【BL二次小説(R18)】 朝まで踊りたい①
「次、どうする?今日はまだいいんだろ?」
オレは靖友と久々に会って呑んでいる。
居酒屋で腹は膨れたし、2軒目はどこへ行こうか。
二人共明日は休みだし、まだまだ話し足りない。
大学生になってからなかなか会う機会は無くなった。
お互いの知らない生活を、全部報告し合いたい。
「そうだなァ……踊りに行かね?」
「お、踊り?」
靖友の口から聞き慣れない単語が……。
「この近くに行きつけの小屋があってさァ」
「小屋?」
「あァ、クラブのことな。ライブハウス規模の店のこと“小屋”ってんだ。ちなみにコンサート会場規模のことは“箱”な」
「ふぅん……」
靖友の意外な趣味……クラブで踊ったりしてたんだ……。
「あ、でもオレ、踊ったことないし」
「へへっ。オレが教えてやんよ」
靖友はオレの手を引いて、その“小屋”へ連れて行った。
店内はライトがギラギラぐるぐる宙を舞っている。
大音量の音楽。
奥に小さなステージ。
小規模なダンスフロアがあり、数十人が踊っている。
テーブルと椅子が隅の方に申し訳程度に並べられている。
「入場料とか、いるの?」
オレは声を張り上げて靖友に聞く。
「演奏やってねェ時はいらねェよ。ドリンク代だけだ。カウンターで注文して、ドリンクと引き換えに払う」
「わかった」
システムもよく知らない。
今日靖友に連れて来られなかったら一生来てないだろう。
「靖!元気?」
や、靖?
カウンターの店員が靖友に話しかける。
顔中ピアスだらけの男だ。
「おぅ。今日はダチ連れて来たァ。だからドリンク奢れ。テキトーなカクテルでいいわ」
「OK。今後もヨロシクな。オトモダチ!」
ピアスの店員がオレに笑顔を向ける。
「……ははっ」
オレはドン引きしながらひきつった笑顔で返す。
ドリンクを受け取り、椅子の無いテーブルへ向かう。
「ドリンク代タダにしてくれるなんて、結構顔なんだな、靖友」
耳が慣れてくると、そんなに大声張り上げなくても会話出来ることに気付く。
「こういう小屋はなァ、結構火の車なんだ。だから少しでも人連れて来てもらって賑やかなのを演出してェんだよ。要はサクラだ」
「……へぇ。大変なんだな」
知らない世界の話が聞けて興味がわく。
「今日は週末だからそこそこ客が入ってっけどな、平日はガラガラだから、そういう場合はダンスフロアにも椅子とテーブルを並べて誤魔化すんだ」
「ふんふん」
「演奏がある日でも、チケットがたいしてさばけなかった日は客もサクラだ。オレもよく声がかかる。ドリンク飲み放題だ。その代わり、どんなに退屈な演奏でも最後まで居なきゃなんねェ」
「ははっ!そうなんだ」
聞いてる分には楽しいけど、経営って大変だなぁ。
いくら音楽が好きでも、儲かるかどうかは全然別の話なんだな。
まあ、それはチャリでも同じだ。
いくらチャリが好きでも、スポンサーが付かなきゃプロとして食っていけない。
「ハイ!靖!」
さっきと別の店員が靖友に声をかけてきた。
「来週、ベース頼める?スウィングだけど」
「スウィング?たりーなァ」
「いいんだよテキトーで」
「ンなことばっかやってっと、潰れンぜ」
「なんとかなるさ」
「わかったヨ。しゃーねーな」
「サンキュ、靖」
……驚いた。
「靖友……ベース弾けんの?」
「あ?あァ。テキトーだけどな」
知らなかった……。
高校の時は楽器弾けるなんて一言も……。
「スウィングってなに?」
「ジャズの一ジャンルだ」
「ジャズ!……カッコ……イイ」
「ハッ!ジャズは誤魔化しがきくからオレみてーな素人でもバレねーんだヨ」
……靖友の知らなかった面が次々と……。
オレの知ってる靖友は、ほんの一部分だった。
オレは衝撃と、尊敬と、……少し寂しさを覚えていた……。
