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【連載小説】第零話「プロローグ 」ジャンヌ・ダルクの残心

【あらすじ】
「死にたくなければ私に倒されろ!」
――15世紀フランス、オルレアンの戦場に、その声は響いた。
剣道部部長の凛は、親友のさくらを団体戦のメンバーから外す苦渋の決断を下し、仲違いしたままタイムスリップしてしまう。現代に帰るため、伝説の聖女ジャンヌ・ダルクとして戦場に立つ。武器は一本の剣と、現代の女子高生としての知識。だが凛にとってそれは、さくらへの謝罪と、現代への帰還を懸けた必死の「サバイバル」だった。
果たして凛は、現代へ帰ることができるのか?そして、さくらに伝えられなかった言葉を——。
女子高生剣士・本庄凛が中世フランスの歴史を動かす。タイムスリップ歴史ファンタジー、ここに開幕。

プロローグ

1431年5月30日。フランス・ルーアン。

石造りの建物が周囲を取り囲む広場の真ん中に、その少女はいた。

薪が高く積み上げられている。その上に、少女は縛り付けられていた。

炎が、膝まで来ていた。
煙が視界を遮る。群衆の声が、遠い。
少女は目を閉じた。
背筋が、すっと伸びた。

見ていた群衆の誰もが、こう思っただろう。
なぜ、泣かないのか。なぜ、叫ばないのか。
なぜ、あの顔で——まるで嵐の前に佇む岩のように——ただ静かに立っていられるのか。

「……を信じます」

誰にも届かない、小さな呟きだった。
この広場にいる誰も、その言葉の意味を知らなかった。

でも少女には、それで十分だった。
広場のどこかで、老人が隣の男に囁いた。

「……今、あの娘、何か言わなかったか」

「聞こえたか? 俺も聞いた。……『サント(聖人)』と、言わなかったか」

炎の中で、少女は立っていた。


第零話 了

#創作大賞2026
#ファンタジー小説部門


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