我にその首を差し出すのじゃ。【我が家の卒乳記】
「我にその首を差し出すのじゃ」
そんな物騒なセリフがぴったりの、悪逆非道?な行いをしていた暴君は、我が娘、まる(仮名)である。
かつて彼女は、近づく者の“首”を片っ端から奪っていく、大層なワルだった。
ただし、ここで言う“首”とは、乳首のことである。
母と子の、はじめての別れ
まるは完全母乳で育った。
出産直後から母乳の出には恵まれ、欲しがればいつでも、好きなだけ与えることができた。
授乳、それは親子ふたりにとって、安心と信頼の営みだった。
けれど生後9ヶ月で保育園入園が決まり、卒乳の時がやってきた。
夜中に目を覚ましては「母乳」を求めて泣く娘。
その泣き声に、私の方が泣いてしまった。
寂しくて、親の都合で強制的に卒業させることが申し訳なくて、そういった色んな感情がごちゃ混ぜになって、どうしても涙が止まらなかった。
しかし、そんな泣きじゃくる私の姿を見て、娘が“逆に引いた”ような気配があって、思ったより早く卒乳することができた。
今思えば、親が子よりも泣きまくるという戦法?が案外スムーズな卒乳の鍵だったのかもしれない。
掴んではならぬ、それは秘めたる首
だが、まるはまる。ただでは終わらない。
乳首を“吸う”ことは卒業しても、今度は“掴む”ことで精神の安定を保とうとするようになった。
抱っこすれば、その人の服の襟元からズボッと手を入れ、狙うは乳首。
止めなければいけない。
そう、頭ではわかっていた。
でも、無理に卒乳させた負い目が、私をためらわせた。
しかし、それがよくなかった。
まるの執着は加速し、ついには誰の乳首でも掴みにいくようになったのである。
性別も年齢も関係ない。乳首があれば、それはすべてまるのもの。
抱っこしてくれる人の胸元に、
平等に、無差別に、まるの手は伸びていった。
「我にその首を差し出すのじゃ」
そう言って、“乳首”を片っ端から掴んでいく、大層なワルな、まるが爆誕したのだった。
くたびれた襟首の義父にカンパイ
私が職場復帰したばかりの頃、まるは初めての集団生活により、ウィルスを一気に身体に浴びたのか、体調を崩すことが多かった。
最初は夫婦二人で対処していたが、それではまわらなくなって困り果てた。
そんなとき、頼ったのが義理の両親だった。
すでに仕事を引退していた義父が、朝早くから我が家に来てくれた。
まるをあやし、抱っこし、家で一日を共に過ごしてくれた。
無口で真面目。だけど孫の扱いには慣れていて、
必要なことを静かに、的確にこなしてくれる。
まるが泣けば、ずっと抱っこしてあやしてくれていた。
本当に、本当にとてもありがたかった。
・・・しかし、ここでみんな思い出してほしい。
まるは老若男女問わず、全ての乳首を掴みにいく、大層なワルだということを。
ある日、仕事から帰った私が、義父にその日のまるの様子を聞く中で、聞かなくてもいいことまで、つい尋ねてしまった。
「お義父さんも・・・掴まれました?」
義父は静かに笑って、こう言った。
「今日はずっと抱っこしてたから、そういうことになるね」
見ると、彼のシャツの襟元が、ぐったりと伸びていた。
そのときの義父の表情、
困ったような、それでいてどこか慈愛に満ちた顔を、私は今でもはっきりと覚えている。
・・・本当に義父の優しさには、完敗。いや、乾杯。
まる、9歳になる
あれからまるは、すくすくと育った。
今月、9歳になる。身長は148cm。なかなかのビッグサイズだ。
そういえば、生まれたときも3500グラムを超えていたっけ。
卒乳後もミルク好きは変わらず、
週に5本の牛乳を飲み干す勢いで、今日も元気に過ごしている。
彼女は母乳とコープの牛乳で大きくなった。
いつも誰かに聞かれたらそう答えている。
そして、多くの人の大事な何かを奪っていった、あの「乳首執着期」は、成長とともに自然と終わりを迎えた。
面白いことに、当の本人はまったく覚えていないという。
でも、私は忘れない。
くたびれた襟首と、あのとき義父が見せた表情を。

今回は、パンダイブさんとくいたろうさんの卒乳記事を読んで、突如巻き起こった“卒乳記ブーム”に乗るべく、我が家が長年秘匿していた「暴君記」なる書物の一部を公開することにしました。
【追記】
このお話をとても気に入ってくれた方から、
「”ママはテンパリスト”みたい」と言っていただきました。
そう言われて調べてみたら、一巻の表紙がこの記事の見出し画像と似てました!!やはり、子どもは暴君になりがちなのかな?🤣
このマンガは今上映をしている映画【かくかくしかじか】の作者・東村アキコさんの育児エッセイまんがです。本当に笑えます。
育児系の笑える漫画をお探しなら、この漫画をおすすめします!!
私もまだまだ育児中のエピソードあるので、また記事にしたいと思います😁
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