第一話 ― 駄菓子屋と、夜の招待状 ―
その駄菓子屋は、
いつもそこにあるわけじゃありません。
はるきは、学校の帰り道、
いつもの角を曲がった――はずでした。
でも、そこに見えたのは、
見覚えのない小さなお店。
「……こんなお店、あったっけ?」
はるきは、思わず立ち止まりました。
木の引き戸。
色あせたのれん。
店先の風鈴が風に揺れて、
チリン、チリンと、やさしい音を立てています。
「いらっしゃい」
店の奥から、
かすかな声がしました。
棚には、
見たことのあるはずのお菓子が並んでいます。
でも、どれも少しだけ、ちがう気がしました。
その中に、
ひとつだけ、
どうしても目が離せないお菓子がありました。
ふつうのチョコレートのようなのに、
なぜか、やけに気になるのです。
はるきは、それを手に取って、レジに持っていきました。
そこにいたのは、
おじいさんなのか、
おばあさんなのか、
よく分からない人。
その人は、にこりともせずに言いました。
「それはね。
開けるのは、夜だよ」
その夜。
はるきは、言われたとおり、
お菓子をあけずに待っていました。
布団に入って、
箱をそっと開けると、
中には小さな紙が一枚だけ、入っていました。
『ごしょうたい します』
今夜、ねむったら
「こどものくに」の いりぐちへ
おこしください。
この紙は、
まくらの下に いれて ねてください。
胸が、どくん、と鳴りました。
理由は分からないけれど、
なんだか、わくわくします。
はるきは、
紙をまくらの下に入れて、
そっと目を閉じました。
すると、
からだが、ふわっと軽くなって――
気がつくと、
あたたかい朝日の光の中にいました。
目の前には、
「こどものくに」と書かれた
大きな門。
人影はありません。
「……ここは、どこだろう?」
門のそばには、
小さな看板が立っています。
「招待状を だしてください」
はるきは、
はっとしました。
招待状……?
あわててポケットをさぐると、
さっきまで
まくらの下にあったはずの紙が、
そこにありました。
招待状を取り出した、その瞬間。
ふわっ。
紙は静かに消えて、
かわりに、
小さな机が目の前に現れました。
机の上には、
二つのものが並んでいます。
ひとつは、
小さな袋に入った、
きらきら光るコイン。
数えてみると、
二十枚。
もうひとつは――
一冊の、
薄くて、しっかりしたノートでした。
本というほど分厚くはなく、
手帳というほど小さくもありません。
表紙は、
吸いこまれそうなほど、
深くて青い空の色。
よく見ると、
雲が、ゆっくり動いています。
印刷でも、絵でもなく――
まるで、
小さな空が閉じこめられているみたいでした。
表紙に、
白い文字が、
静かに浮かびあがります。
PASSPORT
そのまわりに、
淡い光が、ほのかに漂っています。
中を開いても、
まだ何も書かれていません。
はるきがノートを閉じようとした、
そのとき。
さらさら、と、
音もなく、
文字が勝手に書かれ始めました。
これは、『こどものくに』のパスポート。
コインと車は、あなたのものです。
車にのって、ボタンを押してください。
その文字が消えると同時に――
机の横に、
ふわっと、
小さな車があらわれました。
ハンドルはなくて、
ボタンがひとつだけ。
はるきは、
なぜだか、不思議と怖くありません。
言われたとおり、
そっとボタンを押しました。
すると、
車はすーっと動き出します。
朝日に照らされた道を、
止まることなく、
まっすぐに。
どれくらい走ったでしょうか。
やがて、
車は甘いにおいのする場所で、
静かに止まりました。
目の前には――
お菓子でできた、
小さな、小さな家。
そのとき。
かたん、という音がしました。
でも、
誰もいません。
はるきが近づくと、
家の前のポストの中に、
一通の手紙が入っていました。
封筒には、
「はるきさまへ」。
中を開くと、
やさしい字で、
こう書いてあります。
『まずは、
この世界の きまりを
しってください』
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👉第二話 この世界のきまりと魔法のレストラン
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子どもたちが働く体験ができる国で、
はるきは、いろいろな立場になりながら、
決めること・選ぶことのむずかしさを体験します。
会社法、民法、不動産登記法――
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🌿司法書士ママ|みか
平成19年司法書士試験合格。
売買・相続などの不動産登記や会社・法人登記に15年以上たずさわっています。
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