建設的なフィードバックができる人が、組織を救う
現場から未来へ──CEO週報|2026年3月24日・第1回
今週の会議の終盤で、メンバーに伝えたことがある。
経営者として、私が最も助けられているのは、悪い点やうまくいっていない点を指摘してくれるメンバーだ。
褒め言葉や同意は嬉しい。でも、それだけでは組織は良くならない。「ここが問題だと思います」「このやり方は間違っていると思います」と言ってくれる人がいるからこそ、軌道修正ができる。
ただし、ここで大事なのは「建設的」という言葉だ。
ただ文句を言うのと、建設的なフィードバックを伝えるのは、まったく別のものだ。
文句は、自分の不満を吐き出す行為だ。「これが嫌だ」「あれがダメだ」。主語は自分であり、目的は感情の発散だ。
建設的なフィードバックは違う。「この部分を変えれば、もっと良くなると思う」「この方法だと、お客様にとってこういうリスクがある」。主語は組織やお客様であり、目的は改善だ。
私が求めているのは、後者だ。
会議では、私たちの会社が大事にしている考え方を改めて伝えた。
5つの立場の人たちが、皆幸せになる提案をすること。
お客様。自分たちチーム。協力業者。そして家そのもの。これらすべてにとって良い提案ができるかどうか。そういう意識レベルでフィードバックをしてほしい。
自分だけが楽になる提案は、フィードバックではない。お客様だけを向いた提案も、全体最適にはならない。5つの視点を同時に持ちながら、「こうした方がいい」と言える。それがプロの仕事だ。
会議では、あるメンバーに対して具体的に話をした。
建築士という資格を持ちながら、その専門性を十分に発揮できていない場面がある。上司に対して、課題を伝えることはできている。でも、「建築士としてはこう考える」という専門的な視点からの提言が足りない。
これは能力の問題ではない。セルフイメージの問題だ。
「自分は建築士だ」という自覚が強くなれば、発言の質が変わる。遠慮がなくなる。「素人として意見を言う」のと「プロとして提言する」のでは、同じ内容でも重みがまるで違う。
自分自身の専門性を認め、それに誇りを持つこと。セルフイメージを大きくすること。それが、建設的なフィードバックの土台になる。
ウルトラマラソンには、「ペースが落ちているよ」と教えてくれる仲間がいる。
レース中、自分ではペースの低下に気づかないことがある。疲労で感覚が鈍り、「まだ大丈夫」と思い込んでいる。そんなとき、並走する仲間や沿道のサポーターが「少し落ちているよ」と声をかけてくれる。
その一言が、ありがたい。
もちろん、聞きたくないときもある。「わかってるよ」と思うこともある。でも、言ってくれる人がいなければ、気づかないままズルズルと落ちていく。言ってくれたからこそ、立て直せる。
組織も同じだ。「うまくいっていますよ」としか言わない人に囲まれた経営者は、ペースの低下に気づけない。「ここが問題です」と言ってくれる人がいるからこそ、組織を正しい方向に保てる。
もう一つ、会議で伝えたことがある。
迷ったら、言え。迷ったことは全部言え。
特に慎重派のメンバーに対して、この言葉を向けた。
慎重であることは美徳だ。でも、慎重さが「言わない」という選択に変わった瞬間、それは先延ばしになる。「もう少し考えてから言おう」「もう少し確証が得られてから伝えよう」。そう思っているうちに、タイミングを逃す。
完璧なフィードバックを待つ必要はない。6割の確信でいい。「まだ整理しきれていないんですが」と前置きしてもいい。不完全でも、今伝えることに価値がある。
最後に、透明性の話をした。
言っていることと、やっていることが一致しているか。
これが、今後ますます重要になってくる。
建設的なフィードバックを「した方がいい」と言いながら、自分はしない。プロ意識を持てと言いながら、自分は学んでいない。そういう不一致を、人は敏感に感じ取る。特に、毎日一緒に働くメンバーは。
透明性とは、特別なことではない。言ったことをやる。やったことを言う。ただそれだけだ。でも、それだけのことを一貫して続けるのは、想像以上に難しい。
だからこそ、フィードバックが必要なのだ。自分の不一致に、自分では気づけないから。誰かに指摘してもらって初めて、修正できる。
フィードバックを求める組織は、常に進化できる。フィードバックを避ける組織は、静かに衰退する。
どちらの組織でありたいかは、明らかだ。
現場で考え、未来を動かす
