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正社員をクビにできない理由!法律の条件や解雇理由5つ【弁護士解説】

日本の法律において、正社員をクビにすることは会社が考えている以上に難しいことである。

私がこれまで数多くの労働問題を解決してきた経験からも、会社側の言い分が法的に認められないケースは非常に多いと感じている。

今回は、正社員が法律でどのように守られているのか、どのような理由があれば解雇が認められてしまうのかを、専門的な視点から分かりやすく解説していく。

正社員の解雇については以下の動画でも解説している。


1章 正社員をクビにできない理由

正社員という働き方は、あらかじめ働く期間が決まっている契約社員とは異なり、基本的には定年まで働き続けるという終身雇用が前提となっている。

会社が定年を待たずに一方的に契約を打ち切る「解雇」には、非常に高いハードルが設けられているのである。

代わりに会社には配置転換をはじめとして人事上の裁量が広く認められている。

もし解雇の有効性をめぐって裁判などの法的な争いになった場合、「その解雇が正当である」ということを証明しなければならないのは、労働者ではなく会社側である。

例えば、会社が「能力が足りない」と主張しても、それを裏付ける客観的な証拠を会社自身が用意できなければ、その解雇が認められにくいのである。

2章 正社員を解雇できる法律の条件

法律(労働契約法)では、解雇が認められるためには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であると決められている。

これを解雇権濫用法理という。

この2つが揃っていない解雇は、たとえ会社が通知を出したとしても、法的には無効となる。

「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても「それはクビになっても仕方がない」と思えるほど、納得感のある理由のことである。

例えば、会社が「なんとなく気に入らない」とか「性格が合わない」といった主観的な理由で解雇することは認められない。

もう一つの「社会通念上の相当性」とは、その理由に対して「解雇という処分が重すぎないか」というバランスのことである。

例えば、仕事で一度だけ小さなミスをした場合に、いきなりクビにするのはやりすぎであると判断される。

このように、正社員を解雇するためには、会社側がこれら2つの厳しい条件をクリアしていることを証明しなければならないのである。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法 | e-Gov 法令検索

3章 正社員の解雇理由

ここでは、法律のルールに照らし合わせて、解雇の理由になり得る5つのケースを説明する。

3-1 能力不足

能力不足は、解雇理由として主張される最も典型的な理由である。

単に「仕事が少し遅い」とか「営業成績が平均より低い」という程度では、解雇の理由にはなりにくい。

例えば、会社が何度も教育や指導を行い、配置転換(部署異動)などの努力をしても、なお改善の見込みがまったくないほど著しく能力が低い場合に限られる。

能力不足での解雇は以下の動画でも解説している。

3-2 勤務態度

遅刻や欠勤を何度も繰り返し、会社が注意をしても一向に改めないようなケースである。また、上司の正当な指示に従わず反抗的な態度を繰り返したり、業務時間中に関係ない私用を続けていたりする場合も含まれる。

例えば、正当な理由がないのに無断欠勤を長期間続け、周囲の業務に大きな支障を出しているような状況であれば、勤務態度が著しく不良であると判断されることがある。

ただし、これらも一度の失敗ですぐに解雇できるわけではなく、会社側が何度も改善を促したかどうかが重要になる。

3-3 ハラスメント

セクハラやパワハラなど、他の社員の権利を著しく侵害する行為である。

例えば、相手に精神的な苦痛を与え、職場の環境を極めて悪化させた場合、厳しい処分が検討される。

ただし、一度の言動ですぐに解雇が認められるわけではなく、事の重大さが厳しく問われる。

ハラスメントを理由とする解雇は以下の記事でも解説している。

ハラスメントを理由とする解雇は以下の動画でも解説している。

3-4 心身の不調

病気や怪我によって、どうしても仕事ができなくなってしまったケースである。

ただし、すぐに解雇できるとは限らない。

例えば、まずは休職制度がある場合には、これを利用して治療に専念させ、それでも復職が難しく、他の簡単な業務にも就けない場合に初めて検討される。

3-5 業績不調

会社の経営が苦しくなり、どうしても人員を減らさなければならないケースである。

赤字経営であり、小規模な会社であったり、従業員が別のポジションを拒否したりしたため、配置転換も困難なような場合である。

労働者に落ち度がない場合でも、会社の業績などによりどうしても解雇させざるを得ない場合には解雇が認められてしまうことがある。

4章 正社員をクビにできないケース

会社から解雇を言い渡されたとしても、それが法律上すべて認められるわけではない。

実は、会社側が「クビだ」と主張していても、ルールに照らすと「その解雇は無効である」と判断されるケースが非常に多いのである。

ここでは、会社が正社員をクビにできない4つの具体的なケースを説明する。

4-1 主観的な解雇理由の場合

会社側が「なんとなく雰囲気が合わない」とか「やる気が感じられない」といった、個人の主観で判断した理由は認められない。

客観的なデータや具体的な事実に基づかない解雇は、法律では許されないのである。

4-2 不合理な解雇理由の場合

誰が聞いても「それはおかしい」と感じるような、理屈の通らない理由は不合理とみなされる。

例えば、結婚したことや、自分の意見をはっきり言ったことなどを理由に解雇することは、合理的な理由がないと判断される。

4-3 社会通念上の相当性を欠く場合

理由自体は事実であっても、解雇という処分が厳しすぎる場合である。

例えば、仕事で一度だけ計算ミスをして会社に小さな損害を与えたからといって、いきなりクビにするのはバランスを欠いており、認められない。

4-4 解雇禁止に当たる場合

法律によって、特定の期間や理由での解雇が固く禁じられているケースがある。

例えば、業務上の怪我や病気で休んでいる期間や、産前産後の休暇中、およびその後30日間は、原則として解雇してはならないと決められている。

5章 正社員の解雇の種類

会社が労働者を辞めさせる理由は様々であるが、法的には大きく3つの枠組みに分類される。

自分がどのケースに当てはめられようとしているのか、まずはその特徴を確認してほしい。

5-1 普通解雇

この解雇は、主に労働者の「働く能力」や「体調」に問題があるとされる場合に行われる。

例えば、前述したような著しい能力不足や、病気や怪我でどうしても業務に戻れないケース、長期間の無断欠勤などがこれに当たる。

最も一般的な解雇の形ではあるが、それでも会社側には「教育や指導を尽くしたか」という厳しい責任が問われる。

5-2 懲戒解雇

これは、会社が労働者に対して下す最も重い「制裁(罰)」としての解雇である。

例えば、会社の金を使い込んだり、重大な犯罪を犯したりした場合などが考えられる。

これは労働者にとって「死刑判決」とも呼ばれるほど不名誉な処分であり、退職金が支払われないこともある。

そのため、認められるための基準は普通の解雇よりもさらに厳格である。

5-3 整理解雇

他の2つと決定的に違うのは、労働者本人には何の落ち度もないという点である。

いわゆる「リストラ」のことで、会社の経営が悪化したために、生き残るための手段として行われる。

人員削減の必要性、解雇回避努力の有無、人選の合理性、手続きの相当性の4つの要素から解雇権濫用に当たるかが判断される。

整理解雇とは何かについては、以下の動画でも解説している。

6章 正社員がクビになったら?不当解雇への対処手順

突然のことに動揺してしまうかもしれないが、まずは一呼吸置いて、次のステップに沿って準備を進めてほしい。

法的な紛争は、早めの対応が何よりも重要となる。

6-1 弁護士に相談する

自分一人で会社と戦うのは、精神的にも知識的にも非常に大きな負担となる。

まずは、労働問題に詳しい弁護士に相談し、その解雇が法律的に見て有効かどうかを診断してもらうことが大切である。

専門家のアドバイスを受けることで、これから何をすべきかという見通しを立てることができる。

6-2 通知書を送付する

解雇に納得できない場合は、書面で自分の意思をはっきりと会社に伝える必要がある。

具体的には「解雇を理由とする退職は認めない」ということや、「引き続き働く意思がある」という内容を記した通知書を送付する。

この際、いつ誰が送ったかを公的に証明できる「内容証明郵便」を利用するのが一般的である。

6-3 交渉する

書面を送った後は、会社側と話し合いの場を持つことになる。

解雇を撤回させて職場に戻ることを目指すのか、あるいは一定の解決金を受け取って退職を受け入れるのかなど、自分の希望に合わせて交渉を進めていく。

弁護士が代理人となれば、労働者本人が直接会社とやり取りする必要はなくなる。

6-4 労働審判・訴訟を提起する

話し合いで決着がつかない場合は、裁判所などの公的な手続きを利用することになる。

例えば「労働審判」という制度を使えば、原則3回以内の期日でスピーディーに解決を目指すことができる。

労働審判とは何かについては、以下の動画でも解説している。

 もしそれでも決着がつかない場合は、正式な「裁判(訴訟)」へと進み、裁判官に最終的な判断を下してもらうことになる。

不当解雇の裁判については、以下の動画でも解説している。

7章 正社員の解雇についてよくある疑問

正社員の解雇についてよくある疑問を解消していこう。

7-1 Q1:正社員の解雇規制が緩和される?

「お金を払えば自由に解雇できる制度ができる」といった議論がニュースになることもあるが、現時点でそのような法律が成立しているわけではない。

現在も、前述した通り「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」という厳しいルールは守られており、正社員の権利は強く守られたままである。

7-2 Q2:正社員の解雇は何日前に通知される?

法律(労働基準法)では、解雇をする場合は少なくとも30日前に予告をしなければならないと決められている。

もし30日に足りない場合は、その日数分の手当(解雇予告手当)を支払う必要がある。

例えば、いきなり「今日でクビだ」と言い渡すなら、会社は30日分以上の平均賃金を支払わなければならないのである。

7-3 Q3:正社員の解雇で退職金はでる?

一般的に、会社の都合(普通解雇や整理階級)であれば、会社の退職金規定に基づいて支給される。

ただし、懲戒解雇の場合は、就業規則に「支給しない」と書かれていると、全部または一部が支払われないこともある。

とはいえ、懲戒解雇であっても、これまでの功績をすべて消し去るほど重大な背信行為がない限り、全額不支給は認められないケースもある。

7-4 Q4:会社都合で正社員を解雇できる?

労働者に落ちがない会社側の都合で解雇する場合には、整理解雇となる。

先ほど説明したように人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続きの相当性から解雇権濫用となるかが判断される。

なお、失業保険上は、犯罪行為や重大な規律違反等による重責解雇を除き、会社都合として処理されるのが原則である。

7-5 Q5:就業規則がなくても解雇できる?

就業規則がない会社(従業員が10人未満の会社など)であっても、解雇の手続き自体は可能である。

しかし、就業規則がないからといって自由に解雇できるわけではない。

この場合も法律(労働契約法)のルールが適用されるため、厳しい解雇の条件をクリアしていなければ、その解雇は無効となる。

なお、懲戒解雇については、就業規則に懲戒事由や懲戒の種類が記載してなければすることはできない。

8章 正社員の解雇はリバティ・ベル法律事務所

正社員の方が解雇されたら、是非、リバティ・ベル法律事務所に相談してほしい。

この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではない。

法的な見通しを分析したうえで、あなた自身の意向を踏まえて、適切に方針を策定する必要がある。

リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、とくに外資系企業や管理職の不当解雇問題に圧倒的な知識とノウハウを蓄積している。

初回相談は無料となっているため、まずはお気軽にご相談いただきたい。

お問い合わせ – リバティ・ベル法律事務所

9章 まとめ

以上のとおり、今回は、正社員の解雇について説明した。

突然、解雇を言い渡され戸惑うかもしれないが、安易な発言や態様は控え、法的な見通しに基づいて、冷静に対処していくことが成功の秘訣だ。

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