【映画感想メモ】『ファーストキス 1ST KISS』愛おしい日々のミルフィーユのなかで
【坂元裕二脚本 ✕ 塚原あゆ子監督 ✕ 松たか子主演】という最強の布陣で、こんなの面白くないはずがない!と期待値を上げまくって公開を心待ちにしており、さっそく公開初日のレイトショーへ駆け込んで観てきました!
結論、めっちゃくちゃ良かった……。途中からぼろぼろに泣いてしまった。
年始からイベント続きで映画館に行けておらず本作が2025年の劇場鑑賞作品としては1本目なのですが、すでに今年ベスト候補な気がしています…!
わたしもそうだったのですが、できる限り前情報を入れないほうが絶対に楽しめると思うので、まだ観ていない方はまず今から映画のチケットを取ることを強く強くおすすめします!!!!
あらすじ
結婚して15年になる夫を事故で亡くした硯カンナ。夫の駈とはずっと前から倦怠期が続いており、不仲なままだった。第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルする手段を得たカンナは過去に戻り、自分と出会う直前の駈と再会。やはり駈のことが好きだったと気づき、もう一度恋に落ちたカンナは、15年後に起こる事故から彼を救うことを決意する。
感想
※核心には触れませんが、ストーリーに踏み込んだ内容を含みます※
坂元裕二脚本の新境地
「夫の死を回避するためにタイムトラベルを繰り返す」なんてこれまでに様々な作品で使い古されたn番煎じなストーリーで、一見「THE 邦画ラブストーリー!」な映画な印象を受けてしまう本作(予告もそんなつくりで、ちょっともったいないと思ってしまう…!)。そもそもで"日常の会話劇"を中心に描いてきた坂元裕二が、非日常なタイムトラベルものの脚本を書くことにも少し驚きがありました。
でも、ここはやはり流石の坂元裕二。タイムトラベルものとしての面白さもありながら作家性も遺憾なく発揮されていて、ああ、タイムトラベルものも坂元裕二の手にかかるとこんな作品になるんだ…!!!と感激。皆が大好きな坂元裕二っぽさもありつつ、同時に新たな魅力もふんだんに詰まっている作品だと感じます。
よくよく冷静にプロットだけを振り返れば "出会ってすぐに相手に好意を抱く" だったり "タイムトラベルのことをすんなり受け入れる" というシチュエーションは無理があるな…?ということに気づくのですが、観ているときはまったく、本当にまーーったくそんなこと気にならなかった。突拍子もない展開ではあるのに決してトンデモラブストーリーにならないのは、この脚本だからこそ。
序盤で出てくる「過去と現在と未来は同時進行で起こっていて、ミルフィーユのように同時に存在している」という考え方。『大豆田とわ子と三人の元夫』でも似たような台詞がでてきましたが、この考えがこの作品の根本にあって、だからこそ"例え違う時間軸に存在する者同士であっても、この二人が惹かれ合うのは自然なことなんだ"、と観ている側も自然に受け入れられるのかなと思います。
主演二人の演技の凄さ
ベタな展開でありながら決して安っぽいラブストーリーにならないもう一つの大きな要因は、間違いなく主演お二人の演技だと思います。可愛らしくて愛おしいキャラクターの魅力を存分に引き出す演技で、ずっと二人のことを見ていたくなる。
アラサーに見える松たか子・40代半ばに見える松村北斗、どちらも凄すぎる。二人が同世代の恋人/夫婦のシーンも全く違和感なかったし、タイムトラベル中の年齢差があるシーンであっても、二人の関係が縮まるにつれて段々とその年齢差を感じさせなくなっていくようなグラデーションも素晴らしかった…!
坂元脚本作品といえば!な松たか子はもちろん、それに決して引けを取らない松村北斗の演技も素晴らしすぎた。坂元裕二作品あるあるな"不器用でめんどくさくて愛おしいキャラクター"を松村北斗が見事に演じていて、また新たに坂本作品に合う俳優さんが見つかったなあと嬉しくなりました。
演技面で特に凄いなと感じたのは、終盤で二人で対話するシーンで駈の口調や態度が段々とほぐれていくところ。あと、ラストの声の演技。2024年映画ベストで個人的に1位だった『夜明けのすべて』での演技も素晴らしかったですが、また新たな魅力が見れたなあと感じました。
映画を振り返って感じたこと
結局、夫婦をはじめ人間関係はお互いの歩み寄りの積み重ねで継続できるもので。
相手とのささやかな日常をずっと大切にすること。言葉で伝えることを厭わないこと。意地をはらずに相手に向き合うこと。お互いにそういう意識をもって寄り添い続けることができれば、きっとずっと良い関係を継続することはできるんだと、改めてその大切さをしみじみ感じました。当たり前のことを当たり前にするには、当たり前のことをしっかり積み重ねることだなって。
坂元裕二がこれまでずっと、何気ない生活や会話のなかにあるドラマを魅力的に描いてきた人だからこそ、ここのメッセージがぐっと胸に来ます。
そして、たとえ結果は同じであっても、その過程がどうであったかで自分の心や世界は180°変わるのだということ。終わりを意識するかしないかで、その過程をどう生きるかも違ってくるなと思ったので、月並みではあるのですが、いつか必ず終わりがくること・そしてそれは今日かもしれないこと、をできるだけ意識しながら、毎日を大事に紡いでいきたいなと思いました。
ifの世界も完全に分岐されたパラレルワールドではなく、何層にも重なった時間軸のひとつでしかなくて。常にあらゆる可能性がミルフィーユのように重なっているから、そのなかでできるだけ自分の世界を最善にしていけたらいいな。
「寂しさ」の解釈もすごくすごく好きで、坂本脚本の新たに好きな台詞のひとつになりました。
あと、餃子とか靴下とか、キーとなるアイテムの使い方もすごく良くってね…!!!ああ、すべて知ったうえででもう一度観に行きたいな。
夫に対して改めて感謝の気持ちが溢れたし、一緒に過ごせる時間をもっともっと大切にしていきたいと強く思いました。いつか終わりが来てしまったとしても、そのときにちゃんと寂しく思えるように。
坂元裕二作品を観るたびに思うのですが、彼と同じ時代に生まれることができて本当によかった…!
4/4公開の『片思い世界』もめちゃくちゃ楽しみです!
[鑑賞メモ]
2025/02/07 ローソン・ユナイテッドシネマ Screen12(H-16)にて
(ど真ん中・スクリーンとの距離や目線の高さもちょうどよくベストポジションだった◎)
