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PIPとは?外資系名物!クビになる?注意点と対処法【弁護士解説】

外資系企業で働き、突然「PIP」という言葉を突きつけられたとき、多くの労働者は強い不安に襲われる。

これまで数多くの外資系労働者の相談に乗ってきた経験から言えば、この仕組みを正しく知ることが、あなたのキャリアを守る第一歩である。


1章 外資系のPIPとは

PIPとは、パフォーマンス不足と判断した社員に対して、2~3か月程度の期間を設け、目標を設定し、定期的なフィードバックにより業務改善を目指すプログラムである。

これは「Performance Improvement Plan」の頭文字を取ったもので、日本語では「業績改善計画」などと訳される。

読み方はそのまま「ピー・アイ・ピー」又は「ピップ」と呼ぶのが一般的である。

外資系企業では、このプログラムの結果によって、その後の会社での立場が大きく変わることが多いため、非常に重みのある言葉として扱われている。

2章 PIPの目的と実態

PIPという制度は、本来であれば会社が社員に対して「もっと成長してほしい」という願いを込めて、丁寧に改善の指導を行っていくための良い仕組みであるはずだ。

例えば、新しい業務に慣れていない社員に対し、上司が具体的な目標を立てて一緒に歩んでいくようなケースであれば、労働者にとってもプラスになるだろう。

しかし、外資系企業の実態としては、残念ながら本来の目的とは違う使われ方をすることが非常に多い。

具体的には、その社員に自分から退職を促したり、解雇したりするための「口実」として悪用されているケースが目立つのだ。

会社側が「この人は能力が足りない」という言いがかりをつけ、無理にリストラを進めようとする際に、PIPという形式を整えることで「十分な指導を尽くした」という証拠を作ろうとしていることもある。

このように、一見すると親切なサポートに見えても、その裏には厳しいリストラの意図が隠されている可能性があることを知っておかなければならない。

3章 PIPの流れ

PIPが実施される際は、会社側も「法的に正しく進めた」という記録を残そうとするため、一定の手順(プロセス)を踏むことになる。

それぞれの段階でどのようなことが起きるのかを知ることで、心の準備ができるはずだ。

3-1 人事から面談を組まれる

まずは、上司や人事担当者から個別の面談を組まれるところから始まる。

定期的に行われる「パフォーマンスレビュー(成績査定)」の場で、現在の評価が低いことを告げられた流れで、「業績改善が必要だ」としてPIPの開始を言い渡されるケースもある。

3-2 改善目標や計画の策定

次に、具体的にいつまでにどのような目標を達成するべきかを決める。

会社側が労働者自身に目標を設定するよう指示して、期日を設定し、提出を求められることもある。

一方で、会社側が一方的に目標を設定して達成するように求めてくることもある。

いずれにせよ、達成できない過大な目標とすると自分の首を絞めることになるので注意が必要だ。

3-3 PIPの書面にサインを求められる

計画が固まると、その内容に同意したことを示すためのサイン(署名)を求められる。

このとき、単に「計画を知りました」という確認だけでなく、「PIPの内容を理解し、真摯に改善に努める」とおい書き方になっていることが多い。

このような署名をするとPIPの合理性を認めていたとの指摘されることが多く、パフォーマンス不足や目標の妥当性を認めていたことの証拠とされる

3-4 週1回程度のフィードバック面談

PIPの期間中は、1週間に1回程度の頻度で上司と面談を行うことが多い。

ここでは計画の進み具合を確認し、上司から指導やフィードバックを受ける。

この面談の内容は、会社側によってすべて細かく記録されていることが多い。

3-5 最終評価

設定された期間(例えば2ヶ月から3ヶ月程度)が終わると、目標を達成できたかどうかの最終的な判定が下される。

ここで「改善された」と認められれば、通常は、PIPは終了し、業務に戻ることになる。

ただし、会社によっては、PIPを達成したにもかかわらず、退職を迫ってくるようなこともある。

3-6 退職勧奨や解雇

もし最終評価で「目標未達成」とされた場合、会社からは「あなたはこの仕事に向いていない」として、退職を促す「退職勧奨」が行われる。

また、場合によっては「解雇」を言い渡されることもある。これが、労働者にとって最も厳しい局面となる。

4章 PIPを発令された場合の注意点

pipは単なる目標設定ではなく、会社があなたを評価し、場合によっては辞めさせるための準備段階である。

そのため、一つ一つの行動に慎重さが求められる。

4-1 安易に同意書にサインしない

PIPの発令の根拠とされるパフォーマンス不足の内容に誤りがあったり、達成不可能な目標だったりする場合は、安易にサインをしてはいけない。

後から、PIP時点でパフォーマンス不足を認めていたこと、及び、目標未達によりパフォーマンス不足が改善しなかったことの証拠とされるためである。

自分自身でサインをしてしまっているので、パフォーマンスが不足していなかったと反論しにくくなってしまうことがある。

「過去のミス」などが事実と違うなら、認識の相違を確認しておくべきである。

また目標が過大すぎたり、主観的・曖昧だったりする場合には、修正を求めた方が良いだろう。

もし「達成できなかったら解雇を受け入れる」といった過大なペナルティが記載されているなら、その不当さを主張することも重要だ。

4-2 安易に拒否をしない

一方で、PIPそのものを「自分には必要ない」と安易に拒否し続けるのもリスクがある。

「改善の意欲がない」という理由で評価をさらに下げられる可能性があるからである。

4-3 落ち度があれば真摯に改善する

もし自分に足りない部分があると感じるなら、当該部分については、提示された目標に対して真面目に取り組む姿勢を見せることが大切である。

落ち度があればこれを改善していくというのは当然のことであるためである。

4-4 証拠を残す

PIPが始まったら、その過程について、労働者自身も証拠に残しておくべきである。

会社側は会社に有利な証拠しか出してこないため、自分を守るためには自分に有利な証拠は自分で集めておくべきだからである。

例えば、目標が未達になるのであれば、これについて労働者に落ち度がなかったことがわかる経緯などを証拠化しておく。

フォードバック面談なども録音するなりして証拠化しておくことが考えられる。

5章 PIPが行われる業界の例

外資系企業の中でも、特に成果主義が徹底されている業界では、PIPが日常的に行われている。

それぞれの業界で、どのような名目でプログラムが開始されるのか、その傾向を見てみよう。

5-1 外資コンサル

外資系のコンサルティング業界では、常に高い付加価値を出すことが求められる。

例えば、プロジェクトでの貢献度が低いと判断されたり、特定のスキルが不足していると見なされたりした場合に、早い段階でPIPが適用される傾向にある。

ここでは「アップ・オア・アウト(昇進するか、去るか)」という考え方が根底にあることも多い。

5-2 外資製薬

製薬業界(外資メーカー)の営業職、いわゆるMR(エム・アール)などの職種でもPIPはよく見受けられる。

例えば、担当エリアの売上目標が一定期間届かなかった場合に、数字を回復させるための「改善計画」として課されるケースが典型的である。

5-3 外資IT

移り変わりが非常に早い外資IT業界では、エンジニアやセールス担当者に対して厳しいPIPが行われることがよくある。

例えば、新しい技術への適応が遅れていると判断されたり、クォータ(営業割当)を達成できなかったりした際に、短期間での成果を約束させられる形でプログラムがスタートすることが多い。

6章 PIP未達による退職勧奨や解雇は早めに弁護士に相談する

PIPの結果、目標が達成できなかった(未達)と判定されると、会社は「あなたは能力不足であることが証明された」という態度で退職を迫ってくる。

しかし、日本の法律では、一度や二度のPIP未達だけで労働者を簡単に解雇することは認められないのが原則である。

会社側が十分な教育やサポートを行ったか、目標設定がそもそも妥当だったかなど、厳しくチェックされるべきポイントがいくつもあるのだ。

外資系企業の交渉に慣れた弁護士に相談することで、不当な解雇を防いだり、より有利な条件での退職(パッケージ交渉)を引き出したりできることもある。

会社側は人事や法務のプロが組織で対応してくるため、労働者が一人で立ち向かうのは非常に不利である。

早い段階で専門的なアドバイスを受けることが、あなたの将来を守ることにつながるのである。

7章 PIPについてよくある疑問

最後にPIPについてよくある疑問を解消していこう。

7-1 Q1:PIPになったらパッケージ交渉できる?

PIPの段階でもパッケージ交渉はできないわけではないが、おすすめはしない。

この段階ではほとんどパッケージが出されなかったり、増額されなかったりすることが多いためである。

外資系のパッケージについては、以下の記事で解説している。

7-2 Q2:PIP未達だとクビになる?

日本の法律では、一度や二度のPIP未達成だけで即座に解雇(クビ)にできるとは限らない。

解雇が客観的に合理的と言えるか、社会通念上相当いえるかが問題となり、PIPのみをもって有効性が判断されるわけでもないし、PIPの合理性も精査されることになる。

外資系のクビについては、以下の記事で解説している。

7-3 Q3:PIP期間中に転職してもいい?

PIP期間中に転職活動をすることは可能である。

ただし、業務時間中に転職活動をしてはならない。これを解雇の理由として主張されることも珍しくない。

7-4 Q4:PIPのサインを拒否し続けるとどうなる?

PIPのサインを拒否し続けると、一方的にPIPを強行される場合、解雇を言い渡される場合、何も起きず勤務を継続することになる場合などがある。

事案により会社側の対応は異なってくることになるため、労働者も、自身の目的やPIPの内容などを踏まえてサインを求められた際の対応を決めていくべきである。

8章 まとめ

以上のとおり、今回は、外資系のPIPについて説明した。

突然外資系からPIPを言い渡され戸惑うかもしれないが、安易な発言や態様は控え、法的な見通しに基づいて、冷静に対処していくことが成功の秘訣だ。

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