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[連載小説]第二話 犬だけど何? 第一章/第二話 野良犬の俺がホームレスのアイツに出会って すみかをゲットする話②

連載中の小説
あらすじ、1話はこちらから   
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第二話 
ばあちゃんの温もり
ばあちゃんと暮らした季節


車が止まった。
箱を持ち上げて、いよいよ家に入るぞ!
でも佐藤くんは俺を置いたまま、マンションに入ってしまった。
しばらくして誰かと出て来る音がしたから箱の中の俺が鼻をクンクンしてみると、いやな臭いがしてきた…
「犬嫌いの臭いかも…」
悪い予感は当たってしまった。

「ええ〜、わたしが犬苦手なの知ってるじゃない!何で持って帰って来ちゃったの?」
「そんな言ったって…社長に言われたら、仕方ないだろう?」

佐藤くんは、たぶん犬好きそうな匂いだったのに。
彼女さんに言い返さないんだ…

俺を車からおろすこともなく、車に戻ってきた佐藤くんは、また車のエンジンをかけた。

「ごめんよ…」

え?俺に話しかけてる?
俺は垂れた耳をちょっと広げて、
フッと耳元を浮かせるように集中して話を聞いた。

「おれは、犬飼いたいんだけどね…
アイツ、犬苦手なんだ…
来年結婚するから、彼女がイヤって言ったらお前を飼えないんだ。
でも、ばあちゃんなら大丈夫。
ずっと犬飼ってて犬好きだから。
安心しろ」

そう言いながら車を走らせた。
車は住宅街の一軒家で止まった。

「着いたよ」

佐藤くんは俺の入った箱を持ち上げ家の中に入った。

「ばあちゃん、健太だけど、いる?」
「まあ、けんちゃん、おかえり!
よく来たね。麦茶入れようか…
おや、その箱は何だい?」

名前、健太って言うんだ。
佐藤くんの、ばあちゃんは最高に、いい匂いがしてる。 犬好き確定!
優しそうな、ばあちゃん。

健太が箱を開けた。
とたんに俺のところには、まぶしい朝の光が差し込んできた。

「おや、まあ!
かわいい、わんちゃんだこと!」

ばあちゃんは、目を細めて言った。
「我慢してたろう?けんちゃん、この子、ほら、外に出してやらないと。
オシッコしたがってるよ」

何で、わかるんだ?
俺がオシッコしたかった事に顔見ただけで気がつくなんて、すごい!

健太は、俺を持ち上げた。

ばあちゃんも健太も大好きだ!
もう、うれしくて!

俺は健太にだっこされたとき、
嬉しい気持ちを伝えたくって、
しっぽをブンブンと勢いよく振った。

し、しまった…
その勢いで、俺はうれションしてしまった…

「ほらね。がまんしてたんだよ」
「ごめん、ごめん。
途中、止めるところが無かったからなぁ」
「大丈夫よ。ここは、ばあちゃんがふくから、
けんちゃん、その子の足をふいてあげて、水飲ませてやりな」 



それから俺は、ばあちゃんと幸せに、ほっこりとした毎日をすごした。
セミが「ミーンミーン」って賑やかな歌を歌っている。
「こんな暑い日は、素麺がいいね」そう言って素麺を食べながら、ばあちゃんはテレビを見てた。

シャリシャリと音をさせて「カキ氷」を作った時、ちょっとだけ練乳をかけたカキ氷を味見させてくれた。

「暑いよね…もう少し涼しくなったら、お前を散歩に連れて行くからね…」

散歩ってなんだろう?
俺はまだ外に出かけた事はなかった。

ばあちゃんは洗濯や料理の時でも、いつもテレビをつけていた。
ドラマを観ながら泣いたり笑ったり…
そして俺相手によく喋った。

「かわいそうにね…追い出されちゃったよ。
だいたい食堂とかの住み込みの仕事行くんだよ…
ほら!店の前のガラスの張り紙をビリッと破って、『働かせてください!』って入って行くよ…ほら、やっぱり」

俺は、ばあちゃんの解説付きでドラマをいっぱい見た。

いぬ世界で俺ほどテレビドラマを見た犬はいないと思う。
ネコ?ネコの世界のことは知らない。



健太はしょっちゅう会いに来てくれた。
涼しくなって虫たちが「リリ…リリ…」って鳴くようになった頃、健太が言った。

「ワクチンを打ったら散歩デビューだ」

そう言ってどうぶつ病院に連れて行った。
ちょっと怖かったけど、健太が一緒だったから俺はがんばってワクチンを受けた。
「ごほうびだ」と言って健太は赤い首輪をつけてくれた。

健太は毎週末会いに来てくれた。
「散歩に行くよ!」
そう言って、少しずつ散歩デビューをした。
アスファルトは物凄く熱いからって、健太は朝早くに散歩してくれた。

それでも道路はちょっと暑かった。
町は、歩くたびに草の匂いがする。
木には緑の葉っぱがいっぱい、ついてるんだ。
大きな木の下を歩く時は涼しいんだよ!

仲間へのあいさつも覚えた。
吠える犬もいたけど健太がいたから俺は大丈夫だった。

でも、そんなある日、健太がしょぼくれて、やって来た。
いつもと違う匂いがする。

「ばあちゃん、オレ、転勤になっちゃった。九州なんだ…ばあちゃんのところに、なかなか来れなくなる…」
「そう、さびしくなるね…長い休みには帰れるだろう」
「うん、休みには帰って来るよ。でもコイツの散歩にも来れなくなる」
「大丈夫だよ、この子なら。
ばあちゃんがシルバーカーを押しながら、そのあたり連れてやるから」

健太に会えなくて、さびしかった。
でも、ばあちゃんはいつも優しかった。
さびしがっている俺を元気づけるため、たまに美味しいお肉をドッグフードにトッピングしてくれたりした。

シルバーカーについて、ゆっくり、ゆっくり歩いた。
だんだん草も葉っぱも匂いが変わっていった。
そして葉っぱは、ある日、木から離れて地面に落ちていた。
葉っぱの上を歩くと「ガサガサッ」と音がして今までと違う匂いがあがった。
とってもいい匂い!
公園の葉っぱがいっぱいのところに、ぴょんと飛び込んで遊んだりもした。

家の中からも香ばしい魚の匂いが、あちこちからしたな。
ばあちゃんの台所からも、いい匂いがする。

「サンマだよ」と言って俺にも味見させてくれた。

テレビのある、ばあちゃんの部屋のこたつの上には、とてもいい匂いのする果物がのっていた。
みかんって言うのか。
ばあちゃんがみかんの皮をむくと、もっといい匂いが部屋に広がった。

ばあちゃんは、鶏がらを鍋で炊いていた。
湯気のたつスープを少しさましてからドッグフードにかけてくれた。

「骨は、だめだからね」って言いながら。
そのスープをかけるとドッグフードは仔犬の時食べたみたいな柔らかさにふやけて、味が染み込んでて、ものすごくおいしかった。




雪のちらつく夜更けのことだった。
いつもと違う臭いがして、俺は目を覚ました。

ばあちゃん?
ばあちゃんが胸を押さえていた。
苦しそうだ。
寒いのに、ひたいから冷や汗も出してる。
え、どうしたの?

そうだ!
俺はドラマで見たことある。
こんな時は、あのボタンを押したらいいんだ!

健太が一人暮らしのばあちゃんのために「安心見守り」の契約をしてた。

俺はそのボタンめがけて、必死で跳びあがった。
高い所にあって、なかなか届かなかった。

「えいっ!!」

全身の力を込めて跳んだ。
鼻先でそのボタンを押した。
鼻が痛かった…大切なばあちゃんのためだ。
何回も何回も挑戦した。
20回以上跳んだけど届かない…

今度こそ!
俺は後ろから走って勢いをつけて跳んだ。

「やったー!とどいた!!」
「これを押したら誰かが助けに来るんだ」って健太が言っていた。


おばあちゃんを助けて!!
俺は大きな声で鳴いた。
「ワンワンワーン!ワオーン!!」
町中の仲間に向けて吠えた。


「ワオーン!!」
ばあちゃんを助けて!!
みんなは、それに応えて返事した。
「ワオーン!ワオーン!ワオーン!」

町に仲間たちの声が響く中、
見守りの会社の人たちの車が家の前に止まる音がした。

ばあちゃんは俺を撫でながら言った。
「ありがとうネ…」
ばあちゃん?
「イ、ヌ…連れてかれるといけないから、逃げて、ドアが開いたらね…」
何言っているんだ?!
ばあちゃんと行くよ…待ってるよ…

「誰もいないだろう?
ばあちゃんが入院したら、お前は連れて行かれるよ……だから…
イ、ヌ…に、にげて」

その時ドアが開いた。
ばあちゃんは目でドアを見て合図をした。

わかった…
ばあちゃんの願いだ…
俺はドアの方に向かった。
ドアのところで振り返って、ばあちゃんの顔を見た。

ばあちゃんは、うなずきながら、
目でドアを見て合図してる。

ばあちゃん…わかった…
俺は逃げた。

走って、走って、走って…
ばあちゃんと暮らした家がどんどん、遠ざかっていく。

雪が舞っていた。
空から冷たいものがどんどん降ってきて町を雪だらけにした。

屋根も車も何もかもを雪がおおった。
道は冷たかった。
俺の足裏が地面にくっつくかと思うくらい冷たかった。 
町中が大きなかき氷みたいになっていった。

ばあちゃん、助かって!
ばあちゃん、助かって!
俺は、そう叫びながら
必死で走った。

「ワオーン!!」
仲間たちの声が後ろで小さく聞こえた…

          第3話に続く



第3話

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