子どもたちと廃材で小さな船をつくる。行き先は日本
ガレージの隅に積んであった、木の廃材。
最初は「ちいさな小屋」を作ろうとはりきっていたけれど、いざ並べてみると、どうしても材料の長さが足りない。
「あぁ、これじゃ屋根まで届かないね」
一瞬、動きが止まる。
けれど、子どもたちはすぐに顔を上げた。
「じゃあ、この形を活かして、船にしたい!」
「ママ、手伝ってくれる?」
目標を軽やかに切り替えて、そこからはもう「職人」の目になっていた。 手にしたのは、ドリルとトンカチ。
ウィーン、と小気味よい音を立てて厚みのある板に穴を開けていく。
「ここ、押さえてて!」
「よし、いくよ」
狙いを定めて、釘をトントンと打ち込んでいく。 乾いた木の音と金属音が響き渡る。
パレットを組み合わせて甲板にし、そこへ続くタラップを取り付ける。
仕上げに、一番大事な「舵(かじ)」をしっかりと固定した。
本当は適当につけたかったけど、子どもたちにせがまれたので、ちゃんとぐるぐると回るように取り付けてみた。
完成したのは、少し無骨で、けれど、どうしようもなく愛おしい「木の船」だ。

「この船で、どこまで行くの?」
片付けをしながら、ふと聞いてみた。
カナダの冬がだんだんと終わり、少しづつあたたかくなってきた。 ここから地続きの公園か、あるいは近所の森へ行くと言うのだろうか。
「日本!」
迷いのないふたりの声が揃って返ってきた。
カナダで生まれ、カナダの空気の中で育っている子どもたちの心のどこかに、遠く離れたわたしの故郷がちゃんと繋がっている。
そのことが、なんだか無性に嬉しかった。
「そっか。日本まで行くんだね。じゃあ、嵐が来ても大丈夫なように、もっとしっかり作らなきゃね」
そう声をかけた直後、どっちが先に舵を握るかで、ちょっとした喧嘩が始まった。
さっきまで同じ目的地を叫んでいたはずのふたりは、今度は船長の座を譲らない。
結局、交代で舵を握ることで落ち着いた。
「ごはん、できたよー!」
家の中からマミーが呼ぶ声がして、ようやくふたりは船を降りた。
子どもたちが家の中へ戻ったあとも、庭の隅にある「日本行きの船」は、夕暮れの中で出航を待っているようだった。
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