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【テレビ】山田太一が書いたOLドラマの元祖にして真打「想い出づくり。」

先日投稿した田宮二郎(敬称略/以下同じ)主演の『高原へいらっしゃい」の再放送に引き続いて、同じく山田太一作品である『想い出づくり。』が放送されているので、そのお話。


1.『北の国から』を凌駕した、昭和56年のリアリティ

あまりにも有名な話だが、このドラマは倉本聰のフジテレビドラマ『北の国から』の裏番組として放送されていた。視聴率的にはどちらが取っていたのかというと、どうもこちらの『想い出づくり。』の方が上だったようだ。リアルタイムで途中から視聴した私も、あっちよりこっちの番組を見ていた方である。

男の添え物、23歳で結婚するのが当たり前だった1981(昭和56)年に、結婚に焦りつつも、現状に満足しきれない3人の女性の姿を描いたのが本作だ。物語は、海外旅行に行かないかと誘うアンケート調査員の根本典夫(柴田恭兵)にだまされ、説明会(社長が浜村淳だった)に行ってお金を支払うところから始まる。

旅行会社が計画倒産し、3人が典夫を探し出してとっちめるが、逆に「海外旅行に行くことでしか思い出作りできないのか」とやり返され、ショックを受けて自分達の人生を見つめ直すところから、ストーリーは大きく展開していく。

このドラマの秀逸な点は、3人が職場の同僚ではないという設定にある。ロッテのガム工場に勤務するのぶ代(森昌子)、親のコネで入った町役場を退職して上京し、ロマンスカーの販売員をする久美子(古手川祐子)、短大を出て商社の一般職として働く香織(田中裕子)という、異なる階層の女性たちだ。

そして、彼女たちの家族構成と収入に応じた部屋がリアルに設定されている。両親、弟と下町に住むのぶ代。一人暮らしの久美子、香織のアパートの調度品は、久美子と香織の収入(恐らく商社に勤める香織の方が給料が高い)に見合ったものが設定されているのだ。

これは後に流行した「トレンディドラマ」(フジテレビ系列)の時代に量産された女性ものドラマとの決定的な違いだ。後発のドラマは、どの作品も家のセットがいかにもタイアップで、このOLの収入で借りられるマンションじゃないだろうと思うようなものばかりであった。山田太一ドラマは、小道具一つまでリアリティを追求している。

2.ストッキングと三者三様の愛の形

このドラマが優れていたのは、会話や行動の端々に、当時の日本社会の機微と親子の情がさりげなく織り込まれていた点だ。

何話目か忘れたが、久美子宛に送られてきた両親からの宅配便のエピソードが印象的だ。荷物の中に、ストッキングが数足混じっていた。立ち仕事の久美子は恐らく、ストッキングを何足も伝線させるに違いない。3足組598円だとしても、結構な出費になる。そういうところに、母の優しさみたいなものがさりげなく織り込まれているのがすごくよかった。言葉に出さず、そっと送る親の姿が想像できる。想像させるストーリーなのがよい。

ドラマは、意にそわない見合いを強いられるのぶ代、こともあろうに詐欺師の片棒を担いだ典夫と同棲する久美子、上司に勧められたエリートと交際しつつも、その上司とはずみで不倫する香織と、三者三様の人生が進んでいく。

また、脇役陣のキャスティングも絶妙だ。東京キッドブラザーズ時代の柴田恭兵、そして、つかこうへい作品の常連だった加藤健一の演技も印象的だ。

特に加藤健一は、割に合わない、男尊女卑的な三枚目を演じていたが、本来はものすごくナイーブな俳優で、この作品の次に『金曜日の妻たちへ』の第一作目にも出ていた。田辺聖子原作のフジ系列木曜ドラマ『窓を開けますか?』で松坂慶子扮するハイミスOLに惹かれる医師の役もすごくよかった。

舞台専従俳優になって久しいが、1980年代前半は個性派俳優として映画『麻雀放浪記』にも出演していた。ぜひまた映像作品に出てほしい俳優の一人だ。

ナレーターは、当時『西部警察』と掛け持ち中だった久美子(古手川祐子)がつとめていたが、香織(田中裕子)の醸し出すアンニュイな雰囲気が、このドラマで独特の空気を放っていた。

そして、のぶ代の両親(前田武彦と坂本スミ子)、久美子の両親(児玉清と谷口香)、香織の両親(佐藤慶と佐々木すみ江)という、家族構成のキャスティングもまた絶妙である。

児玉清は山田太一作品の常連であり、佐藤慶がステテコ姿でご飯を食べるお父さん、佐々木すみ江はこの後『ふぞろいの林檎たち』に連続登板するなど、手堅いベテラン俳優陣が脇を締めていた。これがドラマに厚みを与えていたのはいうまでもない。

3.父たちの喧嘩と山田太一の遺産

私がリアルタイムで見たのは、クライマックスの結婚式場の立て籠もりの回だった。結婚式数日前の描写から始まり、立て籠もるのだが、男女雇用機会均等法がない時代、地味にコツコツ頑張る娘たちが自己主張する(それが間違った手段であっても)辺りは、年下の私でも共感させられた。

そして、娘たちの後始末で集まった3人の父親たちの描写こそが、このドラマの最高の見せ場だ。久美子と香織の父親である児玉清と佐藤慶が料亭でつかみ合いのケンカになるのだが、その時に放たれる前田武彦(マエタケ)のセリフは何度再生しても爆笑ものなので、今回のBS-TBSの再放送ではそこにぜひ注目してほしい。マエタケのセリフが、重くなりがちな物語を一気にコメディへと引き戻す。

現在、森昌子は二度目の引退で、古手川祐子もセミリタイア状態、田中裕子は好きな仕事を選んだマイペースな仕事ぶりだ。田中裕子の老け役を厭わない姿勢は買うが、このドラマと映画『天城越え』『夜叉』で見せた独特の雰囲気が好きなので、もう一度、年齢を重ねた者同士の恋愛ドラマなどに出演する彼女が見たいと強く願っている。

このドラマがその後、OL3人ものに与えた影響は恐らく絶大だ。

日テレが類似品として4人の女性が出てくる『25才たち・危うい予感』を制作し、本家のTBSも古手川祐子を5年後に金ドラ再登場させた柴門ふみ原作の『女ともだち』を放送した。その後のフジテレビ系列のトレンディドラマ辺りは、恐らくこの作品をトレースしたと思われるが、セリフと両親たちの描写が秀逸な山田ドラマには勝てなかった。

この作品がデビュー作の田中美佐子(当時は美佐)のインパクトも忘れ難いし、おまけ的なエピソードとして、根津甚八が出てくる辺りもご愛敬のドラマだが、40年以上経っても色あせない、まさしくOLドラマの元祖にして真打だと断言できる面白い作品である。

※本文中の登場人物・団体等は敬称略です。


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