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春を歌う小さな箱庭

 



 陽の光に照らされた小さな小さな猫の額ほどの箱庭。そこで鼻歌交じりに母は、植物の苗を植えている。4月の雪解けがくる頃、寒い冬を越えてやってきた春の日差しと、まだ少し肌寒い空気の中のできごと。

 特に家庭菜園のハーブが好きで、レモンバーム、アップルミント、イタリアンパセリ等を植えている。その子たちは季節がくると、やわらかな新芽を出して、葉や花を揺らす。

 母がこんなに植物が好きだったのを子供の頃は知らなかった。というのも、母はダンスが心の拠り所だった時期があって、私たちが思春期真っ只中の頃、家庭菜園とは遠く離れた場所で息をしていた。

 母がガーデニング用の帽子をかぶり、嬉しそうに昨年採れたハーブの種を両手でそっと土に植える。植物たちは寒い季節の前に、明日の自分を託して、種に姿を変える。そして春が来て、生まれた土に還ってまた芽を出し葉を揺らす、その『めぐり』の中で母は嬉しそうに土と植物と会話をしている。

 気分が晴れないときには、紅茶にレモンバームを浮かべて飲むと、ふんわりと良い香りでほっとする。少しだけ鬱々とした気持ちが晴れるような気がする。

レモンバームは古くから、香りづけや薬草として利用されてきましたが、現代の科学においてもレモンバームの効果が裏付けられたものも多くあり、鎮痛や鎮静作用、解毒作用、抗菌作用、血圧降下などの効果があるといわれています。
レモンバームに含まれる成分を摂取することで、リラックス効果も期待できます。

Plantia公式サイトより引用

 そうか。だから紅茶に浮かべてくれていたのだなぁと、母とレモンバームの両方から包み込まれて、嬉しくてついつい、ほっぺが幸せの形にふくらむ。


春といえば桜の花。私は生まれ変わっても日本に生まれたい理由のひとつ。

 5年程前に旅立った祖父は、認知症をわずらっていた。ある晴れた春の日にポットにお茶を詰めて、ピクニックをしに桜並木を歩いたそうだ。母はその思い出を嬉しそうに話してくれる。祖父が嬉しそうに笑う家族との写真は、何度見ても幸せそう。

 祖父が覚えていても覚えていなくても、桜を見せてあげたいと母の兄姉が手を取って桜並木を歩いたときに、祖父は歌をうたって喜んでくれたそうだ。桜が咲くたび、幸せが何かを思い出させてくれる。

春が近づいてきたせいだろうか。
遠く離れた母の歌が聞こえる。

暖かくて懐かしい、あの日の春の歌。

  • 文字数:(992文字)


こちらの記事は三條凛花さんの企画に参加しています。


三條さんの暮らしを綴ったnote記事は、生活と読んだ人の心が豊かになるヒントが書いてあります。1人で(1人で⁉)作られている『月刊tote』の記事が素敵です。この記事に心惹かれ参加をしてみよう、と思い立ちました。

三條さん素敵な企画をありがとうございます🌸


【以下プロフィール】

  • chimo:おおらかに憧れる40代主婦|noteで文房具、コーヒー、音楽、映画、ラジオ、他愛もないつれづれを書いてます。

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🌸【追記2025/2/20】→今回の記事につかわせていただいた飾りイラストはTOMOさんの作品です。素敵な罫線・縁取りなどいつもありがとうございます。(今回の記事のイラストはコチラから👇)

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