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優しくなれない日は、私のせいじゃなかった


夕方6時の、あの時間のこと。
帰宅して、バッグを床に置いたまま、
キッチンに立つ。

作って、食べさせて、片付けて。
まだ一度も、座っていない。

「ねえ、一緒に宿題やってほしい」
わかった、と答えた。

シンクの食器に背を向けて、待った。

5分。

10分。

始まらない。

30分後も、変わっていなかった。

私は時計を見ている。
子どもは、鉛筆を持っていない。

お腹の奥から、
じわじわと熱いものが上がってくるのを感じていた。

「ねぇ、まだ?」

声が、少しだけ強くなった。
息子はふてくされた顔をして、
私は自分の眉間に力が入っているのに気づいた。

あ、また噛みしめてる、と思った。
怒りたかったわけじゃない。

ただ、進めたかった。
待っている間に、
どんどん夜が削られていくのが嫌だった。
早く終わらせて、次に行きたかった。
それだけのことが、うまくいかなかった。


別の日のこと。
同じような夕方で、
ご飯を食べて、いちごを食べた後。

子どもはやっぱり、宿題を始めなかった。
でも、引っかからなかった。
急かさなかったし、
声も荒くならなかった。

あとから、なんでだろうと考えた。
思い当たることが、一つだけあった。

その日はジムで、
いつもより軽く動いていた。
心拍数を上げすぎず、
時間も短くしていた。

それだけだった。
本当に、それだけのことだった。
でも、体が軽かった。
胸のあたりに、
少しだけ余白があった。

優しくしようとしたわけじゃない。
でも余裕があると、
気づいたらそうなっていた。

あ、そういうことか、と思った。

優しくなれない日は、
優しくないんじゃなくて。
ただ、余裕がないだけなのかもしれない。

そう思えたとき、
あの夜の自分を、少しだけ許せた気がした。

余裕は、気合いじゃ作れない。
体は、もう知っていた。


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このお話は
ゲームが悪いんじゃない。シリーズです。
続きは⏬️


そして、前回は
「子どもの不安を、私が背負いすぎていた頃」
シリーズ
最初から読みたい方はコチラ⏬️



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