一番危険なのは、間違えることじゃない。「自分は正しい」と信じ込むことだ。
正しい人になる必要はない。
昨日より、少しだけ自分を修正していければいい。
── 人口4万人の港町で、毎日5件以上、年間1,200件の経営の相談を受けている、荒川健生です。
今日は、うまくいっている人ほど危ない話。
「自分は正しい」という思い込みについて。
■ 「一度食べてもらえれば、分かります」
先日、新商品について、熱心に語ってくれた話しだ。
「これは、絶対に売れます」と言ってくれた。
話を聞くと、思いがある。
技術もある。
商品への愛情も、本物だった。
でも、気になって聞いた。
「誰が、どんな場面で、なぜ買うんですか」
答えが、少し曖昧に。
でも、「一度食べてもらえれば、分かります」といった。
この言葉は、作り手にとっては希望だ。
でも、お客様には関係がない。
なぜなら
お客様は、食べる前に、買うかどうかを決めるからだ。
価格も聞いた。 競合より高い。
理由を尋ねると、「良い材料を使っているから」と答えた。
でも、お客様は原価にお金を払わない。
自分が感じる価値に、お金を払う。
この方は、何も考えていなかったわけじゃない。
むしろ、真剣に考えていた。
ただ、一つだけ抜けていた。
「自分とお客様の見え方の違い」という視点だ。

■ 人は、知らないから間違うのではない
多くの人は、経営者が判断を間違えるのは、知識や経験が足りないからだと思っている。
でも、現場で見てきた実感は、少し違う。
経営者は、考えていないわけじゃない。
商品のことも、お客様のことも、会社の未来も、何度も考えている。
それでも、齟齬がでる。
なぜだろうか。
人は、情報が足りないから間違うだけじゃない。
信じたいことを信じるために、都合の悪い情報を見なくなるから、少し違った方向にいきがち。
「この商品は、売れるはずだ」
「価格を上げたら、お客様が離れるはずだ」
「うちの社員は、分かってくれているはずだ」
「今は苦しいが、そのうち良くなるはずだ」
この「はずだ」が、判断を狂わせる。
願望から考え始めると、現実を検証するのではなく、願望を証明するために情報を集めてしまう。
売れなかった時も、いくらでも説明できる。
「認知が足りなかった」
「景気が悪かった」
「タイミングが悪かった」
でも、本当は商品に魅力がなかったのかもしれない。
価格と価値が合っていなかったのかもしれない。
そもそも、お客様が必要としていなかったのかもしれない。
ターゲットが違ったのかもしれない。
発信媒体、工夫が必要だったかもしれない。
これは、あの相談者だけの話じゃない。
自分を含めた、全員の話だ。
人のことは良く分かるのに、自分のことになると・・・
という方も実はこれが原因の場合がある。

■ 希望と、希望的観測は、違う
希望を持つことは、大切だ。
未来を信じなければ、挑戦はできない。
でも、希望と希望的観測は違う。
希望とは、厳しい現実を見たうえで、それでも未来を変えようとする意思だ。
希望的観測とは、厳しい現実を見ないまま、未来は良くなると信じることだ。
似ているようで、まったく違う。
売上が落ちている。
お客様が減っている。
社員が辞め始めている。
新商品への反応が弱い。
こうした兆候があるのに、
「まだ大丈夫」
「一時的なものだ」
「もう少し続ければ、結果が出る」
と考えてしまう。
もちろん、本当に一時的な場合もある。
続けることが正しい場合も、たくさんある。
でも、その判断は、願望ではなく事実から行わなければならない。
数字は、どうなっているのか。
お客様は、実際に何と言っているのか。
競合は、何を変えているのか。
現実を見た結果として続けるのと、現実を見ないまま続けるのとでは、同じ継続でも、意味がまるで違う。

■ 世界一の経営者も、自分を疑っている
僕が最近聞いて「はっ」とした言葉。
それは世界一のビジネスマン兼富豪になっているイーロン・マスク氏の言葉だ。
「自分は常に、ある程度間違っていると思うこと。目標は、少しずつ正しくなることだ」
そして、人が犯す最大の過ちは「希望的観測」だと言う。
そうであってほしい、と願うあまり、都合の悪い真実を見なくなること。
世界一の結果を出した経営者が、今なおその罠と戦っていると言う。
彼のロケットの会社は、最初の打ち上げに失敗した。
2回目も失敗した。 3回目も失敗した。
4回目が失敗すれば、会社は終わりだった。
数十億の資金が潰えることを意味していた。
でも、彼は「次は成功するはずだ」とは言わなかった。
失敗の原因を一つずつ数えて、直し続けた。
その4回目が、成功した。
才能の話じゃない。
運の話でもない。
「自分は間違っているかもしれない」と思い続けたから、間違いを直せた。
命をかけながらも、自分を信じ、自分を修正した、そういった話だ。


■ うまくいくほど、本当のことを言われなくなる
創業したばかりの頃は、誰でも現実に敏感だ。
売れなければ生活できないから、見るしかない。
でも、事業が少し安定すると、変化が起きる。
社員は、社長に気を遣う。
取引先は、関係を壊したくない。
家族は、応援したい。
友人は、傷つけたくない。
本人のためを思うからこそ、悪いことを言わない。
こうして、立場が上がるほど、本当のことを言ってくれる人が減っていく。
経営者が孤独になるとは、相談相手がいないという意味だけじゃない。
自分の判断を否定してくれる人が、いなくなるという意味でもある。
だから、待っていてはいけない。
厳しい意見は、こちらから取りに行くしかない。
そのときに、
「何か意見はある?」では、弱い。
「この計画が失敗するとしたら、原因は何だと思う?」
「自分が見えていないことは、何かある?」
「本当は、反対している部分はない?」
「気を遣わず、一番厳しい意見を聞かせてほしい」
ここまで聞いて、ようやく本音が少し出てくる。
そして、もっと大事なのは、聞いた後の態度だ。
反論する。
言い訳する。
不機嫌になる。
これを一度でもやると、相手は二度と本音を言わなくなる。
厳しい意見を求めるなら、受け止める責任もセットだ。

■ 間違いを認められる人は、弱いんじゃない
自分の間違いを認めることを、弱さだと思う人がいる。
でも、実際は逆だ。
自分の判断と、自分自身の価値を切り離せない人ほど、間違いを認められない。
判断の間違いを認めることが、自分の全部を否定されることに感じるからだ。
一方、本当の意味で自信がある人は、判断が間違っていても、自分の価値までは崩れない。
だから、言える。
「自分の判断は、間違っていた」
「相手の意見の方が、正しかった」
「このやり方は、変える」
経営者に必要な強さは、正しさを証明する強さじゃない。
自分の誤りを受け入れて、修正できる強さだ。
昨日の自分に、固執しなくていい。
正しい人であり続ける必要も、ない。
昨日より、少しだけ正しくなればいい。
■ 経営は、正解を当てるゲームじゃない
経営に、最初から分かる正解は、ほとんどない。
新商品が売れるか。
新しい店が成功するか。
誰を採用するべきか。
どの事業にお金を使うべきか。
やってみなければ、分からないことばかりだ。
だから、経営者に必要なのは、絶対に間違えない力じゃない。
間違いに、早く気づく力だ。
小さく試す。
数字を見る。
お客様に聞く。
厳しい意見を受け取る。
間違っていれば、すぐ変える。
経営とは、正解を一度で当てるゲームじゃない。
間違いを小さくしながら、少しずつ正しい方向へ進むゲームだ。
これは、きれいごとじゃない。
自分も、間違える。
人を見る目も、事業の見立ても、完全じゃない。
今信じていることの中にも、間違いは必ず含まれていると思っている。
だから、問い続けるしかない。
これは事実なのか。
それとも、そうであってほしいという願望なのか。
一番危険なのは、間違っていることじゃない。
「自分は正しい」と信じ込み、修正できなくなることだ。
ちなみに、ソフトバンクの孫正義も
徹底にかけてはぴか一だったと。
とあるYouTubeでも「逃げ足が速く」そこの判断が超一流と。

■ 意識できることは?
今日の話しを聞いたうえでできることは?
1つ目。
今考えている計画や考え、仕事、プライベートについて、一度だけ自分に聞いてみる。
「これは事実か。それとも、そうであってほしい願望か」 紙に書き出すと、なお良い。
2つ目。
身近な人に、こう聞いてみる。
「こんな将来をイメージしているけどうまくいかない可能性、原因は何だと思う?」
「どう思う?」より、ずっと本音が出る。
3つ目。
厳しい意見をもらったら、反論する前に「ありがとう」と言う。
その一言が、次も本音を言ってもらえるかどうかを決める。
必ずしも、いきなり自分を信じ切る必要はない。
自分を疑いながら、前に進み続ければいい。
正しい人になる必要はない。
昨日より少しだけ、正しくなればいい。
■ 追伸
「人が犯す最大の過ちは、希望的観測だ」と書いた。
書きながら、ふと自分のことを振り返った。
「マッチングアプリでいい出会いを」と、もう何年も思っている。
プロフィール写真や内容も厳しい意見も、聞きに行っていない。
最大の過ちの見本が、ここにあった。
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どちらも、ちゃんと届いています。
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