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お城の「色」、気にしたことありますか?白い城と黒い城に見る、日本の美意識

先日、旅行で姫路城と岡山城を訪れました。

白く優美な姫路城は、私にとって「日本で一番訪れてみたいお城」でした。今年、ようやく念願がかない、実際にその姿を目にすることができました。青空に映える天守閣は想像以上に美しく、城内はとても広大で、千姫ゆかりの西の丸から大天守まで見てまわるのに、2時間ほどかかりました。

そして、岡山城。こちらは後楽園に行くついでに立ち寄るくらいの気持ちだったのですが、予想をはるかに超えて見ごたえがありました。
黒い外壁と金の装飾のコントラストが印象的で、姫路城とはまた違う美しさがありました。

ところで、なぜ日本の城には、「白い城」と「黒い城」があるのでしょうか。

単なる城主の好みなのか、それとも時代の違いなのか。
今回は、城の「色」を手がかりに、日本人が積み重ねてきた美意識と工夫を見ていきたいと思います。

白い城と黒い城、その違いはどこにある?

城の色の違いは、まず外壁の工法の違いから生まれます。

白い城の代表である姫路城は、白漆喰で外壁を塗り込めた姿が印象的です。
漆喰は、石灰を主な材料とする塗り壁材で、城の外観を白く美しく見せるだけでなく、防火の役割も持っていました。

一方、黒い城の代表である松本城は、壁の下部に黒漆塗の下見板が張られています。下見板とは、外壁を雨から守るために張られる板のことです。
松本城の場合、上部は白漆喰、下部は黒い板張りになっているため、遠くから見ると黒の印象が強く残ります。

つまり、白と黒の違いは、単なる色の好みではなく、壁を長持ちさせるための実用的な工夫でもあったのです。

同じ「城」でも、建物をどう守り、どう見せるかという選択があり、選ばれた工法によって、まったく違う表情が生まれる。

そしてその選択には、見た目の好みだけでなく、その土地の気候や、当時手に入りやすかった材料、そして建築に携わった職人の技術といった、地に足のついた事情が関わっています。

城の色は、見た目のデザインであると同時に、実用性の結果でもあったのです。



姫路城|白い城は、なぜ人を惹きつけるのか

姫路城

白い城の代表といえば、やはり姫路城でしょう。
世界文化遺産にも登録されているこの城は、「白鷺城」という愛称でも知られています。

姫路城の魅力は、単に「白くてきれい」というだけではありません。そこには、見る者を圧倒するような存在感があります。

姫路城の外装は、白漆喰総塗籠造(しろしっくい そうぬりごめづくり)です。
柱や壁を外に見せるのではなく、漆喰で包み込むように仕上げられています。さらに、大天守と三つの小天守が渡櫓(わたりやぐら)でつながる連立式天守の構成により、白い建物がいくつも重なり合い、非常に華やかな姿をつくっています。

この白さは、清らかで優美な印象を与えます。けれど同時に、強い権威も感じさせます。

遠くから見てもはっきりと浮かび上がる白い天守。
幾重にも重なる屋根と、整然と塗り込められた壁。

それらは、ただ美しいだけではなく、「この地を治める力」を視覚的に示しているようにも見えます。

また、白漆喰には防火性もあります
城は木造建築ですから、火は大きな脅威でした。美しさと防火性を兼ね備えた白漆喰は、城を守るための知恵でもあったのです。

姫路城の白は、優美さ、清らかさ、そして権威を同時にまとっています。
だからこそ、姫路城はただの「白い城」ではなく、日本の城の美意識を象徴する存在として、多くの人を惹きつけているのかもしれません。



松本城|黒い外壁に、武骨な美しさを宿す城

松本城(写真提供:松本城管理課)

一方、黒い城の代表格とされるのが松本城です。
国宝にも指定されているこの城は、現存する日本最古の五重六階の天守として知られています。

松本城は、白い姫路城とはまったく違う印象を与えます。
黒い外観は重厚で、どこか緊張感があります。優美というより、引き締まった美しさ。華やかというより、静かな強さ。

この黒さの正体は、壁の下部に張られた黒漆塗の下見板(したみいた)です。

松本城の壁は、上部が白漆喰下部が黒漆塗の下見板になっています。
下見板には、屋根だけでは防ぎきれない雨水をはじき、壁を守る役割がありました。
つまり、松本城の黒は、単なる装飾ではなく、建物を長く守るための実用的な工夫でもあったのです。

私たちは黒い城を見ると、「かっこいい」「渋い」「戦国っぽい」と感じます。けれど、その黒の背景には、雨風から壁を守るための先人の知恵が込められていました。

美しさと実用性が重なっている。それが、松本城の黒の魅力です。

白く塗り込められた姫路城が、完成された権威の美しさを感じさせるのに対し、松本城は、もっと武骨で、実戦的で、緊張感のある美しさを持っています。

黒い板壁には、まだ戦の緊張感が色濃く残っていた時代の空気が刻まれているようにも感じられます。

松本城の黒には、雨風に耐え、時代に耐え、今もそこに立ち続けてきた城の力強さが表れているように思えます。



岡山城|豊臣の時代を映す、漆黒と金の城

岡山城

「白か、黒か」という対比だけで終わらせないために、ぜひ紹介したいのが岡山城です。

岡山城は、その黒い外観から「烏城(うじょう)」と呼ばれています。カラスのように黒い城、という意味です。

ただし、岡山城の黒は、松本城の黒とは少し印象が違います。
松本城の黒実用性や武骨さを感じさせるとすれば、岡山城の黒には、どこか華やかな権力の演出が重なっています。

岡山城のはじまりには、宇喜多氏の存在がありました。
宇喜多直家が旭川流域の石山の城を本拠地とし、その子・秀家が岡山の丘に本丸を定め、岡山城を築きました。
築城には豊臣秀吉の指導があったとも伝わります。

その天守は、豊臣秀吉の大坂城がそうであったといわれるように、外壁が黒塗りの下見板で覆われていたことから「烏城」と呼ばれました
さらに、宇喜多秀家時代の金箔瓦も出土しており、築城当時には城内の主要な建物に金箔瓦が用いられていたと考えられています。

黒い外壁に、金の瓦。
そこには、豊臣政権下の有力大名としての威厳と、見る者に権力を印象づける華やかさが感じられます。

こうしてみると、同じ「黒い城」であっても、城主や時代背景によって、その意味合いは大きく変わってくるのです。

松本城の黒は、雨風から建物を守る実用性と、武骨な美しさ。
岡山城の黒は、金とともに権力を示す、華やかな黒。


城の色は、工法だけでなく、城主の立場や時代の美意識によっても意味が変わってくるのです。



お城は「色」で見ると、もっと面白くなる

これまでお城を見るとき、天守の大きさや、関わった武将の名前、戦いの歴史に目が向きがちでした。
もちろん、それもお城の大切な魅力です。

けれど、白い壁や黒い板、漆喰の質感、瓦の色に目を向けると、城の色は単なる見た目ではなく、建物を守る知恵、火や雨に備える技術、城主の美意識、時代の空気を映すものだとわかります。

次にお城を訪れるときは、「なぜこの城はこの色なのだろう?」と考えながら眺めてみてください。
何気なく見過ごしていた「色」の中にも、日本の城の奥深さを知る、大切な手がかりが隠れているかもしれません。



さいごに

久しぶりにお城を訪れましたが、どのお城も展示が工夫されていて、とても見ごたえがありました。

なかでも特に面白かったのが、岡山城です。
歴史学者の磯田道史さんが監修されていることもあり、展示には大人でも思わず足を止めたくなるような仕掛けがたくさんありました。
難しい歴史を堅苦しく説明するのではなく、映像や演出を通して、歴代城主の時代背景や岡山城の成り立ちを楽しく知ることができます。

この夏、岡山を訪れる機会があれば、観光コースは「岡山城+後楽園」がおすすめです😊



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