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#7 うつ病に効いた運動は?

うつ病から回復するためには

「睡眠」「運動」「朝散歩」が大事だと、

本や動画でよく言われていた。

でも、運動習慣なんて今まで全然なかったし、自分にできることって何だろう…とずっと考えていた。

そのとき、ふと頭に浮かんだのが「プール」だった。

ちょうど7月の蒸し暑い日で、外を走るなんて絶対無理。

でも水の中なら少しは気持ちいいかもしれない。
家の近くに、市民プールがあるのを思い出した。
自転車で10分くらい。利用料は1回250円。

「これなら、お金の心配をせずに続けられるかもしれない」

そんな小さな安心感を抱えて、思い切って出かけてみた。

プールに着いて

プールに入るのなんて、何年ぶりだろう。
正直、少し緊張していた。

「周りに上手な人がいたらどうしよう」
「こんな平日の昼間に、プールでぶらぶらしていて良いんだろうか」


そんな不安が頭の中をぐるぐる回っていた。
中に入ると、夏休み前だったせいか、子どもの姿はなかった。
目についたのは、主婦らしき人や、高齢の方たち。
その光景を見た瞬間、胸の奥にチクリと痛みが走った。

「会社のみんなは、今この時間も一生懸命働いているんだろうな」
「俺は、こんなところで何をしているんだろう」


思わず、自分が情けなく感じた。
でも今思えば、そうやって自分を責めていたのは、まだうつ病の影響で“自己否定の声”が強かったからなんだと分かる。

水の中に入って

プールには「泳ぐレーン」と「歩くレーン」があった。

「久しぶりだし、まずは水中歩行からにしよう」

そう決めて、恐る恐る水に足を入れた。

「冷たい!」

最初の感覚はそれだった。
でも、歩き始めると少しずつ体が温まり、だんだん気持ちよくなってきた。

水の中をゆっくり歩いていると、不思議と頭の中が空っぽになっていった。

「何も考えなくていい」
「ただ歩くだけでいい」


その感覚に、少し安心した。
ここでふと頭に浮かんだのは、自律神経のことだった。

人の体には「交感神経」と「副交感神経」があって、交感神経は活動するときに働き、副交感神経は休息やリラックスするときに働く。

そして、水に浸かると副交感神経が優位になり、心と体が自然にリラックスしていくのだという。

「あぁ…だから、今こんなに落ち着いているんだな」

そう思ったとき、外から蝉の鳴き声がかすかに聞こえてきた。
夏の午後、閑散とした市民プール。
静かで、穏やかで、少し不思議な時間だった。

泳いでみる

しばらく歩いたあと、「少し泳いでみよう」と思った。
ビート板を手に、バタ足をしてみる。

「……はぁ、しんどい!」

思った以上に体力を使う。
次はビート板なしで挑戦。
でも、息が続かず15メートルほどで立ってしまった。

「あぁ、体力落ちたなぁ…」

そう思う一方で、水に浮かぶ心地よさに、なんだか子どもの頃を思い出していた。
昔、子どもたちとプールに行った日の記憶がよみがえり、少し心が温かくなった。

休憩時間

市民プールには1時間に1回、強制的に休憩時間がある。
水から上がり、ベンチに座ると、体が心地よく疲れていた。

「このまま治らなかったらどうしよう」
「復職できなかったら…」
「もし復職できても、自分の居場所なんてあるのかな」


プールの静けさの中で、そんな思いが次々に頭をよぎった。
それでも――

「この休職期間中にクロールで25メートル泳げるようになりたい」

そんな小さな目標を心の中に立てることができた。

帰り道

運動したからか、帰り道はお腹がすごく空いていた。
ここ最近は食欲がなく、味気なく食事をしていたのに、この日は違った。

「うまい!」

ご飯を食べた瞬間、味覚が研ぎ澄まされたように感じた。

体が「生きたい」と言っているような感覚だった。
その後は心地よい疲労感に包まれて、午後はぼんやりと過ごした。

それが、なんだか幸せに思えた。

「この習慣を、しばらく続けてみよう」

そう思えたのは、プールの水の心地よさと、わずかな達成感のおかげだった。

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