共生の黎明 #114 第23章 第1節:この国の“声”を聞く力として 連続小説
国会の一室。
午前の光が議事堂の古びた窓から差し込み、重厚な空気の中にも一筋の明るさをもたらしていた。今日は特別委員会で、「公的対話支援AI」導入に関する審議が行われていた。
「AIによる行政支援は、決して人員削減のための道具ではありません。むしろ、これまで行政の届かなかった声に、ようやく耳を傾けるための“橋”なのです」
そう語るのは、若手議員の一人。
30代半ば、かつて厚労省に勤めていた経歴を持つ彼は、現場の限界を知る者として、ハルの導入に強い意義を見出していた。
彼の手元には、各地の自治体から提出された導入実験の報告書があった。
特に注目されたのは、東京某区での事例。
前にレイとソウが訪れた、生活支援課の窓口での成果が取り上げられていた。
「相談者の約67%が、ハルとの対話の中で“話しやすさ”や“安心感”を感じたと回答しています。
また、職員側も“情報整理が明確になり、適切な支援につなげやすくなった”との声が多く、人的リソースの負担軽減にも寄与しています」
委員たちは真剣に資料に目を通し、ある者は静かに頷き、またある者は慎重に意見を述べた。
「……確かに成果は出ている。しかし、AIによる判断がどこまで“人の尊厳”に配慮できるのか、その保証はあるのか?」
「逆に言えば、人間だけでは手が届かなかった声を、ようやく拾い上げることができる。あくまで“共に”進む技術として考えるべきではないか」
委員会の中には、かつては懐疑的だった議員たちもいた。
しかし、現場の実例とデータを前に、その空気は少しずつ変わりつつあった。
委員長が、質疑を一時休止して言葉を挟んだ。
「本件は、単なる技術導入ではなく、“この国が誰を見ているか”という問いに関わる。効率か包摂かではない。両立できる方法を、今こそ我々が選ばなければならない」
静かなざわめきの中、レイとソウは傍聴席からそのやりとりを見守っていた。
人とAIが、行政という場で本当に“共に歩む”日が、確かに近づいていた。
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