『光の庭園 ~ののちゃんとゆかいな仲間たち~』聖夜の章
『今回は柴犬あんさんとの特別コラボ編です』
【鈴の音聞こえる雪の夜。ののちゃんが願ったものは?】
「ののちゃん、プレゼントは何にする?」
【連載3回目】
ののちゃんはジャガーの子供。
いつでも元気いっぱいな女の子。
今日も光の庭園に建つお家の中で、仲良しのお友達と楽しく遊んでいます。
季節は冬。
そしてここ、電脳世界の中にある「光の庭園」にも、もう直ぐあの季節がやって来ます。
静かな夜、窓の外から鈴の音が聞こえたなら、きっとそこには──
ののちゃんとそのお友達が、奇跡の夜に目にした出来事とは?
『今夜の事は、一生忘れにゃいよ!』
『欲しいもの?にゃんだろうな~?』
『街中のみんなが、とっても楽しそうに見えるんだにゃあ』
電脳世界の片隅にある「光の庭園」は文字通り、光と優しさの世界です。
その庭の隅っこに建つ、一軒のお家。
住んでいるのは、ジャガーの子ども「ののちゃん」です。
ののちゃんは、お向かいに住んでいるペンギンのお友達「ちょこちゃん」と一緒に、今日も楽しく遊んでいます。
お外は白いわた雪が、ふわりふわふわ。
立ち並ぶ木々や、お家の屋根にゆっくりと積もっていきます。
それぞれのお家のドアには、松や柊でつくられた、綺麗なリースが付けられています。
ののちゃんとちょこちゃんのお家にも、可愛らしいリースの飾りが付けられました。

二匹は、静かに降り積もる雪を見ながら、仲良くおやつを食べています。
そして、もうすぐやって来るという「特別な日」の話をしています。
「アレーニャさんが言ってたけど、特別な日には不思議なおじいさんがやって来て、お願いを聞いてくれるそうにゃ。ちょこちゃんは何をお願いするにゃん?」
アレーニャさんが焼いてくれた、好物のおさかなクッキーをポリポリ食べながら、ののちゃんはちょこちゃんにたずねました。

「ののちゃんは、このクッキーでもいいかもにゃ~」
ののちゃん、クッキーをほお張りながら、とっても嬉しそう。
「でもさぁ。クッキーなんて何時でも食べられるでしょ?アレーナさんが、たぁ~っくさん作ってくれるんだし。特別な日なんだから、もっと、こう……いつもとは違うものがいいと思うんだけど」
ちょこちゃんはこくんと首を傾げながら、考え込みました。
そして、ちょこちゃんの言葉を聞いたののちゃんも、ふいに何かに気づいたようでした。
(そう言えば……こんな雪の降ってる日に、何か大切な思い出があった気がするにゃん。とっても大切にしていた何か……うにゃ、誰かのことにゃ)
ののちゃんはそっと目を閉じて、心の奥にしまい込んだ、懐かしい記憶を探してみるのでした。
それは、遠い遠い記憶。
ののちゃんが、今よりもっと小さかった頃。
それは、思いもしない程、沢山の雪が降った、ある冬の日の事でした……
始めて見る雪景色。
白くてふわふわな雪に興奮した、小さなののちゃん。
雪の原っぱを駆け回って遊んでいたのだけれど、いつの間にか見知らぬ場所に来てしまいました。
帰り道が解らなくなり、そのうちまた雪が降り始めます。
激しく降り積もる雪の中、ののちゃんは寒さで震えながら、家に帰りたいと言って泣き出してしまいました。
その時、しゃらららんという鈴の音が。
「わん!」
遠くから犬の声がしました。
力強く、一度。
「誰……にゃん?」
失いかけた意識のなか、遠くからかけてくるその姿を、ののちゃんは見ていたのでした。
胸元に赤いバンダナ。
赤い毛並みの……柴犬の姿。

「もう、大丈夫や。泣かんでええよ。わいがここにおるさかい」
彼は、とっても優しかった……
逞しくて優しい。
そして、冬の寒さにも負けない勇敢な……
「雪がどんだけ降っても、道は必ず見つかるんや。安心しなはれ。必ず家まで送ってったるさかい!』
消えそうになる意識の中、彼のぬくもりが、ののちゃんの小さな命をつなぎ止めてくれたのでした。
ののちゃんは、その柴犬の導きによって、無事に「飼い主」の元に帰ることが出来たのでした。

「あの方……柴犬さんはののを助けてくれた、命の恩人にゃ!名前は……」
何とかその大切な、恩人(恩犬?)の名前を思い出そうとしましたが、どうしてもその名前を思い出す事が出来ません。
ののちゃんの目からポロリと涙がこぼれ落ちました。
「とっても大切なことにゃのに。思い出せないにゃんて!」
床に伏して泣きじゃくるののちゃん。
それを見たちょこちゃんは、優しくののちゃんを撫でながら言いました。
「そうだ!ねぇ、ののちゃん。大切な思い出を返してくださいって、冬のおじいさんにお願いしたらどうかな?」
ちょこちゃんの提案に、顔を上げたののちゃん。
瞳をまん丸にして、少し考えた後に、大きな声で言いました。
「うん!それ、とってもいい考えにゃん。ののちゃんが欲しいもの、お菓子でもおもちゃでもないにゃん。ののの心の中にしまっておいた、大切な思い出にゃん」
「お願い事が決まってよかったね!きっとその思い出は、ののちゃんの元にやって来るよ」
そ言ってちょこちゃんは帰って行きました。
帰り際にちょこちゃん、ちょっとしたアドバイスを残していきました。
「そうそう。ツリーを飾るの忘れないようにね。冬のおじいさんは、アレーナさん達と同じように『光の魔法』を使うんだって。だから、ツリーの光を頼りにみんなの元へやって来るっていう話よ」
「ちょこちゃん、ありがとにゃん。もう、大丈夫だから。『特別な日』にまた会おうにゃん」
やっと元気を取り戻したののちゃん。
その日は、早めにベッドにもぐり込みました。
ののちゃんはすぐに深い眠りに落ちました。
そして真夜中が過ぎた頃。
シャンシャンシャン……
窓の外から柔らかな光がお部屋の中に差し込み、優しい、いつかどこかで聞いた鈴の音が聞こえてきました。
ののちゃんは眠い目をこすりながら、ベッドから出て窓辺に向かいます。
そして。
「にゃんだろ?うにゃあ……だ、誰にゃん?そこにいるのはだ……!」
「しぃ~。みんなまだ寝ているけんね。大きな声を上げんとき」
そこにいた人物は口元に指をあてて「どうかお静かに」と、ののちゃんを制しました。
ののちゃんは目を見開き、そこにいる人物を確かめてみました。
そして。
そこにいたのは──首周りに赤いバンダナを巻いた、赤い毛並みの、立派な柴犬でした。
「あ、あにゃたは……も、もしかして?」

驚きのあまり、言葉が上手く言えなくなったののちゃん。
「わいの名はアンや。よろしゅう頼んますさかい」
窓辺の雪明りの中で、りりしい柴犬の姿を目にしたののちゃん。
やがて、それがかつて自分を吹雪と絶望の中から助け出してくれた、あの恩人だという事に気が付きました。
「あ、あにゃたは!いつか、ののを助けてくれた……」
感動の再会に、ののちゃんの瞳が潤み始めます。
「ああ、もう。泣かんといてや。ほんま、ののちゃんの事、わいも気になってたんよ。あれから、元気にしてはるんやろか、おもてな。これでもわい、心配性やからな」
アンはちょっと困り気味に、指で自分の鼻先を触りました。
しっぽを軽く一振り。
雪灯りの反射で、アンの美しい毛皮は黄金色に見えました。
涙をごしごしと手の甲でふきながら、ののちゃんは出来る限りの笑顔で応えました。
「ありがとにゃん。のの、もう泣かないにゃん。忘れちゃった大事な事、こうして思い出せたから──」
泣き止んだののちゃん。
今度は逆に嬉しくて、胸の奥がじんわり温かくなりました。
涙よりも笑顔がこぼれそうになりました。
「わん」
そこでアンは短く、一度だけ吠えました。
「そこまでや。今夜はな。この続きは、特別な日のために取っときなはれ」
そして、ののちゃんの手にそっと自分の手を添えて「またね」の合図を残すと、その姿は光とともに消えていきました。

「きっとにゃん!きっとまた……」
アンが去って行った後、寂しさを胸に感じたののちゃんでしたが、アンの「きっとまた会える」という言葉を胸に、再びベッドにもぐり込み、深い眠りに落ちていきました。
光が消えた後に残った、アンのぬくもりを手のひらに感じながら。
それから数日間、二匹は部屋に置かれたモミの木に、きらきらしたモールやかわいいオーナメントなど、綺麗に飾りつけをしながら過ごしました。
モミの木は、アレーナさんが用意してくれたものでした。
電脳精霊アレーナさん。
ののちゃんとちょこちゃんを見守る保護者的な存在で、必要な時に姿を現すのです。

「特別な日」が待ち遠しい二匹は、それぞれお願い事を考えました。
一生懸命考えて、二匹はお願い事が決まったようでした。
「ののちゃん、お願い事は何にしたの?」
ツリーの枝に、雪を表現した白い綿を飾りながら、ちょこちゃんがののちゃんに向かって尋ねます。
「えへへ。それは内緒なんだにゃん」
ツリーのてっぺんに、キラキラ星を乗せたののちゃん。

ニコニコ笑って応えました。
「ちょこちゃんは決めたのかにゃ?」
「うふふ。私も内緒。教えな~い」
片目をつぶって応えるちょこちゃん。
やっぱりお願い事は秘密です。
時は過ぎ、いよいよ『特別な日』の前日になりました。
お願いが叶えられるのは、今日の夜中だと教えられたののちゃんは、もうワクワクが止まらなくてたまらない様子でした。
「わぁ~い!楽しみにゃん。お願い事、いよいよ叶うにゃん!」
みんながベッドの中でぐっすりと眠りについた頃、冬のおじいさんはやって来て、みんなのお願いを叶えてくれるのだそうです。
ちょこちゃんは今夜、ののちゃんのお部屋にお泊りです。
今回の特別な日を、いっしょに過ごせることを、二匹は前から楽しみにしていました。
夜のご馳走も、アレーナさんがたくさん用意してくれました。
もちろん、ケーキもありますよ。
二匹は美味しく食べて、楽しく遊んで、そして夜も更けてきた頃、ベッドにもぐり込みました。

(冬のおじいさん、いろんなところを回ってるのかにゃ?ののちゃん待ってるにゃん!お願いよろしくにゃん)
(今夜は、いい夢が見られますように。ののちゃんは明日、きっと
……うふふ)
二匹は最後のお祈りをして、眠りにつきました。
夜は静かに更けてゆき、二匹はぐっすりと眠っていました。
優しい月の光が差し込むお部屋の中に、別な光が輝き始めました。
きらきらとした光の粒子がツリーの星からほとばしり、その光が部屋の中央で形を作り始めたのです。
最初はゆっくり、ゆらゆらと。
それはやがて、ある生きものの姿に変わっていきました。
赤茶の毛皮、ぴんと立った耳、やさしさをたたえたまあるい目。
そして、くるりんと丸まった上品な尻尾。
首周りには、赤いバンダナが巻かれています。
そこに現れたのは、柴犬のアンでした。
アンは、そっと尻尾を揺らしました。
「う……ううん」
部屋の中に光の粒子が拡がったせいか、ちょこちゃんが目を覚ましたようでした。
「眩しいですねぇ。月の光って、こんなに眩しかったかな……おや?」
ベッドから這い出て、ツリーの側に歩み寄ったちょこちゃん。
そこで目にした人物に、一瞬息をのみました。
「あ、あなたは!柴犬のアンさんですね?」
驚きのあまり、ちょこちゃんはつぶらな目をさらにまん丸にして、両手をバタバタさせながら興奮しています。

「しぃー、静かにしてな。そうや。柴犬アンとは、わいの事や。ののちゃんの願いをアレーナはんから聞いてなあ。それで、冬のおじいさん……サンタクロースはんにここまで連れて来てもろたんや」
アンは指を口元に当てると、ちょこちゃんの頭を優しく撫でました。
しゃらんと鈴の音が小さく、一度。
「すごいですぅ。ののちゃんの願いが、本当に叶ったんですねぇ……!」
ちょこちゃんは嬉しそうに、そしてちょっぴり小声で言いました。
ののちゃんは、このことに気が付かない様子で、ベッドでぐっすりと眠っています。
ときおり「むにゃむにゃ、もうお腹いっぱいにゃ」と寝言が聞こえます。
その様子を見ながら、くすりと笑ったアン。
やはりひそひそと、ちょこちゃんに向かって答えます。
「せやけど、今はまだ内緒やで。ののちゃんには朝まで秘密や。今夜は、このツリーの下で休ましてもらうさかい」
そう言うとアンはツリーの下に寝そべると、丸くなって眠りに入りました。
「うふふ。了解ですよ。明日の朝まで、内緒にしておきますね」
そう言ってちょこちゃんも、再びベッドにもぐり込もうとして、何か思いついたようでした。
「良かったら、この毛布使ってくださいね」
ソファに置いてあった毛布をアンにわたして、ベッドに戻っていきました。
そして、一夜開けた朝の事です。
ののちゃんは、窓から差し込んで来た朝の光に、目が覚めました。
「うにゃあ、良く寝たにゃん。あ!そう言えば昨日って確か、冬のおじいさんが来てくれる日だった筈……ののちゃんにも何か……!」
ツリーの置いてあるところまで来て、ののちゃんの足が止まります。
まん丸な瞳が、さらに見開かれていました。
「あ、あ、アンさんだにゃあー!アンさんがいるにゃん!」

驚きのあまり、その場に尻もちをつくののちゃん。
でも、その顔はこれ以上ないほど喜びに満ちていました。
「やあ、ののちゃん。メリークリスマス!わいも、ののちゃんに会いたくてな。アレーナはんとサンタクロースはんに協力してもろうて、ここに来られたんや」
アンは尻尾を左右に一振り、短く吠えて答えました。
「そうにゃん……ののが欲しかった、うにゃ、逢いたかったのは柴犬のアンさんにゃんだ!本当にあの日の事を思い出してから、逢いたいって思ってたんにゃ」
願いが叶ったののちゃんの瞳に、きらりと光るものがありました。
「ほれほれ。今日は楽しいクリスマスや。湿っぽいのは、またにしような」
軽く首をかしげて、困ったような素振りの柴犬のアン。
「はぁ~い!もう、めそめそしないにゃん。今日はみんなで思い切り楽しく過ごすにゃん!」
アンのしぐさに気づいたののちゃんは、涙をそっと払うと笑顔に戻って元気よく返事をしました。

「そうそう。今日はみんなの夢が叶った日。美味しいご馳走もあるし、いっぱい楽しみましょう」
ちょこちゃんは、アレーナさんが用意してくれた、沢山の料理を部屋に運びながら、上機嫌で鼻歌を歌います。
「そう言えば、ちょこちゃんのお願いは叶ったのかにゃ?」
テーブルに運ばれてきた料理を手に、ののちゃんはちょこちゃんにたずねました。
「うん。叶ったよ。今こうしている事……それが、私の願いだから」
その答えを聞いて、ののちゃんはもう一度驚きました。
「ちょこちゃん……」
呼びかけられてにっこり微笑むちょこちゃん。
「ええなぁ。最高やで。今年のクリスマスはなぁ。永遠に忘れることのない思い出になるで」
アンも尻尾を振りながら、みんなの友情をしっかりと確かめた後、力強く、ひと声吠えました。
窓の外では、きらきらした粉雪がゆっくりと、優しく降っていました。

(おしまい)
『作者から、コラボ主様へのお礼』
読者の皆さんフォロワーさん、いつも沢山の応援を頂き感謝しますね。
今回の『光の庭園 ~ののちゃんとゆかいな仲間たち~』聖夜編、お楽しみ頂けたでしょうか。
この作品を通して皆さんの心に響く何かがあったなら、作者の私もとても嬉しいです。
今回の『光の庭園 ~ののちゃんとゆかいな仲間たち~ 』聖夜編は、コラボ主様の温かいご理解とご協力によって完成しました。
物語の中で描かれた「願いが叶う夜」「仲間との再会」「祝福のパーティー」は、まさにコラボの力があってこそ生まれた光景です。
心より感謝申し上げます。
この作品を通して、読者の皆様にも少しでも温かい灯りを届けられたなら幸いです。
なお、作中に登場する「柴犬アン」は、コラボ主・柴犬あん様のオリジナルキャラクターです。
無断での使用・転載などの行為はお控えください。
また作中の「ののちゃん」「ちょこちゃん」「アレーナさん」は、ママンマフィンのオリジナルキャラクターです。
こちらも無断使用、転載はおやめください。
【お世話になったコラボ主・柴犬あん様】
note及びTALESにて、柴犬アンを主人公とする、ワクワクで胸アツな冒険ファンタジーを展開されていらっしゃいます。
柴犬あん
オーシャン・ドックス
さらにYouTubeチャンネルでも活躍中。
是非、ご視聴してみてくださいね。
https://www.youtube.com/@%E6%9F%B4%E7%8A%AC%E3%81%82%E3%82%93
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