ITエンジニア採用人事の市場価値は上がるのか?/ITエンジニア採用人事の生存戦略
Twitterで「テック業界の採用はどんどん難しくなっているので、採用人事の市場価値も上がっていきそう」という旨の投稿が500以上の「いいね」を集めていました。
採用人事に限らずですが「〇〇の市場価値は上がる」「◯◯は儲かる」という文脈を見て志す方が多いのはヒトの摂理ですね。こういう話題が出る頃には新規参画タイミングとしては遅いのですが、ことITエンジニア採用を日本で今から目指すのは悪手です。今日は生存戦略も含めたお話です。
エンジニア採用が難しくなっているので採用人事の市場価値が上がるのではないかというポストが回ってきました。私は避けました。採用に絞らず幅広く攻めないと危ういです。
— 久松剛 (@makaibito) August 18, 2021
根拠は少子化。
フィリピン、ベトナムの現地で採用人事するなら行けると思います。
次点は採用強者の企業で採用人事。
採用が難しくなり、エンジニア採用人事の専任化が進んでいる背景
「テック業界の採用はどんどん難しくなっている」というのは真です。1年ほど前に下記コンテンツを出しましたが、非常に多様です。採用手法は大きく変わらなくとも、各手法に紐づくサービスというのは非常に増えています。
採用手法が複雑化した結果、従来のように人事部門が労務や評価などをしながら採用兼務するというのは難しくなり、採用に特化した「採用人事」が誕生しました。

私もこのあたりの採用というのは本noteを書いたり、コンサルティングをしたりはしていますが、言ってしまうとこれらの手法というのは「やるべきこと」ではなく「やったほうが望ましいこと」の集合体です。
問題はこの界隈の盛り上がりは一時的な(小規模な)バブルなのか、それとも永続的に続くものかというところです。
バブルの最中の人は自身を持ち上げている世間の風潮は自身の努力の結果であり、その繁栄は永遠だと思いがちです。弾けてからあれはバブルだったのだと気付くのです。そして弾けに備えてタイミングを察知するのはもっと難しいです。ITに関して言えば参入してくるプレイヤーが増えてきたり、お金の話をゴリゴリする人が集まってくると怪しいように思います。
私はこのエンジニア採用というのはバブルの様相を呈していると捉えており、今から採用人事になるのは悪手だと思っています。市場が消滅することはありませんが、縮小するでしょう。
【採用人事をオススメしにくい理由】抗えない少子化
先の採用手法はあくまで日本固有のドメスティックなものです。一方で少子化から来る生産年齢人口というのは確実に減っていきます。
日本固有のドメスティックな採用手法を、牌が減りゆく日本人を対象に練っているという認識を明らかにしなければなりません。例えるなら埋蔵量が明確に減っている宝石採掘に対して新規参入をすることと同意だという認識はしなければなりません。

出典:平成30年9月経済産業省 2050年までの経済社会の構造変化と制作課題について
私はフィリピンとベトナムでもエンジニア採用を実施していますが、ボリュームゾーンが若年層にある国々での採用を経験すると、日本の異常さが見て取れます。
家族という概念が強いフィリピンでは、優秀な子供に対して投資をし、優秀な情報系大学に行かせ、年収の良いIT企業に行かせ、扶養家族をぶら下げるというループが出来上がっていますので、個人の知識レベルは十二分に高いです。卒業後は外資を中心にオフショア拠点に入社することが多いため、基礎的な実務スキルもあります。こうした国での採用は求人票を書いてから1ヶ月〜1.5ヶ月で大抵のポジションが充足します。採用チャネルも簡素で、Facebook、JobStreet、Indeed、リファラルです。
日本で2021年現在でこの層を採用しようとすると、期間もオープンしてから1人目の決定に数ヶ月は掛かるでしょう。スカウトやイベントで採用するにしても先に述べた「やったほうが望ましいこと」を実施しなければなりません。採用予算の計算は利用する採用チャネルに依存しますが、一人頭300万円でも心許ないなという印象です。

エンジニア採用が難しくなっているというのは真です。
— 久松剛 (@makaibito) August 18, 2021
経験者採用市場に小ぶりのバブル感があるのも真です。
そのいくらかの要素は「少子化」によるものなので元となるパイが減っていることに注意が必要です。
【採用人事をオススメしにくい理由】制御不能な志向性、フリーランス化
エンジニア採用担当になるとして、多くの場合は非採用強者の企業になります。現時点での採用強者については下記コンテンツを御覧ください。
非採用強者の採用は非常に辛いです。
既に企業が持っているハロー効果や、Seed期であるというフェーズによって戦いやすさは依存します。企業側の投資姿勢などにも左右されます。動物番組などで「懸命にメスにアピールするも全く振り向いてくれないオスの鳥」とかありますが、あんな感じです。更に厳しいのは、会社単位で振り向いてくれないのではなく業種や業界、事業フェーズを十把一絡げにして振り向いてくれないので、その点に置いては鳥の求愛行動より厳しい戦いです。
私自身、採用強者でない企業について、ITエンジニア採用・定着・活躍に関しての改善にはコミットできますが「経験者を◯月以内に◯名採用する」というお約束はしていません。海外に活路を見出すしかないでしょう。
ご自身が強運でたまたま採用強者に入れた場合、もしくは事業展開がうまくいって採用強者になった場合は儲けものです。ただその場合はご自身が単独で動いた際にどれだけ別の場所で力量を発揮できるかというと難しいため、独立や非採用強者の企業に転職したりして腕試しするとたちまち路頭に迷います。
【採用人事をオススメしにくい理由】花形になりきれない未経験エンジニア採用
未経験の母集団からポテンシャルのあるヒトを採用し、育成と定着、活躍までセットで実施すると採用専任者であっても活路となるでしょう。
ただ採用市場で華やかなのはあくまでも「日本人経験者正社員採用」です。向こう数年間は未経験エンジニアの採用が今のようなマツリゴトになるとは考えにくいです。今の人事採用担当者の業務を見ても、溢れる未経験者の直接応募の書類を捌くという「フィルタリング業務」が中心です。この業務が冒頭のポストの投稿者が意図した「市場価値の高さ」かというと違うでしょうね。
加えて教育という投資が必要な以上、経営層から経験者採用のように評価されるかというとそうではないでしょう。
ただし数年後、少子化や分散が進んだ結果として「日本人未経験者正社員採用できたんだね!ちゃんと日本語でコミュニケーション取れるじゃない!凄いね!」となる可能性はあります。不人気業界で実際に起きている話です。しかしこれもまた、華やかとは言い難いお話です。
可能性があるとしたら
— 久松剛 (@makaibito) August 18, 2021
・未経験の中からポテンシャルのある人を採用し
・育成と定着、活躍までセットでできる
と国内、非採用強者のエンジニア採用人事でも延命できると思います。
が、そこが評価・待遇が良いかと言われると期待しないほうが良いです。
【採用人事をオススメしにくい理由】限定的なキャリアパス
「フリーランスになる」という方向性は今現在は業種問わずありがちな選択肢です。
採用人事の文脈でフリーランスというと難しく、実績とハロー効果を伴った採用マネージャーが採用コンサルになるのであれば可能性はありますが、採用メンバーとして考えるとスカウト代行になりがちです。副業であれば良いでしょうが、独立して生計が立つかと言うと難しいところです。
特に人事採用職はスカウト代行のような形も多く、控えめに言って会社員時代と同等の生計が経つとは思えません。ランサーズでスカウト代行の募集を見ていると、「実際の受注者」を見る限りでは時間単価1,500円といったところです。フリーターなら好条件ですが、フリーランスとして後から払う税金などを踏まえると厳しい。毎月200時間働いたとしても360万円です。ここから所得税、個人事業税、消費税などが引かれていきます。
採用人事の生存戦略
ではどのようにすれば採用人事の生存戦略は見えてくるのでしょうか。いくつかご紹介します。
【採用人事の生存戦略】英語
牌が減っていく日本人への依存比率を減らしていくという選択肢です。日本の将来性を考えると来日を選ばれなくなるリスクが十分にあるため、現地に支店を出して外資系の一つとして参列し、採用する方が文化ギャップも小さくなります。このあたりの話もどこかでやります。
中国あたりからは発注元としての日系企業の案件が安すぎるために離脱しているという話もあります。フィリピン、ベトナム、インドネシアあたりを視野に入れることになるでしょう。
日本語は世界で考えるとマイノリティ。
これは職種問わず意識すべきです。
【採用人事の生存戦略】定着・活躍・退職まで看る
前述したように採用人事の業務のうち、「やったほうが望ましいこと」は年々増えています。そのため採用に特化していくことになるわけですが、「採用しかやらないんで!」「入ってからは他の人の仕事です!」と断言する方がよく居られます。
これまでお話してきたように「日本人経験者採用」そのものの将来性が危ういです。
エンジニア採用専門に絞るのであれば、おそらく2025年くらいまでで陰りを見せます。あなたのエンジニア採用人事キャリアが2025年で見切りをつけるプランであれば投機しても良いでしょう。一方で採用人事に見切りをつけた後のキャリアとしては、紹介会社かヘッドハンターか営業職になる傾向があるためその観点は必要です。
採用人事本人のためにも業務範囲は拡大しておくべきです。定着・活躍・退職まで興味を持ち、関わることでできることも増えていきます。評価、制度、研修、労務、給与あたりですね。
最後に
今回のお話も含め、QiitaJobsさんでお話してきます。2025年のトレンド予測についてもお話します。
今現在日本のIT業界を取り巻く採用施策というのはマツリゴトということもあり、中にいると社会的生き物であるヒトとしても楽しいんですよね。コロナ禍にならなければもう何段か激しめのマツリゴトになった可能性もあります。
ただ事業として捉えると事業を推進するためのヒトを集める段階でマツリゴトに乗らなければならず、本質ではありません。日本と日本人に限ってみると固執するほど将来が明るいわけではありません。
最初の投稿の話になりますが、儲かりそうだと思ってなるものじゃないですね。
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