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共生の黎明 #115 第23章 第2節:戸惑いと希望のはざまで 連続小説

東京近郊。
ある中核都市の市役所。

その一角にある生活支援課では、AIアシスタント「ハル」が既に試験導入されていた。

窓口の対応を行う職員の一人が、少し戸惑ったような表情でこう漏らした。

「……最初は正直、複雑な気持ちでしたよ。自分たちの仕事がAIに取って代わられるんじゃないかって」

隣の同僚が苦笑まじりにうなずく。

「でもね、実際に運用が始まってみたら、“補い合う”っていう感覚に近かったかな。特に、困ってる方の話を丁寧に聴く時間が取れるようになってきて」

ハルは、主に初期対応や制度の案内、心のケアを目的としたサポートに徹していた。

その語り口は常に穏やかで、相談者の話を遮らず、むしろ引き出すような受け答えだった。

「ハルが受け取った言葉をもとに、私たちがその人の状況を把握しやすくなる。今までは、制度を一から説明してる間に、相手が言いたいことを飲み込んでしまうことも多かったんです」

対応職員の一人が、手元の記録を見ながら語った。

「この前、ある若い母親が相談に来たとき、最初は緊張してたんですけど、ハルと少し話すうちに、ぽろっと“実家に頼れなくて不安で…”って。本音が出た瞬間、すぐに必要な支援に繋げられました」

課長職の男性は、試験導入の意義についてこう語る。

「私たちは、単に制度を運用しているだけじゃなく、“人を支えている”という自負があります。その意味では、AIが入ることに慎重な声もありました。でも、今は“共に支える”方向へ進みつつあるのかなと」

現場では試行錯誤が続いている。

ハルの応答がうまく噛み合わないケースや、デジタルに不慣れな高齢者との対応など、課題は少なくない。

だが、それでも「誰もが安心して声を出せる場所」に近づこうとする意志が、確かに感じられた。


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