【第二部】ウサ子とカメコ ― 森が教える。

風の音がやわらいで、川面が光る。
彼女の横顔を見ていると、胸の速さが変わった。

森の奥で、互いの気配が重なった。
言葉も動きもなく、ただ空気だけが近づいてくる。

一歩踏み出した。
背中越しの光が眩しくて、息を合わせることしかできなかった。

光の中で立ち止まる。
息を合わせるしかなく、時間が静かに伸びていった。

空が暗くなり、雨が落ちはじめた。
川面に波紋が広がる。彼女は動かずに立っていた。

差し出された手が見えた。
ためらいの後、指先が触れた。雨脚は強くなっていく。

森の奥へ進む。
地面がぬかるみ、足音が混じり合う。道は細く続いていた。

木の屋根の下に着く。
濡れた袖を絞る。雨音だけが一定に続いている。

彼女が雨宿りの場所へ案内してくれた。
礼を言うと、軽く頷いて外の様子を見た。

雨が止んだ。
葉の先から光が落ちる。
足元に溜まった水が、静かに空を映していた。

森の奥はまだぬかるんでいる。
安全な道を選び、北側へ進むことにした。

北の道を進むと、池が光っていた。
鳥が水面を横切り、小さな波が広がった。

水の奥で魚が動いた。
葉の影が揺れて、模様のように沈んでいく。

光が差し、鹿が現れた。
濡れた草を踏む音が、森の奥へ消えた。

枝の上から一羽の鳥が降りた。
流れの端で、水を一度だけくちばしに含んだ。

森の奥が明るい。
風の向きが変わり、葉がひとつずつ光を返している。

胸の奥で、何かが動いた。
鳥の羽音と同じ速さで、呼吸が深くなっていく。
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