1,319人。
前年度より増え、過去最多になったそうです。
さらに、精神疾患によって休職した教員も多く、学校現場では人手不足による負担の増加が深刻になっています。
先生が休む。
代わりの先生が見つからない。
残った先生に仕事が集中する。
その先生も疲れてしまう。
今の学校現場では、このような悪循環が起きているのではないでしょうか。
先生は「子どものため」に我慢してしまう
教員という仕事には、授業以外にも多くの業務があります。
授業の準備、テストの採点、保護者への対応、会議、行事、部活動、生活指導、書類作成。
子ども同士のトラブルがあれば、すぐに対応しなければなりません。
最近では、教員に求められる役割が以前よりも広がっています。
家庭の問題、発達に関する課題、不登校、いじめ、SNS上のトラブルなど、学校だけでは解決できない問題まで、先生が抱えることがあります。
しかし、多くの先生は真面目です。
「子どもたちのために頑張らなければならない」
「自分が休むと周囲に迷惑をかける」
「担任なのだから途中で投げ出せない」
そう考えて、限界まで我慢してしまいます。
責任感が強い人ほど、助けを求めるのが遅くなる。
これは学校だけではなく、企業でもよく起こることです。
人手不足が、人をさらに追い詰める
記事では、人手不足によって現場の負担が増えていることも指摘されていました。
教員が一人休職すると、その人が担当していた授業や校務を、ほかの先生が引き受けなければなりません。
代替の教員がすぐに見つかればよいですが、全国的な教員不足の中では、簡単ではありません。
その結果、残った先生の業務が増えます。
忙しくなれば、子どもと丁寧に向き合う時間も減ります。
仕事の質を保とうとすれば、長時間労働になってしまいます。
そして、別の先生が体調を崩す。
これは個人の心の問題ではありません。
完全に組織と仕組みの問題です。
メンタルヘルス対策は「休職者への対応」だけではない
多くの組織では、誰かが体調を崩してから対応が始まります。
産業医につなぐ。
カウンセリングを案内する。
休職制度を説明する。
もちろん、これらも必要です。
しかし、本当に大切なのは、その前です。
本人が限界になる前に、変化に気づくこと。
困っていると言える空気をつくること。
管理職が部下の状態を正しく把握すること。
仕事量を調整できる仕組みを持つこと。
相談した人が不利益を受けないこと。
こうした予防的な支援がなければ、休職者や離職者は減りません。
年に一度、ストレスチェックを実施するだけでは不十分です。
心の状態は、日々変化しています。
昨日まで元気に見えた人が、急に動けなくなることもあります。
だからこそ、日常の小さな変化を見逃さない仕組みが必要です。
管理職だけに背負わせてもいけない
学校では、校長や教頭、学年主任などの管理職にも大きな負担がかかっています。
教員の体調を把握しながら、人員配置を考え、保護者にも対応し、教育委員会への報告も行う。
管理職自身も余裕がない状態で、部下のメンタルヘルスを支えることには限界があります。
企業でも同じです。
「部下の変化に気づきなさい」
「ハラスメントを防ぎなさい」
「離職者を出してはいけません」
「業績も上げなさい」
これらをすべて管理職個人に背負わせれば、今度は管理職が潰れてしまいます。
現場を守るためには、管理職を支える仕組みも必要です。
相談できる外部の専門家、定期的な面談、管理職向け研修、匿名で相談できる窓口など、複数の支援策を組み合わせることが大切です。
「辞めるまで分からなかった」をなくしたい
人が離職した後、職場ではよく次のような言葉が出ます。
「そんなに悩んでいるとは思わなかった」
「いつも普通に見えた」
「もっと早く相談してくれたらよかったのに」
しかし、本人からすれば、相談できない理由があったのかもしれません。
忙しそうな上司には言えなかった。
弱い人間だと思われたくなかった。
人事評価に影響するのが怖かった。
相談しても何も変わらないと思っていた。
相談しなかった本人だけを責めることはできません。
相談できる環境をつくれていたか。
日頃から声をかけていたか。
本人の負担を把握していたか。
組織側も振り返る必要があります。
教員の問題は、すべての職場に通じている
今回の記事は学校現場の話ですが、製造業、介護、医療、小売業、運送業など、さまざまな職場にも共通する問題だと思います。
人が足りない。
休めない。
責任感の強い人に仕事が集中する。
相談する時間がない。
辞めてから問題が表面化する。
そして、また残った人の負担が増える。
人手不足の時代に必要なのは、採用活動だけではありません。
今いる人が安心して働き続けられる環境をつくることです。
一人の離職を防ぐことは、その人だけを守ることではありません。
周囲の同僚、管理職、家族、そして組織全体を守ることにつながります。
心の不調は、個人の弱さではない
精神疾患による離職者が増えていると聞くと、
「最近の人は打たれ弱い」
「昔はもっと大変だった」
という意見が出ることがあります。
しかし、そうした言葉では問題は解決しません。
仕事量、責任、人間関係、長時間労働、人手不足、保護者や顧客からの要求。
複数の負担が長期間積み重なれば、誰でも心身の調子を崩す可能性があります。
大切なのは、弱い人を探すことではありません。
人が壊れなくても仕事が続けられる仕組みをつくることです。
精神疾患で教員が離職したという数字の向こう側には、一人ひとりの人生があります。
その先生に教えてもらっていた子どもたちもいます。
支えてきた家族もいます。
数字だけを見て終わらせず、なぜそこまで追い詰められたのかを考えなければなりません。
先生が安心して働ける学校は、子どもたちにとっても安心できる学校です。
そして、社員が安心して働ける会社は、お客様からも信頼される会社になるはずです。
人を大切にするという言葉を、理念だけで終わらせない。
今、学校にも企業にも、本気の取り組みが求められていると思います。
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私は、製造業を中心に約30年間、営業と人材育成に携わってきました。
現在は、その経験を生かし、営業支援、新人教育、管理職支援、離職防止、働きやすい職場づくりに関する事業の準備を進めています。
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