そこにいるだれかと我らの未来のために【17】

【17】

「ジェムはそのままそこで回復に努めて。きみ、あり得ないくらいひどい顔色してる。セーゲルストレームきょうだい、一緒に来てくれ」デクランは階段をのぼりながらてきぱきと指示をした。「イザベル、入るよ」
 入った途端、デクランは息をのんだ。ドアのところで見守っていたほかの者たちも似たような反応をした。
 イザベルは窓際の一人掛け用ソファに座っていた。両腕をだらりと垂らし、片方の足首は内側に曲がっていた。首がわずかに傾き、口の端からよだれがひとすじ垂れている。目は半分開いたまま、まばたきをしない。
 デクランは近寄って行って、まず呼吸をしていることを確認した。生きている。だがいま身体に刺激を与えるのはいい考えではないだろう。触れないように気をつけながら、片膝をついてうつむき気味の顔へできるだけ近づいて、瞳を覗き込んだ。「いないゴーン
 彼がつくった逃げ道から、彼女たちは出て行ったのだ。この子はもうイザベルじゃない。
死んじゃったゴーンの?」
 アメリアの質問には答えず、デクランはドアの外に待機しているふたりに向かって入ってくるようにおおきく手を振った。「Kとラビットフット、この部屋についてて」
「わたしたちが?」Kが思わずアメリアを見る。「あなたがリョウヘイのところへ行くなら、わたしたちどちらかが一緒にいたほうがいいんじゃない? ジェムが来られないなら」
 幽霊相手に戦うことはできないが、衝撃からデクランを護ることならできる。
「フィジカルな攻撃はしてこない相手だからだいじょうぶ。クラウス」
「ああ」
「もう一度、今度はしっかり見てほしい。ここへ来たときに、すこし見ただけだろう?」
 前情報があったとはいえ、一目で似すぎていることを見抜いた眼力だ。彼の目はかなり頼りになる。
 クラウスは綿の偏った人形のように座っている身体と向き合った。屈みこんで、先ほどデクランがしたのと同じように瞳をじっと覗き込んだ。それからソファの後ろに回って、呼吸によってかすかに上下する肩のあたり、横顔、指先までをしっかりと観察した。「ああ、そういうことか」最後にすこし距離をあけて再び身体全体を見てから振り返り、デクランに向かってうなづいた。
「やっぱり」彼は悔しそうに顔を伏せた。
「家族に確認するか?」
「いや、いい。もうわかったから」
「彼女は生きてるの?」トレヴァーが恐る恐る訊いた。「死んで、動いてたの? ああ、すっかりこんがらがってる。ゾンビって存在したっけ」
「存在してる。映画と違って人を食べないし、感染力もないけど」Kが答えた。「ウェアウルフ種とヴァンパイアは絶滅したって聞いたことがある。残念ながら人魚も。この世に最初から不在なのはスーパーヒーローだけ」
「なあリトルラビット、気づかなかったのか?」
「なにに?」
「彼女じゃなくて“彼”だ。こっちがリョウヘイだ。そうだろ?」
「そうだ」デクランは両手で顔をこすりながらうなづいた。「イザベルは彼の中にはもういない。だから、万が一リョウヘイが目覚めたときのために、抑え込める体力のあるきみたちがついててほしい」
 それをきいた彼らは、それ以上質問を差し挟むことなくうなづいた。
「ねえ、イザベルは……」
「事故で死んだのが彼女のほうだったってことだ。ああ、ほら来いアメリア」クラウスはアメリアを包み込んだ。しばらくそうしていて、そっと身体を離した。彼は妹の乱れた髪を撫でて整えた。アメリアは兄の肩に触れ、愛情を伝えた。
 カウンセリングルームでの最初のセッションのとき、デクランがこの身体の中で出会った幼いイザベル、あれがほんものだ。
『あたしを、ぜんぶ、たすけて』
 と言ったのは、完全に依存を断ち切って回復させてほしいという意味ではなく、ほんとうにそのままの意味だった。まだ助けるべき埋もれたイザベルたちがいると教えてくれていただけではなかった。リョウヘイから虐待された瞬間の、時間の止まったまま同じことを繰り返されて傷つけ続けられているイザベルたち。そして、いたぶられすぎて恨みを募らせ、やがてあれほど忌み嫌ったリョウヘイそのものになってしまった霊体のイザベルも含めての『ぜんぶ』だった。
 共依存関係を解消したいときは、どちらもすべて並べた状態からそれぞれの個性を探す。支配と被支配、悦楽と恐れ、どちらがよりどちらを求めているか、など。
 イザベルとリョウヘイの関係性は分かりやすくみえた。
 イザベルの世界はリョウヘイの支配のなかで成り立っていて、そこに慣れ切った彼女が、現状を壊してひとりきりで未知の世界へ出ていくのを恐れているのが癒着の原因だとデクランは思っていたが、彼女はもっとずっと複雑だった。そして賢かった。自らの死を境に、弟に復讐をすることにしたのだ。
 事故で死んでしまった彼女の思念は、自らリョウヘイの中に入り込んだ。彼に自分の苦しみを理解させ、罪悪感によって内側から破壊するために。罪悪感など感じない冷血な人間だったとしても、自分の身体が自由にできないという状態がどういうものなのかを知らしめられれば、まずはよしとして。
「こんな……こんなにひどいの?」
 初回のカウンセリングのとき、イザベルがそう言っていたことを思い出す。あれはリョウヘイの言葉だ。自分に染みついた価値観がデクランによって揺るがされたため、瞬間的に出てくることができたのだろう。それまではイザベルにのみ過ちを責められるだけだったが、ここへきての第三者からの見解には、さすがにショックを受けたのだ。
 そのあとは、意外と早くデクランが癒しを与えてしまったため、彼の作った抜け道から彼女はすこしずつ怒りや憤りを手放していってしまった。その結果が、ここに中途半端に放り棄てられたリョウヘイの抜け殻だ。彼の魂はこの身体の隅っこに追いやられ、まだ自分をコントロールする位置についていない。彼女の与えた罰がどれほどダメージをもたらしたのかはまだわからないが、いまの状態からして、ある程度心を壊すことには成功したみたいだった。
 最初にこの身体の内部を覗いたとき、何人かの人間が複雑に絡み合っているみたいだと感じたが、ほんとうにそうだったのだ。もっと早く気づくべきだった。デクランは悔やんだ。いや、あるいはいっそ、イザベルの復讐のために放っておいてやるべきだったのか。いずれにせよ、状態をもっと深く読み解くべきだった。
 イザベルはリョウヘイの身体を棄て、残りの憎悪の塊は、いま向こうの部屋にいる。
 弟のしてきたことを死んだあと同じように彼に還元し続けてきた、最も重い思念だ。それに傷ついてもいる。彼女は魂をかけて弟に復讐をしたかったのだから。
「だれか教えてくれ」ジェイミーが階下からできうる限り声を張った。まだ弱々しかったが、室内は静まり返っていたため、メンバーすべての耳にちゃんと届いた。「おれが散々ぶちのめしたのは、イザベルのほうだったのか」
「すまない、ジェイミー」デクランが手すりに手をかけて彼を見おろした。「ぼくが癒さないといけないのは、霊体のほうだった。リョウヘイとして説得するんじゃなくて」
「おれのことはいいんだ。相手がだれであれ、あの世へ送る方法はあれしかできないんだし」ジェイミーは、仕方ないとでもいうように手を振り、呟いた。「おれでも祓えないほど、彼女の恨みは強かったのか」彼の声は疲れによってかすれすぎていて、いまや雑踏のざわめきと同じくらいの周波数だった。
「半分はリョウヘイの身体へと分散してたことも、影響してたんじゃないかな。霊体本人のほうと、これから話してみる」
「あとすこしして、まだ目を開けていられたら、そっちに行く」ジェイミーが眠たげに言った。「まだなにか、おれにできることがあるだろ」
「わかった。待ってるよ」無理だろうな、と思いつつデクランは答えた。実際、自分もかなり消耗していて、ついあくびが出た。
 デクランは奥の部屋のドアの前に立ち、アメリアとクラウスを呼んだ。
「きみたちは部屋の前あたりに立って、なにか変化があったら教えてくれ」
 兄と妹はそれぞれ間隔を保って待機した。クラウスがリョウヘイのいる側、アメリアはイザベルの側に。それでいいとうなづきかけてから、デクランはドアを開けた。
 最初に感じたのは強烈な冷気だった。それはほんの一瞬彼の身体を撫で、そのあと灼熱の怒りに変化した。いずれも嵐のあとの池の底に溜まった汚泥にも似た、混沌とした重い遣りきれなさを引きずってのたくっていた。
 部屋の真ん中にはイザベルの姿をした霊体が佇んでいた。ジェイミーが施した拘束はすっかり解けているが、きつく歯を食いしばっていて表情は険しい。瞳は青白く炎のように揺らめき、両足は床からすこし浮き、つま先が伸びている。身体の横に垂らされた両腕のこぶしは強く握られていた。
「イザベル」デクランは眉を下げた。「気づいてあげられなくて、ほんとうに悪かった」
「いいの」イザベルは、口を動かさずにしゃべった。「あたしの恨みはぜんぶ彼へのもの。自分でもどうしたらいいかわからなかったの」
「苦しいだろ?」
「すごくね。でもどうしようもない。どうしようも……できない。恨みと悲しみと憎しみと……そんなのがたくさんあって、それがぜんぜん取れないの」彼女は肩を竦めようとしたが、身体が硬直して動かないことに気づいた。
 まるで凍りついたみたいだ。それか、大気に溶け込んで身体がちゃんとあるかどうかがわからないのか。動かすべき肩が自分では見つけられないのだった。
「あたし、まだここにいる?」
「いるよ。ちゃんとぼくの前に」
「身体が……感じられない。いやな感じだけが、塊みたいに残ってるけど。ちょっと、怖いかもしれない」
「ぼくが見える?」
「見えるような、見えないような。声は聞こえるけど、姿は、かすかに感じられる程度」
「ジェムを起こして」デクランは廊下で心配そうに腕組みをしていたアメリアにささやいた。アメリアはそれをクラウスに伝え、彼が階下へと走って行った。
 クラウスに半ば引きずられるようにして八階に上がってきた、ものすごく眠そうなジェイミーは、イザベルを見ると目をおおきくした。「よお」と言う。ふらつきながらも自分の足で立ち、クラウスにうなづきかけて、持ち場へ戻ってだいじょうぶだと告げた。
「あ、ジェムだね」イザベルの声は嬉しそうだった。
「彼女を統合してくれないかな。魂が損傷しすぎていて、転生に影響が出るかもしれないから」
 デクランがジェイミーの耳元でささやき、彼はうなづいた。「もしかして、おれのせい?」
 デクランは首を振る。「彼女自身のやったことだ。リョウヘイのせいでこうなった」
「すべての元凶か」ジェイミーは呟き、イザベルのすかすかになった魂に近づいた。
「ジェム、あたしのこと怖い?」
「いいや。目が光っててすげえ格好いい」
 嘘ではなく、リョウヘイの身体から少しずつ自分を取り戻した彼女はきれいだった。色彩が、光がちゃんとあった。ただそうでない部分もまだたくさんあり、そこはやはり暗黒の昏さを放っていたが、それでも全体的にみるとやはり美しかった。山の天辺から夜景を見おろしているみたいに。
「ふふ。うれしい」
「怖い想いさせてごめんな。いまからちょっと触るから、そうしたらちょっと楽になると思う。やってみていいか?」
「あ……うん」
「どうした?」
「いまのことば、あたしの家族に言ってもらいたかったなって」
「そうか」
「ごめんって、言ってほしかった。リョウヘイに」瞳に宿る炎以外は動きのなかった彼女の唇の端が、わずかに引き攣った。
「だよな」
「うん……」
「じゃあ、やるからな」
「わかった」
 ジェイミーは自分の両手を温めるみたいに息を吹きかけて念入りにこすり合わせた。そしてゆっくりとイザベルに向かって腕を伸ばし、手のひらで両肩を包み込んだ。
 色彩が広がっていく。腕に、胸に、髪に。ジェイミーのあたたかさがイザベルの魂の隙間を接着して彼女が自らを取り戻していく。炎が消え、長い前髪の向こうに濃いブラウンの瞳が現れる。
 彼のしたことは、あちこちに引っかかっていた恨みや痛みの残骸を払い、苦しみに耐えきれず引き裂かれて散らばってしまった魂を可能な限り戻して、隙間を埋めて磨き上げる行為だ。人生でかかわれることはめったにないが、人が色彩を取り戻す、ジェイミーのいちばん好きな瞬間だった。
 当然ことながら相変わらず彼女は死んでいる。だけど、いまはその魂が、これまでになく穏やかな彼女の姿を映し出していた。
「だいじょうぶそうか?」触れていた手を離して、ジェイミーがまばたきを繰り返す彼女の顔を覗き込む。
「だいじょうぶ、みたい。空気とか熱とかはもちろん感じないけど、いまは、うん、輪郭がある感じしてる」
「気分はどうだ」
 イザベルはあたりを見回し、耳を澄ませるような幼い虚ろさをその横顔に乗せ、呟いた。「ひとりだ、あたし。やっとだよ。やっと静かになった」
 ジェイミーはそれに対して肯定的なあたたかさを込めてうなづいた。振り返ると、デクランとアメリアが笑顔で親指を立てていた。
「おれがすごくきつくハグをしたら、きみはあっちへ送られる」ジェイミーの指は空の、はっきりしないそのあたりであろう周辺を適当に示した。「意味わかるか?」
「わかる」イザベルは真剣な表情でうなづいた。「だいじょうぶ。わかってる」
 ジェイミーはもう一度デクランを振り返った。一旦また彼に任せて、必要なときがきたらまた手伝うつもりだと伝えたくて。デクランはうなづいた。廊下で、アメリアが唇をきつく結んでこちらを見ていた。ジェイミーはそちらに向かい、黙って隣に並んだ。そっと触れた彼女の二の腕があたたかかった。
「やあ、イザベル。初めましてってわけでもないけど、まあ、初めましてだよね。ぜんぶ揃ったきみとは」
「デクラン……そうだね、初めまして。それと、いろいろとごめんなさい。あなたたちを騙したかったわけじゃないんだけど」
「どうして謝ったりするんだ。きみはきみにできることを一生懸命やっただけだろう?」
「うまくできたとは、どうしても思えないから」
「ぼくだって完璧にできたことなんてないよ。今回がいい例だ。ぼくたちふたりとも、健闘したんだからそれでじゅうぶんだよ」
 デクランはすこしだけ、リョウヘイがイザベルを殺したのかどうかが気になったが、こちらから訊くべきことではないと判断した。その話題を彼女自身が口にするならともかく、もうどうでもいいというなら、それでよかった。
「ありがとう。えっと、じゃあ、あたしはもう行かなきゃだね」イザベルはジェイミーを見た。
「待って、最後に訊きたいんだけど、なぜきみはぼくのところへ来たんだい? 弟と引きはがされてしまったら、目的を果たせなかっただろう? 少なくとも、一度出て行ってからは、戻ってこなくてもよかったはずだ」
 イザベルはすこし考えて、答えた。「生きてるあいだ、だれかに相談すればよかったってずっと後悔してて、自分にその機会を与えたかったから、あなたのところへ行った。あのビルを出たあとは、どこへ行こうかすこし迷ってた。最終的にはまた家に戻って、いましていることを続けるしかないって思ったんだけど、能力の暴走が起こってるのを見たの。あたしのしたことが、ほかの人まで巻き込んでるなんて思わなかった。周りへの影響を見て怖くなったんだ。リョウヘイとしてのあたしは、リスクを冒してまで彼の身体を戻らせたくなかったんだよ。でも、ジェムと出会った」
「彼は優しいだろ」デクランはジェイミーのほうへ頭を振った。
「すごくね」イザベルはちらりとジェイミーを見て、恥ずかしそうに肩を竦めた。「生きてるときに出会いたかった。あたしのことを助けてくれるようとしてくれる人に。あなたもだよ、デクラン。ていうかここのみんながそう。あたし、自分で助けを求めればよかったんだね」廊下にいるアメリアに手を振る。自分の身体ではなかったが、一緒におやつやピザを食べたことはちゃんと覚えていた。
「そうだね。だけど、監視の目があったから、それは難しかったよね」
「そうなの。ああもう、ほんとにデクランは、あたしのことわかってくれてる」
「生きてるかどうかは関係なくて、イザベル、ぼくはきみと出会えてよかったと思ってるよ」
 そのとき、廊下がにわかにあわただしくなった。アメリアがクラウスからの伝言を素早くデクランに伝えた。「リョウヘイが起きそうだって」
「大変。あたし、行かないと」
 イザベルはきっともうひとりでも旅立てるはずだった。だけど、ジェイミーが彼女を送ることにした。ぶちのめすやりかたの一部ではあったが、“heard Japan”のメンバー全員からのハグを、最後に贈りたかった。
「いいか? イザベル」
「うん」彼女は両腕をぎこちなく開いた。ジェイミーを迎え入れるために。
 彼は彼女を抱きしめた。その力はどんどん強くなり、彼自身の背中が震えるくらいになった。
「じゃあな。次はきっとよくなる」その言葉は、力を込めながらなので苦し気に響いた。
「うん。ありがとう」イザベルは顔を上に向け、吐息の代わりに唇から光の霧を少しだけ吐き出した。
 イザベルの身体はジェイミーの腕の中で弾け、あの世との境界に魂をぶち込んだ、、、、、証として、あたりにきらきらと光が舞い散った。引っ張り上げられるがままに自ら入って行くという正規の方法ではなく力技で送り込むので、空間に負荷がかかるのは仕方のないことだった。
「ああ、ちくしょう」
 そして、能力者本人にも多大な負荷がかかる。
 不明瞭に呟いたジェイミーの身体が回転しながら倒れかけたのを、デクランが受け止めた。ちいさく叫んだアメリアが飛んできて彼の頭を抱えて膝に乗せた。
「行ってデクラン。ジェムにはわたしがついてる」目を閉じてすっかり力の抜けてしまっているジェイミーの前髪を撫でながら、アメリアがあちらの部屋へと頭を振ってみせた。「だいじょうぶ、ジェイミー。わたしがここに、一緒にいるよ」
「頼んだよスウィーティー」
 デクランは足早にドアふたつ隔てた部屋へ向かった。彼の心の隔離された部分はもうほとんど表に出てきている。姿を見たのではなく、感じられるのだ。彼は確かにおおくの人々にとって愉快ではない思想を色濃くもっている。
 生前に発揮することができなかったイザベルの能力は、身体から解放されてから一気に爆発した。正確にどういう能力の持ち主だったのかはわからないままだったが、すごい影響力をもっていた。いまはまだ暴走の余波が残っているが、みんなもうすぐにでも普段の力へと戻るだろう。
 アメリアの件もこれで片がつきそうだ。だからといって、リョウヘイを放っておくわけにもいかない。デクラン自身も彼の本意を知りたかった。それに、抜け殻状態のまま放りだすことなどできない。そんなことをしてしまったら  皆にそうさせてしまったら  きっと罪悪感を抱えてこの先の一生を生きていくことになる。
 なにより、どれだけ根性が腐っていようとも、イザベルの弟なわけだし。
 ちゃんとけりをつけないと。
 “heard Japan”を立て直すまで、もうすこし頑張らなくてはならなそうだった。



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