昭和レトロ風SF冒険小説2
【ぼくらの怪獣大戦争1939】(中編)
土砂降りとなった雨の中を、僕たちはぬかるんだ道を走って防衛軍基地を後にすることにした。
どちらからともなく、一緒に手をつないで走る。
上空では相変わらず雷鳴が転げまわり、外惑星人の円盤と防衛軍の部隊が激しい戦闘を行っていた。
どちらが優勢なのかは正直解らなかったけど、地上の新兵器からまばゆい光条が発射されるたび、何機もの円盤が掃討される。
この様子なら、あわや街が壊滅といった事態にはならずに済むかも。
そう思った僕は、つないでいる勝ちんの手をぎゅっと握り占めた。
でも。
自宅……緊急時の避難場所までの道のりは、そう簡単に帰れるようなものではなかった。
雨は相変わらず降り続いているし、降ってくるものも雨だけじゃない。
避難先の様子なんてここからじゃ判るはずもない。
こんな時は焦っちゃだめだ。
学校の避難訓練でやった通りに、落ち着いて。
そう自分に言い聞かせる。
学校と言えば、今は夏休み。
毎年夏休みと冬休みには、田舎の婆ちゃんのところへ行くのが恒例だったのに、今年はこの騒ぎだから行けそうもないな。
こんな毎日、外惑星人の襲撃におびえて過ごす夏休みも真っ平だけど、正体不明の相手は手ごわくて防衛軍も苦戦中。
せめてあの新兵器が、奴らをきれいさっぱり退治してくれたらなぁ。
蚊取り線香で蚊を退治するように、あいつらも撃退出来たらいいのに。
気分はすっかり萎えてしまい、僕と勝ちんは会話も無く黙って自宅に向かって歩き続けた。
雨の夜空が時々光る。
雷がさらに近くなっていた。
ピカァ!
ゴロロロロ……ドォーーン!
「あ、雷が落ちた?かなり近くだ。まさか防衛軍の基地?」
光とほぼ同時の落雷。
至近距離なら、僕たち二人はかなり危なかった。
いや、こんなところに来てしまって言うのもなんだけどね。
父ちゃんが良く「過ぎた好奇心は身を亡ぼす」って言ってたっけ。
僕と勝ちんは今、その意味をよ~く理解したよ。
着ているシャツも短パンもぐしょぐしょだ。
気持ちの悪さからいっその事、スッポンポンになってやろうかと思うくらい、ずぶ濡れだった。
「あ、あれ?ねえ、功ちゃんあれなんだと思う?あっち、山の上」
そう言って勝ちんは、僕たちが降りてきた来た山の山頂の方を指さした。
2、3機の円盤がふらふらした様子で上空を旋回しており、その周囲に真っ黒い雲が渦を巻いている。
さらにその中心から何かが姿を現そうとしていた。
「うわっ、やべぇよ。もう勘弁してくれよ。おとなしく帰って父ちゃんに尻叩かれるから」
ついに僕も弱音を口にした。
「仕方ないよ。先生や親の言いつけ守んなかったのは、おいらたちだもん。一緒に怒られてやるからさ、元気出して。しょぼくれてるのは功ちゃんらしくない」
「解った。じゃぁ、腹くくって帰るとす……って、おい、勝ちんあれを見ろ!」
「え?何々?……う、う、嘘だろ!銀色の、り、龍?!」
僕たちが目撃したのは上空の黒雲を切り裂くようにして現れた、銀色に輝く龍の姿だった。
その龍が現れると同時に、空のあちこちから円盤が群がり始め、銀の龍に向かって一斉に光線を発射している。
さらに遅れて防衛軍の編隊もやって来たが、そこで僕たちは大惨劇を目撃する事になった。
黒い雲が再び湧き出たと思うと、その雲の中心部からけたたましい何かの叫び声が響き渡り、稲妻状の光が幾筋もほとばしっている。
防衛軍の航空隊、円盤群そして銀の龍すべてが、その光をまともに喰らっていた。
光線を食らった円盤、防衛軍飛行隊は次々と爆発していった。
それから銀龍が怒りの咆哮を上げたように見えたけど、その巨体の上部から大量のなにかが飛び出し、黒雲に向かって飛んでいったように見えた。
黒雲の中で爆発が起こり、そして黒雲は消え去った。
後には何事も無かったような静けさ。
そして銀の龍がゆっくりと、山の向こう側に降下していくのが見えた。
「どうする、功ちゃん?家に帰って父さんたちに怒られる?それとも……」
「皆まで言うな、友よ。どうせ怒られるのは同じだ。あいつ、めちゃめちゃ気になるじゃないか。行って確かめてみよう」
乗り掛かった舟って、こういう事を言うのかなー?
僕は夏休み前の、国語の試験に出た問題を思い出していた。
それとも、毒喰らわば皿までっていうやつ?
街全体が、本当に全滅したのではないかと思われるほど静かだった。
空の上には円盤も飛行機も飛んでいない。
防衛軍の方角からも何も聞こえてこなかった。
ぼくたちの中では、怖さと好奇心のせめぎあいが起きている。
その後、僕と勝ちんはおにぎり山と呼ばれる、ブナの木が生い茂る山を登っていった。
「はぁはぁ、頑張れ勝ちん。もう少しで山頂だ。あ、その前に鎮守の森があったっけ。あそこって思った以上に広いよな。近くに鍾乳洞もあるし。あいつが降りてきたけど、身を隠す場所にはもってこいだよな」
「そうだね。功ちゃん鋭いなぁ。あんなでか物。しかも銀ピカなんて目立ってしょうがないよ」
晩御飯を食べてから5時間以上は経ってると思うけど、なぜかぼくたちは疲れも空腹も覚えなかった。
雨もようやく小雨に変わり、もう少しで止むと思われる。
親に貰う尻叩きの刑が2倍になるのも構わず、僕と勝ちんは先を急いだ。
ほどなくして、鎮守の広場にたどり着く。
そこに、奴はいた!
「いたよ……勝ちん。銀龍だ。銀の龍だ。だけど、こいつ?」
ブナの木陰からこっそり様子を伺うぼくたち。
少し離れた場所に、銀龍はかがみこむような体制でそこにいた。
銀龍。
ぼくたちは最初、それを本当に生きている龍そのものだと思っていた。
だが、今目の前にいるそれは、明らかに何者かによって作られた機械。
金属でできた龍だった。
ロボット。
ロボットの龍。
その言葉が浮かんだぼくたちは、顔見合わせうなずきあった。
生唾を飲み込むと思い切って木陰を飛び出し、龍のいる場所まで走って行った。
「でけぇー!それに、なんかいっぱい付いてるぞ。もしかして、これ全部武器?」
僕は勝ちんの双眼鏡を借りると、龍の足元から頭部までをざっと観察してみた。
「へぇー。こんなでっかい機械、ロボットが空を飛ぶんだ。凄いなぁ。でも、これは防衛軍が作った物じゃないよね」
「当たり前だろう。やっとじぇっと機なんて作れるようになったばかりさ。こんな凄い機械、無理むり~」
能天気な勝ちんには少し呆れたけど、防衛軍だって負けてはいない。
僕はそう思った。
破壊光線砲だって作れたんだ。
ロボットさえ作れたら、あれを搭載して。
あ、もしかしてこいつ、本当は防衛軍が作ったのかも?
僕はそう考えると期待で胸が熱くなった。
「なぁ勝ちん、こいつを動かしてる兵士ってどんな人物だと思う?」
「さぁ?判んないけど、かなり偉い人とか?」
「馬鹿だなぁ、お前。軍って言うところはなぁ、偉くなるとこんな仕事はしないんだぜ」
これは有梨から聞いた話。
「そうか。けどさ、こんな凄い兵器を防衛軍が作ったなんて、おいらには信じられないけど」
懐疑的な勝ちんだけど、一理はある。
誰が作ったかに関しては(不明)ってこと。
改めて龍の機体を眺めると、腹部や肩の辺りから煙が出てるようだ。
もしかして、どこかに異常があってここへ着陸したのかもしれない。
喧々諤々で議論をしていたぼくたちだけど、ある物音で息を飲む。
龍の胸部、煙が噴き出している真上の部分に開閉口らしきものがあり、まさに今そこが開かれるかのように動き出したんだ。
僕たちは慌てて後ずさり、ブナの木の前まで後退した。
バタン!
扉が開き中から一人の人物が現れた。
金属的な輝きのある、水色の衣装に身を包んだ何者か。
辺りは暗くて、その人物の顔までは確認できなかったのだけれど……
「まさか、外惑星人?侵略しに来た奴?」
勝ちんが掠れた声を出した。
「おぅ、ままま、まさか。冗談だろ。ぼくたちここでお陀仏なわけ?」
「嫌だよぅ。まだ死にたくないよぅ。すばるちゃんにもう一度告白したいんだよぅ!」
涙と鼻水とよだれのせいで勝ちんの顔は凄い状態だった。
「汚ぇなぁ。ほら、これで顔を拭けよ」
僕はそう言って、首に巻いていた手ぬぐいを勝ちんに手渡した。
キュウウーーン。
カタンカタン。
と、銀龍から音が聞こえた。
音の聞こえた方向に目を向けると先程の人物、おそらくこの機械の銀龍の操縦者だと思う……が、円盤状の板に乗った状態で地上に降りてくるところだった。
円盤は何かに吊り下げられている訳では無く、虹色の光に包まれて宙に浮いていた。
やがて円盤が地面に近づくにつれ、その上に立っている人物の姿が見えてきた。
静かにゆっくりと降りてくる人物、銀の龍の操縦者は長い薄紫色の髪が美しい、けれども青ざめた顔色をした女性だった。
どこか具合が悪いのかもしれない。
どこか苦しそうな様子の彼女は、見た目にはまだ子供っぽさの残る顔つきだった。
まさか、ぼくたちとそれほど歳の差が無いとか?
いやいや。
相手は外惑星人、異星人だぞ。
見た目で判断なんて出来る訳はない。
だけど、そんな人物がこの機体を動かしていた事実を知って、僕たちは驚きを隠せずにいた。
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(解説、のようなもの)
皆さん、ぼくらの怪獣大戦争1939(中編)をお届けいたしました。
今回もママンマフィンの物語を、お楽しみ頂けたでしょうか。
書いていて思うんですが、主人公に子供を持ってくると苦労しますね。
特にせりふ回しが一番苦労します。
あれ?子供ってこんな物言いする?とか。
それから古い時代設定ですので、最近の用語や特にカタカナ語には気を使います……。
無視して書けたら楽なんですけどね。
今回も読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。<(_ _)>
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それではまた次の記事でお会いしましょう。
See you again !
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