『見ててね。』が、少し嬉しかった日
「パパ、見ててね!」
娘がそう言って、小さくジャンプした。
本当に少しだけ。
「おー、跳べたね!」
そう言うと、娘は嬉しそうに笑う。
「もう一回!」
ぴょん。
「今の見た?」
「見たよ。」
「じゃあもう一回!」
ぴょん。
何回目だっただろう。
最初はちゃんと見ていたはずなのに、
だんだん返事だけになっていた。
「すごいね。」
「うん、見てるよ。」
そんな返事をすると、
娘がじっと私を見て言った。
「パパ、ちゃんと見てた?」
思わず笑ってしまった。
「あ、ばれてる。」
見ているつもりだったけど、
本当は返事をしていただけだった。
⸻
最近は、テレビを見ていても同じだ。
何度も流れるCMの歌を覚えたのか、
突然立ち上がって、
「パパ、見ててね!」
と言う。
そして、一生懸命歌って踊り始める。
歌詞は少し違うし、
踊りもリズムが合っているのか怪しい。
でも本人は大真面目だ。
歌い終わると、
得意そうな顔で聞いてくる。
「どうだった?」
「かわいかった!」
そう答えると、
満足そうに笑って、
「もう一回やる!」
また最初から歌い始める。
正直、
可愛すぎる。
⸻
考えてみると、
娘は褒められたいわけじゃない。
ジャンプも。
歌も。
踊りも。
どれも、
上手だから見せているわけじゃない。
ただ、
「見て。」
その一言なんだと思う。
一番見てほしい人に、
ちゃんと見てもらいたい。
それだけなんだ。
⸻
子どもと暮らしていると、
「見て。」
と言われることが本当に多い。
料理をしている時も。
洗濯を畳んでいる時も。
少し手が離せない時も。
正直、
「あとでね。」
と言いたくなる日もある。
それでも娘は、
何度でも言う。
「パパ、見ててね!」
⸻
きっと娘が見せたいのは、
ジャンプじゃない。
歌でもない。
踊りでもない。
その時間を、
私と一緒に過ごしたいだけなんだと思う。
だから最近は、
「パパ、見ててね。」
と言われるたびに、
少しだけ嬉しくなる。
今日も、
娘は小さくジャンプして、
CMの歌を歌って、
また聞いてくる。
「見てた?」
「うん、ちゃんと見てたよ。」
そう答えると、
娘は満足そうに笑った。
その笑顔を見ながら、
「見ててね。」
と言ってくれる今は、
きっと今しかないんだろうな、と思った。
⸻
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