白銀の騎士(17)第6話 act.2
前回の話
6.白銀の騎士 act.2
コウは開け放たれた特殊実験ドームの搬入扉に駆け込んだ。
丸い天井の向こう側3分の1ほどに穴が開き、薄赤くゆらめく不吉な夜空が見える。
その下あたりの床を中心に、崩れ落ちた天井の大きな欠片が重なり合って散らばっていた。
入り口のすぐ右側にタラップがある。見上げると、それは白銀の騎士に横付けされているのがわかった。
「なんて大きいんだ…」
大きさはあの『黒騎士』と同じくらいらしいが、近くで見ると凄い迫力だ。
開いたままの後部ハッチ、そこから飛び出したままの操縦シート。
付近に人はいない。事態の異常さに気づき、実験を放棄して避難した直後らしい。
正確には、瓦礫の下にいたかもしれないが、その方はあえて見ないようにした。
今見てしまってもどうすることもできないのだ。
コウは迷わずタラップを駆け上がった。
2階…3階…4階部分の張り出しに、乗降口がある。
そこまでタラップを上がると、後ろの壁に大きな横長の分厚い窓が嵌め込まれているのが見えた。
たぶん、あの中が父の言っていたメイン実験制御室だ。
「母さーん!」
中までは届かないのを承知で、声を掛けてみる。
ちょっと見たところ、中は惨憺たる有様だった。小型の機器が壊れてめちゃくちゃに散乱し、まるで直下型地震に見舞われたようだ。傷ついた人があちこちで蹲っており、血まみれのコンソールパネルに突っ伏したまま動かない人もいる。
ただ、無事に生きている人がいる様子なのでコウは少しほっとした。まだ希望はある。
ふいに、大きな機器の陰から、ゆらり、と新たな人影が姿を見せた。
薄暗くて判りづらいが、母だ、とコウにはすぐにわかった。
母もコウに気づいて驚いたようだったが、突然、形相を変えて両手を振り上げた。
早くここから逃げろ、と言っているようだ。
「母さん、すぐに助けるからね!」
見覚えのあるシートの上に、鈍く光るヘルムモニター。
形はフルフェイス型でだいぶ違うし、かなり重い。たぶん実戦仕様なのだろう。
それを被ってシートに座り、スタートボタンを押す。たぶん、これが乗降スイッチだ。
とたんに、母の叫び声が耳から流れ込んできた。
『コウ、降りなさい! 聞こえる? 聞こえたら、すぐここから逃げて!』
「母さん、聞こえるの? 今すぐ助けるから!」
『やめて! コウはそんな人殺しの道具に乗っちゃいけないの!』
コウは胸の奥からふつふつと怒りがわき上がるのを押さえきれずに叫んだ。
「じゃあ、それを作った母さんたちは何なんだよ!」
シートは滑るように白銀の機体に吸い込まれ、目の前に赤い警告文字が表示された。
『起動コードを入力してください』
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