[連載小説]ソグディアナ物語 12
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ここまでのあらすじ
ソジュンと留学生・純一は、インディーズバンドを組んだ仲間。
その後ソジュンはデビュー、純一はシルクロード研究を続けていた。
純一、ソジュン、マネージャーのアン・ミンジェの三人はサマルカンドの旅行に行くことに。
ブハラの宿で出会った長老はソグドの末裔だと言い、彼らと同じ古い木簡を持つアンマネージャーもは深い縁があるだろうと言い、
長老は『ソグディアナの古い物語』を語った。
ソジュンが木簡を触ると木簡は熱を持ち始めた。
ソジュンが翌朝目覚めると二人の姿はなく迎えのラクダに乗りシルクロードを旅することに。
パミールの雪山を遊牧民に先導されラクダのキャラバンは雪の降る山道を抜けた。草原を通り抜けた。タクラマカン砂漠では砂嵐に見舞われ、熱中症となり意識を失ったが手当てを受け、なんとか目的地のオアシスに至った。
そこは夢に何度も見た場所だった。
ソジュンは「ここに来たことがある」と確信した。
宿には、純一そっくりの遣唐使として来たという若者「田中臣純麻呂」がいた。
ソジュンは、もしかしてタイムスリップしたのでは、と思うようになった。
歓迎の宴で踊るロクサナを観て、ソジュンは身体中が熱くなるのを覚えた。
第十二章 亀茲の月灯りの下で
宴は終わった…
旭俊は、まだ胸の高鳴りを抑えられずにいた。部屋に居ても落ち着かないと思った彼は、中庭を散策することにした。昼と違ってオアシスの夜は肌寒い。
(頭を冷やすのにちょうど良い)
彼は葡萄棚の下に座り、ぼんやり月を眺めていた。
「そう言えばブハラでも、今日のような月が出ていたな…それにしても、純一とアン・マネージャーはどうしているんだろうな…」
ソジュンは、月を見上げながら思った。
すると、そこに近づいてくる人影があった。
「あら…?もしかして旭俊様ですか?」
彼が振り返ると、『あの娘』が立っていた。娘は淡い水色の服の上に金の刺繍の入った濃紺の上着を羽織っている。
やっとおさまっていた鼓動が、再び速まった。
「ああ…ロ、ロクサナ様でしたね。
新羅から来た金旭俊にございます。素晴らしい『舞い』をありがとうございました」
動揺しているとロクサナに気づかれないよう、彼は平静を装って手短に答えた。
「遠くから来られたと兄に聞きました…亀茲にお供したチャクシダトは私の兄なんです。ようこそ亀茲にお越しくださいました。
あっ、いけない…おばさんに言われていたのに。お茶をお出しするのを忘れていました。喉が渇きますでしょう?飲み物をお持ちしますね」
ロクサナはそう言うと、中に戻って飲み物を持ってきた。彼の前に置かれた器からは、湯気がたっている。
「お茶でございます。マフシードおばさんが用意してあったのに、お部屋にお持ちするのをうっかりしておりました。沸かし直してきました。このお茶、ここで飲まれますか?それとも、お部屋で?」
「あ、ありがとうございます。こちらで頂きます」
ソジュンは、茶を飲みながら空を見上げていた。
(何か言わなくては場が持たない…)
やっとの思いで、ひとこと言った。
「……月が綺麗ですね」
静かなオアシスの空には、ソジュンがソウルで見たこともないくらい月は大きく見えて、無数の星が瞬いていた。
「ホントに綺麗!今夜は星もいっぱいですね。うわー、これが春の月?!
『天山の雪解けの頃の月は優しい色をしているのよ』って、マフシードおばさんが教えてくれたとおり、『優しい色の月』ですね……
あっ、ごめんなさい。
マフシードおばさんって、私の乳母なんです…」
ソジュンには、月灯りがロクサナだけを照らしているように見えた。彼は手を温めるように器を両手で持ち、ゆっくりと茶を飲んでいた。
満月に照らされ、ロクサナの編み込んだ髪につけた小さなラピスラズリの髪飾りがキラキラと輝いた。
「お寒くありませんか?」
「だ、大丈夫です…」
「今夜は慣れない土地で落ち着かないかもしれませんね……
明日から兄やチャド兄さんが、亀茲をご案内すると申しておりました。今夜はゆっくりお休みくださいませ」
第十三章に続く
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