見出し画像

うたの日の自選短歌月まとめ(2024上半期)

うたの日の毎月の自選五首、今年の1月から始めました。なんとか続けております。上半期分のまとめ。

1月

蛍草の口ひんやりとひらかれて森のことばをもらふ約束
ひとりっ子だから庭じゅうとりのほね抱きしめているようにさびしい
前兆はきれいなものよ雪の墓つくりおえたら狂犬になる
うつぶせたままに鏡を運ぶときシーラカンスの肺のくらがり
奥行があれば抱かれてしまふのにポインセチアをのぼる血脈

2月

編み針は尖りきれない針だからときどき迷う夜の出口を
だらしないことがたのしい短夜の綿菓子をただ分け合つてゐた
しらたきを結びつづける母の背にあかるい霧のような陽だまり
国じゅうのブリキやさしく錆びつけば下げられてゆく晴れの基準値
略さずにツナマヨネーズと呼ぶひとの平らな胸をねむりにゆくの

3月

夕焼けにいちど浸した手のひらが輪廻のためにまた蚊を潰す
持ち主のないものばかりうつくしい 金魚のひれの燃える流線
らんぼうにあいしてほしい金曜日、胸ポケットにすずらん詰めて
全方向の春の気配にそばだてる耳付きたまごサンド(特大)
わたくしを叱つてくれる手を選ぶ ドーナツぢやないからもどせない

4月

満潮の続きのようなすずしさへふっとはじまるプラネタリウム
しならせた首にからだを追いつかせ麒麟は雨後の気配を抱きぬ
悪夢という小さな山羊よ両脚に黒いりぼんをくるくるつけて
八月のうつくしい火を潰したら姉さんが怒る 両眼をあけて
くちびるのうらには骨のないことを無菌のような夜に話した

5月

うつくしい綻びとしてしまわれる日記にかかれないほうの夜
くちぱっちのいくつも並ぶ涅槃ならわたしを先に投げてもいいよ
向日葵をおそろしい口と云うひとのラムネを呑んでゆく喉ぼとけ
カンガルーまっすぐ跳ねてとうめいな樹影になってしまうともだち
花風呂のような快楽おりてくる一度だけ口ぐせを盗めば

6月

春夏のあいだを揺れるおとうさん 腕いっぱいに綿雲のせて
夜ふかきあなたの鼻梁はふれるたび淡く照度をあげてゆく島
心拍を枕のうらに聞きながら夢の羽化まで遠いくらやみ
錆びやすき母として立つ裸婦像のなにも指さない緑青のゆび
舐めあえば傷は浅くてゆうぐれのパフェスプーンの置き場所がない


1月~3月は旧仮名チャレンジの歌も……。憧れがあって挑戦してみたのですが、最近はもっぱら現代仮名遣いです。
上半期全体からの四首はまた後日。
下半期も続けたいと思います。あらためてうたの日という場に感謝。
今後もよろしくお願いいたします!

歌集(短歌160首+日記)


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集