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顧問税理士がいても、資金戦略が抜ける会社は多い

IT受託会社で「数字は見えているのに不安が消えない」ときに起きていること


顧問税理士がいるのに、社長がなお、資金繰りに不安を感じる。
これは珍しいことではありません。理由は、税務や会計の確認が足りないからではなく、見ている役割と時間軸が少し違うからです。

数字を確認することと、将来の資金の流れを組み立てることは、似ているようで異なります。

この記事では、税務・会計の確認資金戦略の整理との違いを、IT受託会社の経営判断に引きつけて整理します。
大事なのは、相談先を増やすことではなく、社長が判断するための材料をそろえることです。

顧問税理士がいても資金の悩みは残ることがある

顧問税理士がいると、試算表や決算書、税務申告の数字は見えやすくなります。
それでも資金の悩みが残るのは不思議ではありません。
なぜなら、会社の不安は「今どう見えるか」だけでなく、「この先どう動くか」から生まれることが多いからです。
借入返済や入出金のタイミングの違いによって、黒字でも資金繰りが厳しくなることがあります。

IT受託会社では、このズレが特に出やすいです。
受託開発なら、検収が終わるまで発注者へ請求できないことがあります。SESや準委任でも、稼働はしていても入金は翌月末以降になることがあります。
その間に、給与、外注費、社会保険料、借入返済は先に出ていきます。
だから、数字が整っていても、社長の頭の中では「来月以降が不安」という状態が起こりやすいのです。

それは役割が違うから

ここで大事なのは、誰かが悪い、という話ではありません。
税務・会計の確認と、資金戦略の整理は、役割が違います。
税務や会計は、今までの取引を正しく整理し、申告や記録につなげる意味合いが大きいです。
一方で資金戦略は、これからの返済、採用、投資、追加融資、入金時期を並べて、「この先どこで苦しくなるか」を見る意味が大きいです。

つまり、顧問税理士がいても資金戦略が抜けやすいのは、体制が悪いからではありません。
見る対象が少し違うからです。
だからこそ、社長自身が「今の数字」と「これからの流れ」を分けて考える視点を持っておくと、かなり整理しやすくなります。

資金戦略で見るのは「これからの流れ」

資金戦略で見るべきものは、売上高や利益だけではありません。
まず大事なのは、いつお金が入るかです。
次に、いつお金が出るかです。
そして、借入返済、採用、外注、投資、追加融資の予定を、その時間の流れの上に重ねて見ます。
このときに資金繰り表を使うと、現金収支の動きや過不足を把握でき、資金不足になる前に借入や支払い条件の見直しを検討できます。

借入の返済原資は利益であり、必要な借入金額を計画的に返済できるかどうか、を収支計画で検討することが大事です。
さらに、運転資金は売掛金や買掛金などのズレと関係し、長期借入の返済原資は利益や減価償却費などのキャッシュフローで考える必要があります。
つまり資金戦略とは、帳簿の数字を見るだけでなく、返済できる流れになっているかを見る作業です。

IT受託会社では、ここに契約条件も入ります。
検収後請求なのか、月末締め翌月末払いなのか、一部前受金があるのか、で同じ売上でも資金の残り方は変わります。
だから、資金戦略は「利益が出る案件か」だけでなく、「現金がいつ入る案件か」まで見ないと不十分になりやすいです。

受託会社で抜けやすいのは返済・採用・投資・入金時期の整理

IT受託会社で特に抜けやすいのは、ひとつひとつの判断を別々に見てしまうことです。
借入は借入、採用は採用、外注は外注、投資は投資、というふうに分けて考えると、それぞれは妥当に見えます。
ですが、資金繰りは重なり方で苦しくなります。

たとえば、採用は必要、外注も必要、ツール投資も必要、追加融資も考えたい。
この判断自体はどれも妥当ですが、入金が後ろにずれた月に、返済、給与、外注費、投資支出が重なると、一気に手元資金が薄くなります。

資金戦略が抜けやすい理由は、ここにあります。
税務の確認、会計処理、融資手続、採用判断、営業判断が、それぞれ別の場面で進むからです。
だから、社長が最後にそれらを一枚の時間軸に並べないと、「気づいたら苦しくなっていた」になりやすいのです。

社長が追加で整理しておきたいこと

社長が自分で持っておきたい視点は、まず、今後6か月から12か月で、いつ入金されるかを一覧できるようにすること。
次に、給与、外注費、借入返済、税金、投資など、いつ支払うかを一覧できるようにすること。
さらに、採用予定、案件開始時期、追加融資の必要時期を重ねることです。ここで資金繰り表を活用すると、現金の過不足を把握し、資金不足になる前に対策を取ることができます。

相談前に手元にあると整理しやすい資料も、そこまで多くありません。
直近の試算表、通帳の入出金、借入返済予定表、請求予定と入金予定、給与と外注費の支払予定、採用予定、投資予定です。

ここまで整理できると、「顧問税理士がいるのに不十分」という話ではなく、今の体制に、将来の流れを見る視点を足すという考え方に変わります。そうなると、判断材料を増やす方向で経営を整えやすくなります。

相談先を増やすより、判断材料を増やすという考え方

社長が本当に必要としているのは、相談先の数そのものではありません。
「この返済のままで採用してよいか」
「外注を増やしても回るか」
「追加融資が必要になる前に準備できるか」といった判断をするための材料です。

行政書士に相談する意味も、ここで自然に出てきます。
手続だけではなく、借入後の返済、入金時期、採用、外注、投資、契約条件まで含めて、どこで迷いやすいか、何を先に確認すべきかを整理できるからです。

まとめ

IT受託会社では特に、契約条件、入金サイト、返済、採用、外注、投資が重なりやすいので、社長自身がそれらを同じ時間軸で並べて見る視点を持つことが大切です。
そうすると、「今の体制に何を足せばいいか」が落ち着いて見えやすくなります。

参考情報

  • J-Net21「資金繰り表って何ですか?また、どのようにして作成するのですか?」 (j-net21.smrj.go.jp)

  • J-Net21「資金繰り表を活用する」 (j-net21.smrj.go.jp)

  • J-Net21「資金繰りとは」 (j-net21.smrj.go.jp)

  • 日本政策金融公庫「『黒字なのにお金がない』のはなぜ? 決算書の利益と通帳残高のズレ」 (jfc.go.jp)

  • 日本政策金融公庫「分かりやすく解説 ~アフターコロナを見据えた『収支計画』を立てる」 (jfc.go.jp)

  • 日本政策金融公庫「経営改善計画書策定の手引」 (jfc.go.jp)

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