自分に握ったおにぎりを、ひらくとき。
おにぎりを握る時、だいたい誰かの顔を思い浮かべている。
子どもだったり、夫だったり、妻だったり、働く現場だったり…
とにかく誰かが、両手で、片手で、齧り付いている。
その顔は、笑顔だったらいいと思うけど、泣いていても構わない。
おにぎりを通して、誰かと、手を繋いでいるのだ。
自分のためにおにぎりを握る時も、あると思う。
例えば、職場に持って行く時、お出かけする時なんかは、あらかじめ小さいおにぎりを握って持っていく。
その時、想像するのは、自分の未来だ。
職場での昼休憩、もしくは外出先でちょっと座れた時、カバンの中におにぎりが忍ばされていると、わざわざコンビニに寄らなくて済む。
そんな時、過去の自分に、感謝する。
過去の自分と、未来の自分が、手を繋いでいる。
今すぐ自分だけが食べる時に、おにぎりはわざわざ握らない。
茶碗と箸の用意があるなら、炊飯器からご飯をつげばいい。
海苔を散らして、鮭フレークをかければ、成分だって変わらない。
そんな時に、あえて握ってみる。 自分が食べられるちょうどいい量を、ボウルに掬って、好きな具材を埋め込む。
鮭、明太子、おかか、梅干し...全部入れたっていいし、混ぜ込んでもいい。 海苔を巻いてもいいし、巻かなくてもいい。
自分の手の大きさに合わせて、ぎゅっぎゅっと握る。
握っている間、考えるのは、ちょっとだけ先の自分だ。
握っている今と、あんまり変わらない。
でも、いざ口にすると、握った自分と、手を繋いでいる。
自分が、自分に、愛されているのが、すごくわかる。
「自分におにぎりを握る」
私はこれを、ことわざにしたい。
ちょっとだけ、先の自分を幸せにすること。
いつも後回しにしていることを、あえて今やってみる。
ちょっと野菜を切っておくこと。
エアコンのタイマーを調整しておくこと。
そういう時に、使うことわざだ。
自分におにぎりを握る。
そうすると、誰かの愛を待たなくても、
自分で、自分と手を繋ぐことができるのだ。
*
私は、このエッセイを本田すのうさんの企画「マスクドnote」に提出した。作品から作者を予想する企画に、覆面作家として参加したのだ。
募集されたその日のうちに、このエッセイを提出した。
その後、いろいろな出来事があった。
note創作大賞の締切、家庭内での色々。
それによって自分の気持ちも波打った。
ネガティブになることもあったと思う。
被害妄想や、嫉妬、自信喪失で、沈みがちになった。
Xにつぶやいては、誰かの「いいね」を待つ日々が続いた。
そんなとき、作者がわからない、このエッセイが投稿された。
「自分におにぎりを握る」
書いたのは、確かに自分だった。
でも、今の自分にすごく必要な言葉だと思った。
誰かの愛を待つんじゃない。
自分で自分におにぎりを握ることだってできる。
過去に書いたこの記事が、まさに「自分で握ったおにぎり」だった。
今、自分で握ったおにぎりが、ひらかれた。
過去の自分が、手を差し伸べてきた。
変だと思うけど、自分で書いた記事に、涙が止まらなかった。
そして、さらに嬉しかったのは。
誰だかわからないこの記事に、こんなコメントをいただいたことだ。
コメント失礼します。
「自分におにぎりを握る」が頭から離れません……。素晴らしい言葉。
おにぎりを握ると物理的にも自分と手をつなぐことになるから、2つの意味で「自分で、自分と手を繋ぐ」ことになるわけですね。実に深いいことわざだと思いました。
企画の趣旨とは違うと思いますが、純粋にとても素敵な話だと感じ、コメントさせていただきました。
純粋に、作品そのものに向けた感想に、胸がいっぱいになった。
不屈の屈葬さん。
私もあなたの記事、いつも、面白くて、大好きです…って、言いたかった。
言うとわかってしまうから、言えなかったけど、やっと言えた。
やっと、自分に握ったおにぎりをひらいて、食べられる時が来たと感じた。
noteを続けてると、待つ気持ちになることがある。
誰々さんからコメントが欲しい。
読んでほしい。
そんな気持ちばかりになってしまうことがある。
その気持ちも、もちろん大事だと思う。
でも、自分におにぎりを握れてたら、それでいいじゃないか。
過去の自分が、ちょっとだけ前の自分が、手を差し伸べてくれる。
それだけでも、書く意味っていうのはあるっていうものだ。
これからも、自分におにぎりを握り続けよう。
このことわざの意味は、自分で決めるんだから。
(了)
読んでいただき、ありがとうございました!
すのうさん、素敵な企画をありがとうございます。
下書き再生工場、すのう杯、マスクドnote。
すのうさんの企画は、いつも私を助けてくれます。
これからも、よろしくお願いします。
そして、私の作品を当ててくださった方。
作者はわからなかったけど、作品を好きだと思ってくださった方。
本当にありがとうございます。きっと私もあなたのことが好きです。
ささやかなお礼として、短歌を詠ませていただければと存じます。
私は、Xを中心に短歌を詠む活動ををしています。
例えば、こんな感じです。
すのうさんの宣伝会議協賛企業賞記念に贈った短歌。
@sanji_hondasnow さんに捧ぐ
— 亜麻布みゆ|言の葉みゆフィーユ (@amanumiyu) March 1, 2025
祝・宣伝会議協賛企業賞短歌✨
ひとひらの雪が大地をやわらげて小型ロケットのような新芽 / 亜麻布みゆhttps://t.co/GLBnWMTOno#短歌 #tanka #短歌アプリ57577 pic.twitter.com/NIYfN9rxbL
お名前や記事、作品の雰囲気から詠めたらと思います。
普段はこんな感じで詠んでます。

多い場合は私の短歌の技量考えて、下記の順番でゆっくり考えていければと思います💦番号でコメント欄に教えてくださったら幸いです。
①当たった!詠んでほしい。
②当たってないけど好き!詠んでほしい。
③マスクドnote参加してないけど好き!詠んでほしい。
また、詠んでほしいとは言わないけど亜麻布の作品が好きな方もコメントしていただいて大丈夫です(笑)
XのDMか、クリエイター問い合わせからお送りいたします。
気に入ってくださるよう一生懸命詠みますが、品質保証できません、すみません💦
また、私の予想は下記になります。敬称略で失礼します。
当たってた作品が紫色です。

文体から深く分析はできなかったのですが、書いた人の背景や気持ちを考えて推理しました。個人的にはみんなが迷ってたらいおんさんと波さん、マイトンさんを当てたことで自信を持ってます(笑)もしかして、第二弾の洞察王予備軍では…?
すのうさん、改めてまして素敵な企画をありがとうございました。
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3歳児を育てつつ、スキマ時間に創作を続けています。
いただいたチップは、家事の時短や創作時間の確保に使わせていただき、より楽しい文章をお届けする力に変えていきます。応援が本当に励みになります。