「在宅でも働ける」――発達っ子ママライターがnoteで語る、仕事術のリアル
10歳と7歳、2人の子どもを育てながら、フリーランスのライターとしてもうすぐ6年目を迎える田辺さえこさん。特別支援学校に通っている下の子の送迎や療育に合わせ、在宅ワークという働き方を選びました。「根性論」と語る下積み時代を経て、今では月収6桁を安定的に稼ぎ、ライターのみにとどまらずディレクターやキャリアメンターとしても幅広く活躍しています。
そんな田辺さんに発達っ子を育てるママが在宅ワークを選んだ理由、そして続けることで得た「世界」についてお話を伺いました。
田辺(たなべ)さえこ
京都出身、滋賀県在住のWebライター。SEOライティングの執筆から編集、ディレクター、メンター業やキャリア面談など幅広く活動中。現在は地域の店舗やイベントに関する記事や、SNSの発信など新しい働き方にもチャレンジしている。
note / X
「フルタイム正社員は無理やな」――発達っ子ママを取り巻く働き方の現実
――noteで「発達っ子ママの仕事術」を発信しようと思ったのはなぜですか?
田辺:「ライターで稼ぐ方法」でもよかったんですけど「ハンデのある子どもを育てながら、在宅で稼ぐ方法」を書いている人をあまり見かけないなと思ったのが最初のきっかけです。
でも、noteを見ていたら、発達障がいを持つ子どものお母さんが、書き殴るようnoteに気持ちを綴った記事を見かけるんです。なかには「療育通い始めたけど意味あるの?」みたいな葛藤を書いている人もいて。その気持ちがよくわかるんですよ。私も子どもと療育に通った期間が長いので、そういう方が私のnoteを読んで、ホッとできたらいいなと思っています。
――田辺さんが在宅で働こうと思ったきっかけは、何だったんですか?
田辺:最初は夫が勧めてくれたのがきっかけです。でも続けてきた理由は、やっぱり発達っ子ママっていうところが大きいですね。療育に通うとなると、絶対に仕事を半日休まなきゃいけないという場面が出てくるので。
あと、特別支援学校に通うようになって気がついたんですが、娘が通う学校はバスのお迎えが8時半なんです。普通だったらもう始業している時間じゃないですか。それから仕事に行くとなると、間に合わないですよね。
――確かにそれだと、正社員は難しいかもしれないですね。
田辺:知り合いのお母さんから「フルタイムは無理やな」という話を聞いて「あ、やっぱり難しいんや」と思いました。それなら、私はフリーランスで続けたほうがいいのかなって。時間調整ができるし、自分の好きなときに働けるっていうのは、やっぱり大きいです。
――正社員が無理なら、パートで働こうとは思わなかったんですか?
田辺:まったく思いませんでした。私が住んでいる地域では、外で働きに出ようとすると、選べる仕事が限られているんです。レジ打ちとか、ゲームセンターのスタッフとか。本当にそれくらいしかないんですよ。もう少しやりがいのある仕事がしたいと思ったので、在宅で働くことを決めました。
――在宅ワークを選んでよかったと思うことは何でしょうか。
田辺:時間の融通が利くところですね。子どもたちに何かあったときにすぐ迎えに行けます。会社や勤め先に「子どもが熱で」と謝らなくて済むのは大きいです。
それから下の子を放課後デイサービス(放デイ)に入れなくても、なんとかなる、というのもあります。ほかのご家庭は、子どもが小学生になる前から一生懸命探しても、空きがなくて大変そうでした。私は在宅で働いているので、何かあったときには迎えに行けるし、急いで利用しなくてもいいかなと思っています。
あと、人間関係がわずらわしくないとか、年齢を重ねてからでも働けるとかいうのも、在宅で働く魅力です。
言われたら「できます」と言って必死にやる――在宅で稼ぎ続ける発達っ子ママのリアルな働き方
――田辺さんはライターとしてもうすぐ6年、安定して仕事を続けているということですが、心がけていることはありますか?
田辺:当たり前のことを当たり前にやる、ということですかね。納期を守るとか、文章の細かい書き方を守るとか。自分がディレクターの仕事をしているときに、納期や書き方を守れないライターさんに、同じ指摘をしてうんざりすることがあるので、その辺は気をつけています。
あとは基本的にすべて「イエスマン」でやっています。「何でもやります」みたいな。
――「イエスマン」とはどういうことでしょうか。
田辺:何か仕事を打診されて「これできますか?」って声をかけられたら、いったん「できます」って言います。「できない」と言ったらクライアントさんを逃してしまうんじゃないか、次が来ないんじゃないかと自信がなくて不安だったんです。今でも問い合わせが来たときに、難しいと思うところがあったら「ここの知識はないんですけど、やらせてもらえませんか?」と相談しながら仕事を進めています。
――根性論ですね。
田辺:そうです。令和の時代には全然そぐわないんですけど(笑)。私はもうずっと根性論でやってきました。だから人にすすめられない!同じことを人にやらせたらパワハラですよね。でも私はずっと寝ずにやってきた人間なんです。
――「子どもが寝たあとで仕事が始まる」って、noteに書かれてますもんね。
田辺:はい。子どもが寝た夜の11時半から仕事を始めて、明け方に起きてきた上の子を見て「え?もうそんな時間?」みたいな。こんなことが普通にありました。
子どもと一緒にお昼寝をしながら仕事を続ければよかったんでしょうけど、下の子から目が離せなかったんです。鍵を開けて、勝手に玄関から家を出て行ってしまうことがあって。だからぐっすり昼寝もできませんでしたね。
そんな状態だったから、徹夜で仕事をする状態を抜け出さなきゃって、いろいろ調整しました。仕事の調整をして単価を上げたり、時間がかかる仕事を断ったり。
――仕事を探している発達っ子ママのなかには「在宅では稼げないんじゃないか」と感じている人も多そうですが。
田辺:今稼げている人って「何があっても続けている」だけなんですよね。私も、それしかないと思っています。これまでライターだけではなく、キャリア支援のメンター業にも携わってきました。そのなかで「やります」と言いながら、結局案件の応募ができずに「稼げなかった」と言って辞めてしまう人がけっこういます。
もちろん運やクライアントとの巡り合わせも、あるとは思います。でも続けることだけは、スキルがなくても初心者でも、誰にでもできることなので、とにかく稼ぎたいなら続けてほしいです。
6年目にして気づいた「ライターって楽しい」
――根性論でずっとお仕事をされてきたということですが、楽しいと思うことはなかったのでしょうか?
田辺:実は私、ずっと「ライターって楽しい仕事なのかな?」と思っていました。書いた記事がクライアントの売り上げに貢献できていればいいんですけれど、結果が出ないこともあります。なのに「お金だけもらっても大丈夫なのかな」って気になっていたんです。
あと、文章を書く仕事といっても、自由に書けるわけではなく、検索上位表示を狙って決められたことを書くことが多かったので、書く楽しさよりも「与えられたことを淡々とこなす」感じでしたね。
でも、ライターを目指す方のキャリア相談に乗ったり、記事にフィードバックしたりするなかで、考えが変わりました。不安を抱える人と向き合ううちに「私はクライアントのために、書くこと自体を楽しんでいたんだ」と思っていたことを思い出したんです。
面談のなかでも「ライターっていい仕事だよ」と胸を張って伝えられていた自分に、面談が終わってから気がつくこともあります。6年目にしてようやくこの仕事の楽しさを実感しているんです。
私の仕事は、娘の未来を支える「土台」作り。「社会から切り離された」と感じるママへ
――在宅ワークを続ける田辺さんが、将来的にやってみたいことはありますか?
田辺:娘が大きくなったとき、一般企業で働くのは難しいかもしれないと思っています。そうなると、作業所に就いたり、職業訓練を受けたりする道になるのかなと。
私はWebのスキルを持っているので、そういう働き方をしている娘のために、ホームページを作って紹介してあげられるんです。たとえば、娘がお料理などできるようになったとき、作ったものを発信したり集客したりして、何かしらのお手伝いができると思っています。「娘の将来のためにできること」を考えたとき、今の仕事を続けていれば、その土台になるかもしれないと感じています。
――最後に、これから在宅で働こうとしている発達っ子ママへメッセージをお願いします。
田辺:発達っ子を育てているご家庭って、健常児よりもハプニングだらけだと思うんですよ。目が離せないところもあるし、何やるかわからないし。でも子どもが学校に行ったら日中はママだけの時間が持てると思うんです。その時間を使って家で仕事をすれば、何かあったときでもすぐに迎えに行けます。
子どもとの意思疎通がうまくいかず、「このまま子どもの面倒を見て一生過ごすのかな」と不安になったり、社会から切り離されたように感じたりする発達っ子ママは多いと思います。私もその1人でした。
でも、フリーランスで働き始めてから、コミュニティや仕事を通して仲間と出会えたり、オンラインで人と話す機会が増えました。自分が選んだ仕事を、好きな人たちと一緒に続けられるというのは、すごく素敵だなって思うんです。
もし今、子どもにハンデがあることを理由に「社会と距離を感じている」お父さんやお母さんがいたら、ほんの一歩でいいので、踏み出してみてほしいと思っています。
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田辺さんのお話を伺って印象に残っているのは「納期や決まりを守る」当たり前を徹底することの大切さでした。毎月安定して6桁の収入を稼ぎ続けるには、クライアントからの高い評価と信頼が欠かせません。ハンデを持つ子どもを育てながら、それを何年も継続できるのは、容易なことではないはずです。田辺さんはそれを「根性」と表現しましたが、そこにあるのは家族を守るために頑張るママの姿でした。
そんな彼女のnoteには、発達っ子のママとして、プロのライターとして、悩みながら歩み続けてきた渾身の想いが綴られています。彼女と同じように「働きたいけど働けない」と悩むママたちにとって、希望の光になるだろうと感じました。
取材・執筆:金沢美和
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