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[連載小説]第五話犬だけど何?野良犬の俺がホームレスのアイツに出会ってスミカをゲットする話⑤

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第五話 ソラの夢と寅造じいちゃんの話

夜更けに、俺は目を覚ました。
どこからか声が聞こえてくる…
ソラの声?
誰かとしゃべっているみたいだ。

「…それで、お前、なんで、ここに来たんだ?」
「オレ?うん…」
「お前の親は?」
「親はいないんすよ…ずっと前に亡くなったんで。オレ、じいちゃんに育てられて…ばあちゃんも早くに亡くなっちゃったから」

「そうか…
つらいこと、聞いちまったな…」
「いやいや。
オレのじいちゃん、優しかったんで。
釣りに連れてくれたりしたのも、はっきり覚えてて…。若い頃は建設の仕事してたらしいんですよ。
オレによく、オリンピックの頃ビル建てた時の話を自慢げにしてました。
オレが生まれたのは、1997だから、生まれるだいぶ前の話だったんすけどね…
その話してる時のじいちゃん、うれしそうだったな……」

「そうか…」
「オレの小さい頃はもう、現場の仕事はしてなかったですけど。
マンションの管理人してたんすよ。オレのこともあったし、現場監督の紹介だったらしいですけどね」
おやっさんは、黙ってソラの話を聞いていた。

「…でも、オレが10歳になった年の冬、じいちゃんがいなくなっちゃって…それから施設に行ったんですよ」
「そうか…苦労したな…」
「高校までは行ったんすけどね。
仲間ともわりと上手くやってましたよ。
だから苦労とまでは、思ってなかった。
夢があったし……オレ歌好きなんです。
じいちゃんも、結構うまかったんすよ。
一緒にカラオケ行ったこともあって。
高校卒業したら、ミュージシャンになろうって決めて、飲食のバイトしながら真面目に頑張ってたんすけど…
バイト先の店がつぶれちゃって、家賃が払えなくなって…
すぐにバイト見つかると思って、ネカフェ…あ、ネットカフェっていうやつがあるんすけど、そこにいながらバイトでつないでたたら、コロナ禍でいられなくなって…
それで、今に至るって感じです…」



寝静まった男らを気遣って、二人は小声で話していた。
ソラが、チラッと俺のほうをみた。

「お、お前、起きたのか?」
「トイレも行きたいだろう?少しぶらつくか…ここはよ、まあ、無法地帯みたいなもんだから、ちっとの散歩でも、その荷物も持ってかないと…」

おやっさんは、俺らを連れて、雪の街に出た。
都会の街も今夜は静まりかえって、ただ、しんしんと降りしきる雪の中を俺らは街を進んだ。ソラは全財産の入ったカートを引いて歩いた。

肩に雪を積もらせて歩いた。
しばらく行くと、おやっさんは、一軒のコンビニの通用口のベルを鳴らした。
すると、中から声がした。

「おお、寅ちゃん。今日は遅かったな。向こうで、あったまって行きな」
「悪いな」
「何言ってんだ。おや、今日は連れもいるのか?…おい。ちょっと休憩入ってくるから、あと、頼むな」
彼は、コンビニの誰かに声をかけて出てきた。
俺らを案内して、コンビニの裏側のガレージのところに案内してくれた。
そこは割と広い。彼は、俺らのためにストーブもつけてくれた。

「そこのトイレ使っていいからな」
そう言って、彼はストーブの上にヤカンをかけた。
「食えよ。期限切れの弁当だけどよ。わんちゃんは、このナゲット食べるか?」
「いつも、悪いな」
ヤカンから湯気が上がり出した。今まで凍りついたようになっていた俺らの体の芯までジワッと温まり、シッポの先まで温かくなってきた感じがする。俺は縮こまってたシッポを軽く振ってみた。いい感じだ。

「いつまで、降るかね…今日はもう、こんな雪の中、誰も客いないからね。ゆっくりして行きな」
「ありがとうございます」ソラも頭を下げた。

二人にお茶を入れた後、俺には、深めの紙皿に入れたお湯にパックの牛乳を加えてくれた。

「これ、飲めるか。お前の分だ」
「ありがとう!」
俺は思いっきり、しっぽを振った。今まで飲んだどんな牛乳より、美味しかった。



「で、寅造よお。お前も、もう、粘らないで、ここのガレージで良かったら、ここで過ごせよ。うちの息子たちもいいって言ってっから。お前、気ぃ使って、いつも断ってたろう? 
でも、もう遠慮するな。
おらだち、ともだちじゃねっか」
「すまん…今夜だけ、世話なっていいが?」
「遠慮するな。お前の母ちゃん父ちゃんには、オレが田舎いる頃、どれだけ世話になったかしれん。
そうと決まったら、寝袋持って来てやっから、待っとけ」

彼はそう言って、上にある家から寝袋やら、着替えをたくさん抱えて降りてきた。
「こんな雪の日に、あそこにいたら、凍死するさ。オレら、もう、年なんだからよ。わんちゃんには、この箱に毛布入れとくからな。ここに寝ろ」
そう言って、脇に置いてあったコンビニのダンボールをたくさん敷いて、その上に寝袋を二つ置いた。
そして、俺用のダンボールには、毛布を入れて脇に置いてくれた。

「じゃあ、気ぃ使わすと、いけねっから、シャッター閉めて、上がるな。
寅ちゃんも、お前らも、ゆっくり休め」
そう言って、ここの店のじいちゃんは、上がっていった。

おっちゃん、寅造って言うんだ。
俺はダンボールに入った。その中は、もう高架下から考えられない天国の様な暖かさだった。毛布のフワフワな肌触り。幸せ…。 
その幸せの一方で、急に、ばあちゃんを思い出した。
病院で、ばあちゃんは、どうしてるんだろう。

二人は、持ってきてくれたインスタントコーヒーを飲みながら、まだ、話し込んでいた。

「あいつな、同郷なんだ。おれはよ、中卒で、こっち来て、あっちこっちの建築現場で働いてたんだけど、あいつは、頭良くて、大学行ったって事までは、知ってたんだ。それから何十年も経って、おれの働いてた現場で再会した。現場監督で来たんだ」
ソラはコーヒーを飲みながら言った。
「建築って、じいちゃんと一緒じゃないすか!!監督として再会って、なかなかにすごいすね」
「驚いたよ!あいつは監督で、おれと立場違ってっから、おれは遠慮してたけど、あいつ、いいヤツで、しょっちゅう、仕事帰りに、誘ってくれてよ。『仕事終わったら、同級生の寅造と源ちゃんだ』って言って飲みに行った…」

ソラは黙って聞いていた。
「おれよ、仕事でケガして、もう現場の仕事出来なくなって、この年で他にできる仕事も無くてよ、まあ、知っての通りホームレスなっちまって…そしたら、縁があんのかね。あいつが、まさかの、ここでコンビニしてて、再会よ」
寅造じいちゃんは、コーヒーをすすりながら、しばらく黙ってたけど、また話し出した。

「おれもよ、おれみてぇなホームレスと、こんな都会に店構えるあいつとじゃ、さすがに遠慮したけどな…」
長い沈黙の後、寅造じいちゃんは口を開いた。
「もう、寝っか」
寅造じいちゃんは、そう言って、寝袋に入った。

外の雪は次第に激しくなり、都会ではめずらしく吹雪になっていった。
俺は二人といっしょに、シャッターの閉まったガレージの中の夜に包まれて眠った。
         第6話に続く


第6話





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