わたしがキャベツだった頃《下》
ああ、水が気持ち良い
それだけで、優しい農家さんだと分かる
しかし、キャベツは出荷される
どうせ出荷されるなら大きく
そして美味しくなりたい
なんとなく、そう思った
農家さんも
わたしがすくすく育つにつれ喜んでいる
声までかけてくれる
それにしても毎日陽気で楽しそうだ
わたしまで楽しくなる
しばらくして
大きくなってきた頃
わたしは自分の思い違いに気づいた
この人は農家さんではない
今になって知った、小さな小さな
庭の畑だったのだ
収穫したわたしをランランと家に運ぶ
なんだか、どこかで…
分からないけど悪い気はしない
どこか、温かく
ここに来たかったとさえ思っている
木製のまな板が
心を落ち着かせる
嬉しそうに千切りにする、丁寧な包丁の入れ方
ドレッシングをかけられ
まわりには、キラキラとした料理が見える
わたしも、その中にいるのか
心地いい
嬉しそうな、そして感謝のこもった音
頂きますの声
その声がわたしの中に響いた時
嬉しさと記憶が、同時に溢れた
そうか、そう、だった
わたしは、キャベツとして生まれ
喜んでもらいたかったのだ
喜んでもらいたいからキャベツになった
それがわたしの喜び
そしてまた
この人のところへ来れたのだ、来たかったのだ
美味しい美味しいと言いながら感謝してくれる
この人のところに
今度は、美味しいキャベツになって
充分だ
キャベツとして
この上なく幸せだ
ずっと、遠い過去
大事に大事に抱えられていくキャベツを
羨ましそうに見ているわたし
そんなわたしが、心から
喜んだ気がした
わたしも、心から喜んであげたい
今度は、そんな存在になりたい
人間だ、わたしは人間に生まれたい
ありがとう、出会ってくれて
ありがとう、気づかせてくれて
ありがとう、喜んでくれて
わたしがキャベツだった頃《下》終わり
画像はみんなのフォトギャラリーから
使わせて頂いております↩
みずみずしくて温かい、そんな風に見えました
イラストって、不思議ですね
ピコホン様、ありがとうございます
↪あとがき
最後まで読んで頂きありがとうございます
このお話は上下巻で終わりますが
もしも人間になったら…
またお読み頂けると嬉しいです
上はこちらです
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