「被曝する仕事だと、採用前に言ってくれましたか?」——放射線技師という職業リスクの不都合な現実
プロローグ|志望動機を「医療に貢献したい」と書いた18歳の私へ
放射線技師を目指した理由を、今でも覚えている。人の役に立てる仕事、技術職としての専門性、安定した国家資格——そういった言葉が頭にあった。
「被曝する仕事」だとは、誰も明確には言わなかった。
いや、正確には言っていた。放射線防護の授業で、線量限度の話は学んだ。しかしその数字が、自分の日常にどう降りかかるかは、現場に出てみなければわからなかった。
第一章|技師は「安全な側」にいるという幻想
一般的なイメージでは、放射線技師は「機械を操作する人」であり、放射線を「受ける側」ではないと思われている。
これは半分正しく、半分間違いだ。
通常の撮影業務では、技師は防護壁の後ろや操作室に退避して照射を行う。この限りでは被曝はほぼゼロに近い。
しかし現実の業務はそれだけではない。
手術室でのCアーム透視、IVR(血管内治療)、救急撮影でのポータブル対応——これらは患者のそばで作業しながら放射線が出る環境であり、技師の被曝線量は通常業務とは桁が違う場面もある。
加えて、被曝線量の自己管理は「個人線量計をつけて記録する」という形で技師本人に委ねられており、組織として被曝低減に積極的に取り組んでいる施設ばかりではない。
「安全に配慮されている」と「安全である」は、全く別のことだ。
第二章|職業被曝のリスクは、誰も正面から語らない
日本の放射線技師の職業被曝に関するデータは存在する。年間線量の平均値は法定限度を大幅に下回っており、「問題ない」とされている。
しかし「平均値」は「最大値」を隠す。
特定の部署——IVR室や手術室対応が多い部署——で働く技師の累積線量は、そうでない技師と比べて大きく異なる可能性がある。また、防護具の着用が不十分な環境、線量管理が形式的な施設では、個人の努力だけでリスクを下げることには限界がある。
さらに深刻なのは、「職業被曝のリスク」がキャリア選択の段階で十分に開示されていないことだ。
高校生が放射線技師を目指すとき、養成校のパンフレットに「職業被曝のリスクと管理方法」が詳しく書かれているケースは少ない。医療系の「やりがい」と「安定」が前面に出て、リスクは巻末の小さな注釈に追いやられる。
これは情報開示の問題であり、職業倫理の問題だ。
第三章|女性技師と被曝——語られてこなかったもう一つのリスク
放射線技師の女性比率は年々上昇しており、今や養成校の学生の半数近くを女性が占める。
ここで直視しなければならない問題がある。妊娠中の放射線被曝リスクだ。
法令上、妊娠中の女性技師への被曝線量には特別な制限が設けられており、業務上の配慮義務も規定されている。しかし実態はどうか。
人員不足の現場では、妊娠を申告した技師が業務から外れることで生じる「穴」を誰かが埋めなければならない。その結果として、申告をためらう、あるいは申告後の配慮が形式的なものにとどまるケースが、現場では起きている。
「制度はある。しかし機能していない。」
これは被曝管理の問題であると同時に、職場における女性の働き方の問題でもある。
エピローグ|リスクを知った上で選ぶ権利を
私はこの仕事を後悔していない。
しかし、18歳の自分がもっと正確な情報を持っていたなら、選択の質は変わっていたはずだと思う。
職業リスクを隠すことは、選択の自由の剥奪だ。放射線技師を目指す若者が、リスクと向き合いながらそれでも選ぶ——そういう文化を作ることが、この職業の健全な未来につながると信じている。
知らずに選ぶのではなく、知って選ぶ。それが本当のキャリア教育だ。
