今日は夫の【迎えに来てくれたこと】に恋をした。― 7月最初の夜、バイクの後ろで。― |2026.07.01
はじめに
このエッセイは、
国際結婚と、海外生活と、マルチリンガル育児の中で、
私が日々つまずきながら、
「わたしらしく生きる」ための実験の記録です。
「毎日、夫に恋する生活を。」
2026年の元旦に、そう決めて、
「今日の夫の好きなところ」を、
一つだけ、言葉にしています。
それだけで、同じ一日が、
少し違って見えることがあります。
完璧な妻でも、理想的な母でもありません。
それでも、結婚と子育てを通して、
女性として、妻として、母として、人として、
成長していきたいなと。
今日もこの記録が、
誰かの生活の中の、
小さな呼吸になりますように。
「今週、ナニーさん頼んでおいたから」
7月1日の朝、
夫がそう言った。
今月私たちは1ヶ月の長期の休暇にはいる。
というのは、週末から3週間にかけて夫の実家に帰省する予定だ。
だから、息子の幼稚園も1ヶ月お休みをとった。
分かってはいたけれど、
私の側には片づいていない仕事と、
オンラインのミーティングが
いくつも残ったままだった。
夫も今日は、まだ会社に出勤。
「今週ちょっときついかも」と
状況を少し話しただけだったのに、
夫は何時から何時まで来てもらうか、
その間に何をお願いするかまで、
全部アレンジし終えていた。
仕事がある時間に来てもらう。
その形にしてくれたおかげで、
私は朝から安心して
画面の向こうに集中できた。
午前を仕事に、午後を息子に
海外で子育てをしていると、
「預ける」という選択に
うしろめたさがついてくることがある。
自分の仕事のために
息子の時間を削っている気がして、
私はずっとそこが苦手だった。
でもこの日は違った。
午前中にちゃんと仕事を終えられたから、
午後は全部、息子の時間にできた。
削ったんじゃなくて、
分けただけだった。
昼過ぎには、
夫が休憩時間に一度家に帰ってきた。
様子を見に来てくれただけなのに、
その30分か1時間のあいだに、
私は自分のことをする時間まで持てた。
仕事の時間があって、
息子との時間があって、
自分の時間もある。
こんなに贅沢な一日の使い方は、
久しぶりだった。
何度も何度も話し合いを続けてきた結果が少しづつみえはじめた。
「家から5分だし、来ない?」
夜、息子を寝かせたあと、
夫は近所へ出かけていった。
すぐ近くに夫の仕事仲間が住んでいて、
その家で誕生日会があるという。
出かけて30分か1時間くらい経ったころ、
夫からメッセージが来た。
「家から5分だし、来られそうなら来ない?」
行こうかな、と返したら、
夫はすぐにバイクで迎えに来てくれた。
ダナンの夜は、
バイクの後ろに乗ると、
昼間の熱がすこしだけ抜けた風になる。
たった5分の距離。
「来たかったら来れば」で
済んだはずの距離を、
わざわざ戻ってきてくれた。
着いてみたら、
誰かがギターを持ち出して
即席のライブが始まっていて、
庭ではバーベキューの煙が上がっていた。
国籍もばらばらの人たちが、
ビール片手に
英語とベトナム語を混ぜながら喋っている。
これがダナンの夜だな、と思った。
「じゃあ、一緒に帰ろう」
結局、私は2時間ほどで
眠たくなってしまった。
そろそろ帰ろうかな、と言ったら、
夫は「じゃあ一緒に帰ろう」と言って、
その場をあっさり切り上げた。
まだ音楽は続いていたし、
夫はその輪の真ん中にいた人だった。
呼ばれるだけだったら、
私はきっと行かなかったと思う。
息子は寝ているし、
準備も面倒だし、
やめておこう、で終わっていた。
でも、迎えに来てくれた。
そして、帰ると言ったら、
一緒に帰ってくれた。
海外で子育てをしていると、
夫婦のどちらかが
外の世界に馴染んでいて、
どちらかが家の中に残る、
という形になりやすいなと思っています。
言葉が通じる側と、通じにくい側。
誘われる側と、待つ側。
その差は、
放っておくと静かに開いていく。
この日、夫がしてくれたのは、
その差を埋める作業だった気がします。
一日の始まりに、
私が仕事をできるように整えること。
一日の終わりに、
私を輪の中に連れていくこと。
そして、私が帰ると言ったら、
自分の楽しい時間より先に、
一緒に帰ることを選ぶこと。
派手なことは何もしていない。
でも、置いていかれなかった、
という感覚だけが
一日の終わりにちゃんと残っていました。
今日の夫の好きなところ
【迎えに来てくれたこと】
家から5分の距離を、
わざわざバイクで戻ってきてくれた。
「来たかったら来れば」ではなく、
「迎えに行くから」だった。
そして帰りたいと言ったら、
音楽の途中でも一緒に帰ってくれた。
朝は仕事ができるように整えてくれて、
夜は輪の中に連れていってくれた。
一日の両端に、
置いていかない、が置いてあった。
今日の夫の好きなところは、
【迎えに来てくれたこと】。
▼ 「成長させてくれるところ」昨日の話はこちらに。
▼ このシリーズを最初から読む。
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