エルグランド16年ぶりの復活——日産はアルファードに勝てるか
2026年5月、日産エルグランドが16年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。
現行モデル(E52型)が登場したのは2010年。それから16年間、ほぼ手を加えられないまま販売され続けた。その間にミニバン市場は大きく変わり、トヨタ アルファード/ヴェルファイアがフラッグシップミニバンの王座を完全に固めた。
自動車業界で仕事をしながら、日産のミニバンの変遷を見てきた立場から、この復活をどう見るかを書いておきたい。
【エルグランド全盛期——押し出しの強いいい車だった】
かつてのエルグランドは、存在感のあるクルマだった。
1997年に登場した初代エルグランドは、それまでのミニバンのイメージを塗り替えた。ボンネットを持つキャブオーバー型ではなく、セダンのような堂々としたフォルム。大きなグリルと押し出しの強いフロントフェイス——「ミニバンはファミリーカー」という概念を壊し、所有欲を刺激する高級感を持ち込んだ。
当時のミニバン市場を振り返ると、面白い流れがある。トヨタのエスティマがスライドドアのミニバンとして人気を確立し、その市場にエルグランドが参入した。日産はエルグランドで「高級ミニバン」というカテゴリーを切り開こうとした。
あの頃のエルグランドには、独自のオーラがあった。駐車場に止まっているだけで目を引く存在感。大きなミニバンに乗ったことはないが、エルグランドは「かっこいいミニバン」として記憶に残っているクルマだ。
【アルファードに逆転された理由】
しかし、2002年にトヨタがアルファードを投入してから、勢力図が変わり始めた。
アルファードは、エルグランドが切り開いた「高級ミニバン」というカテゴリーに真正面から参入した。トヨタのブランド力、販売網の強さ、そして定期的なモデルチェンジ——これらが積み重なり、アルファードは高級ミニバンの代名詞になっていった。
エルグランドがモデルチェンジをしなかったことが、最大の敗因だったと思う。2010年に現行モデルが登場してから、アルファードは2015年に3代目、2023年に4代目へとフルモデルチェンジを繰り返した。その間、エルグランドは16年間ほぼ同じ姿のまま販売され続けた。
業界で仕事をしていると、モデルチェンジのタイミングが販売に与える影響の大きさをよく理解している。クルマは新型が出るたびに話題になり、販売が回復する。その機会を16年間逃し続けたエルグランドが、アルファードに水をあけられたのは必然だったと思う。
もう一つの要因は、日産がセレナに注力したことだ。エルグランドより手頃な価格帯のセレナは、e-Powerを搭載してヒットした。日産のミニバン戦略の重心が、エルグランドからセレナに移っていったように見えた。
【1.5リッターe-Power——新型の戦略】
新型エルグランドで注目したのは、1.5リッターのe-Powerを搭載した点だ。
e-Powerは日産独自のシリーズハイブリッドシステムだ。エンジンは発電専用に使い、モーターだけで駆動する。エンジンの排気量が小さくても、モーターのトルクで力強い走りを実現できる。
e-Powerなら戦えると思う。1.5リッターという数字だけ聞くと「小さすぎる」と感じるかもしれない。しかし、e-Powerの特性を理解していれば、その懸念は薄れる。モーター駆動の滑らかな加速、静粛性、燃費の良さ——高級ミニバンに求められる要素と、e-Powerの特性は相性がいい。
エクストレイルでe-Powerの四駆システムが好評を得ている実績もある。そのノウハウをエルグランドに活かした形だ。技術的な方向性は正しいと思う。
【アルファードに勝てるか】
問題は、技術だけでは逆転できないということだ。
アルファードはすでに「高級ミニバンといえばアルファード」というブランドイメージを確立している。法人需要、VIP送迎、富裕層のファミリーカー——アルファードが獲得したユーザー層は、簡単には動かない。
エルグランドが勝負できる土俵は、「アルファードではない高級ミニバンを選びたい」というユーザー層だ。かつてのエルグランドファン、日産ブランドに愛着のある層、e-Powerの技術に共感するユーザー——そういった層に向けて、エルグランドらしさをどう打ち出すかが鍵になる。
16年のブランクは大きい。しかし、復活のタイミングとしては悪くない。アルファードの価格が上がり続けている今、エルグランドが適切な価格と高い質感を両立できれば、選択肢として浮上してくる可能性はある。
【まとめ——日産の本気度が問われる】
エルグランド16年ぶりの復活は、日産にとって重要な一手だ。
e-Powerという技術的な武器を持ち、高級ミニバン市場への本格復帰を目指す。しかし、アルファードが築いたブランドの壁は高い。モデルチェンジを16年怠ったツケを、どこまで取り戻せるか。
技術は揃った。あとは日産のブランドへの本気度しだいだ。エルグランドの復活が、日産全体の復活の象徴になるかどうか——そこに注目している。
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