[連載小説]第二十六話 / 犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツと出会ってすみかをゲットする話 / 第六章スカイドッグスター⭐️群れの拡大
第六章スカイドッグスター⭐️群れの拡大
前回の話はこちら
ここまでのあらすじ
元捨て犬のビーグル犬『イヌ』は、飼い主のばあちゃんが心臓の発作で倒れ野良犬になった。
歌手の夢を持つホームレス青年ソラと出会い意気投合し、バディとなった。
やがて寅造とともにホームレス生活から再スタート。
老健施設の歌のイベントの後、イヌは健太、ばあちゃんと涙の再会を果たす。
ソラ、健太、イヌはバンド『スカイドッグスター』を結成し、
SNSに動画をアップ。
動画撮影では、オヤジバンドの応援も。
スカイドッグスターの井の頭公園路上ライブ活動を始めた。
犬仲間な声掛けでいつも聴きに来てくれる観客も少しずつ増えた。
初雪の日、イヌの初恋は雪とともに消えた。
彼らの推しの小説家が、「スカイドッグスター」をモチーフにしたファンタジー小説を発想を作ったという。
その主題歌の公園でのMV撮影の時、ばあちゃんを招待。
寅造じいちゃんを見たばあちゃんは泣き出す。寅造じいちゃんが健太のおじいちゃんだという事がわかった。
第二十六話 もう一度プロポーズ
じれったいくらいに、寅造じいちゃんは何のアクションも起こさなかった。しかも部屋にこもって、ふさぎ込んでいた。
心配になったソラと俺は、源じいちゃんに相談することにした。
健太が複雑な心境でいることも心配だったんだ。
「源じいちゃん、寅造じいちゃんの元気がないんだ…」
「そうかもな…けど、寅ちゃんも嬉しいに決まってるんだ。あの晩、涙流して喜んでいたからな。『おらに孫がいたなんて、明子ちゃんに生きて会える日が来るなんて』って言ってな」
源じいちゃんは、そう言って茶をすすった。
寅造じいちゃんから聞いた話を、俺たちに教えてくれた。
「意識が戻った寅ちゃんは、すぐに明子さんに連絡取ろうとしたんだ。
でもアパートの自宅の電話番号しか知らなくて、どうしても連絡取れなかったらしい。
退院してすぐ、デパートの職場の人たちに聞いたけど退職後でね、『引越し先はわからない』と言われたんだそうだ。
結婚退職ということで辞めて、一人で出産することになったんだ。
昔のことだから、友だちにも連絡先を教えられなかったのかもな…」
「寅ちゃん『ホームレスだったおらなんか、明子ちゃんに会わす顔がねー。
一人で子ども産んで育てた…そんな苦労も知らないで…会わす顔がねー』ってな」
「複雑な気持ちなんですね…」
「一番こたえているのが、その一人娘、健太くんのお母さんな。事故で亡くなったんだろう?『償うこともできねー』って言って泣き腫らしていたんだ」
「償うも何も、今から、ばあちゃん、健太とあの家で、いっしょに住めばいいのに?
ばあちゃんを幸せにすることの方が大事じゃない?…オレならそうすると思うんだけど。せっかく再会したのに…」
ソラは不思議そうに言った。
源じいちゃんは、深くため息をついた。
「可哀想なヤツだよ。好きあってたのに、こんなことなっちまって…」
「今からだって、プロポーズし直せばいいのに…なんでダメなの?」
ソラがもう一度尋ねた。
「そうさな…男の意地ってやつかもな…」
俺はたまらなくなって、つい大声で吠えるように言った。
「なんだよー、何が男の意地だよ!ばあちゃんが、どんなに寂しかったと思ってるんだ?!ばあちゃんの気持ちを考えないのかよ!」
「イヌ、何もそこまで言わなくたって…寅造じいちゃんの気持ちも考えろよ!」
「いや、イヌの言う通りだ。大事なのは明子さんの気持ちだ」
源じいちゃんも思い直したように、そう言った。
「あれ?!」
いつのまにか、源じいちゃんは『犬語』をマスターしていた。
「これからは通訳なしで話せるね」
と言おうとした時、ガタンとドアの開く音がした。
「イヌの言う通りだ!
おら、決心した。明ちゃんにもう一度プロポーズする!」
「寅!!」
「じいちゃん!!」
「ワン!!」
寅造じいちゃんの後ろに、秀樹さんが見えた。
「寅造おじさん、さっき来たんだ…なんか入るタイミングじゃ無さそうだったから、向こうの部屋で待ってもらってたんだ」
秀樹さんが照れくさそうに言った。
「寅ちゃん!決心したんだな」
源じいちゃんの声が嬉しそうだ。
俺も思わず叫んだ。
「ヨシ、こうなったら、俺たちで『寅造もう一度プロポーズ大作戦』だ!」
「おー!!!」
源じいちゃん、ソラ、俺は、タッグを組んで「寅造もう一度プロポーズ大作戦」を決行することにした。
「みんなありがとう」照れる寅造じいちゃん。
寅造じいちゃん…、がんばれ!!
俺はチア・ドッグになるつもりだ。
ばあちゃんは、捨て犬の俺の心の傷を癒してくれた。
俺は単純に、ばあちゃんに幸せになってもらいたい。
ラブ・コメをばあちゃんとたくさん観てきた俺は知ってる。
ばあちゃんは、ロマンティックな話が好きなんだ。
まず俺は寅造じいちゃんに伝えた。
てか、寅造じいちゃん、ずっと前から犬語習得済みだったのか…。
話は早い。
「ばあちゃんはね、ドラマのプロポーズ・シーンを観て、
『ああ、なんて素敵なんだろねー。
テーブルの脇に膝をついて、バラの花束をスッと掲げてプロポーズするなんて…かっこいいねー憧れるよ』ってよく言っていたんだ」
「そんな、小っ恥ずかしいこたぁできねー」
「がんばれ!」
「じいちゃん、勇気だせ!」
「そうだ!寅ちゃん」
「次の時間のレッスンは、ばあちゃんの好みの花の色だ。じいちゃん」
こうして猛特訓は続いた。
覚悟を決めた寅造じいちゃん、どんどんダンディになっていく。
時は来た!
寅造じいちゃんの
「もう一度プロポーズ大作戦」
いよいよ明日決行だ!
第二十七話へ続く
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